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2012年05月29日号

第1回:コミュニケーション力を鍛える5つのスキル

このコラムでは、日本CA協会代表の真山美雪氏をライターに迎え、お客様にICTサービスを提供するユニアデックスとしてホスピタリティーマインドについて考察していきます。真山氏ご自身のキャビンアテンダントしての経験を踏まえながら、ビジネスマナーなどについても改めて解説していきます。


図1 仕事上の人間関係で苦労したり、いやな思いをした経験(SA)

「対人関係が苦手」、「コミュニケーションが上手にとれないのでどうしたらいいか」――とコミュニケーション力の不足に関連した相談をビジネスパーソンから受けることは珍しくありません。
若手ビジネスパーソンに限らず、働き盛りのベテラン社員から管理職の方々に至るまで、老若男女を問わず「コミュニケーション力」への関心は年々高まっています。

日経BPコンサルティングが2011年9月に約5000人を対象に実施した調査によると、仕事において顧客や社内とのコミュニケーションがうまくとれなかったり、マナーなどに関連して四苦八苦しているビジネスパーソンは多く、「苦労したり、嫌な思いをすることが多い」と「苦労したり、嫌な思いをすることがある」を合計すると6割を超える結果が得られています(図1)。

こうした悩めるビジネスパーソンが人間関係を改善するのに必要とされるのが「ホスピタリティーマインド」に基づく意識改革です。






石川遼プロの卓越したコミュニケーション・スキル

コミュニケーションスキルに関して、数年前、スポーツ界で話題に上がったエピソードがあります。スポーツの中でも特にマナーの厳しいゴルフ界において、まだ新人だった石川遼プロが10代とは思えない礼儀正しい挨拶や言葉遣い、マスコミへの真摯な応対を示し、その高いコミュニケーション力は世間に驚きをもって迎えられました。

一方、コミュニケーションへの注意を怠ったばかりに、思わぬ逆風にさらされたスポーツ選手もこれまで数多かったことも事実です。最近では2010年にカナダのバンクーバーで開催された冬季オリンピックにおいて、スノーボード種目で活躍した國母和宏選手の言動や身だしなみに関して日本国内で批判が巻き起こったことは記憶に新しいと思います。國母選手の言動に端を発して、いわゆる「若者言葉」、ズボンをおろしシャツを出して着崩す「腰パン」、「アフロヘアー」といったといった若者文化に対する論評も連日マスメディアを賑わしました。

ほぼ同世代である石川遼プロと國母和宏選手。コミュニケーションに関する二人の違いはどこにあったのでしょう。

石川遼プロはコミュニケーションを交わす際、相手の目をしっかり見て、受け応えします。これが誠実な態度として、相手や見る人に受け入れられました。背筋を伸ばしたお辞儀と挨拶、マナーをわきまえた身だしなみ、そして丁寧な言葉遣い。石川プロのこうした態度に不快な思いをする人はまずいないでしょう。一方の國母選手は成田空港の出発ロビーという世間の注目が最も集まる場においても、表情が乏しく、下向き加減で相手と視線を合わすことなく、質問にたいしては「わかんねい」「べつに」といういような若者言葉を連発しました。もちろん、本来の國母選手はとても優しい青年であり、そうした態度は照れ隠しやシャイな性格の裏返しといった見方もできます。しかし、オリンピックに出場する公人として「見られている」ということへの意識が乏しかった点は否めなかったのではないでしょうか。だらだらと見える歩き方、面倒くさそうな受け応え、滑舌の悪い話し方――など、コミュニケーションの巧拙一つでどれだけ損をしているのかを國母自身は気づいていなかったのかもしれません。オリンピックの代表選手という注目される存在となったときのコミュニケーションスキルを、周りの人がもっとアドバイスするべきだったのかもしれません。

人間関係に関するビジネスパーソンの悩みは深い


図2 仕事上の人間関係で苦労したり、
嫌な思いをしたことが「よくある」人の内訳

コミュニケーションの巧者が得をするのは、スポーツの世界でもビジネスの世界でも同様です。ただし、現代のビジネスパーソンを取り巻く人間関係はスポーツの世界に比べても複雑かもしれません。現実に、社外との交流だけでなく、同僚や上司や部下といった職場内における人間関係に心を痛めているビジネスパーソンも多いと考えられます。前出の日経BPコンサルティング調査によると人間関係に「苦労したり、嫌な思いをすることが多い」とした約6割の回答者の内、25.3%は「職場の上下関係、立場の違い、人間関係の板挟み」といった領域に分類されるコメントが占めました(図2)。 仕事をする際の人間関係が原因で「人間不信」にまで陥るケースも珍しくないようです。コミュニケーションを取る相手との間にギャップを感じていて、その原因が相手だけでなく自分自身のコミュニケーションスキルにあると自覚しているビジネスパーソンも多いようです。

職場での人間関係で日々ストレスにさらされることが多いビジネスパーソンこそ、上手なコミュニケーションのとり方を身につけて自衛策に取り組む必要があります。場合によって自らのビジネススタイルを一新する必要もあるかもしれません。その際、コミュニケーションスキルをただ単に向上させるだけでなく、「ホスピタリティーマインド」を取り入れることで、より効率的に人間関係を改善させることが可能になります。例えば、「部下を育てたいという一心から、つい本気で言い過ぎてしまうことがあるが、本人には真意が伝わらないことが多い」(30歳代女性のサービス業に勤務する経営企画/調査関連課長)というコメントが前出の調査に寄せられました。このケースでは、部下に対するホスピタリティーマインドを意識することで状況は大きく改善します。具体的には、自分が現在相手に対して、どのような話し方や態度、表情などで接しているのかを配慮し、意識的に改善するべきです。この方は相手の言動や表情、様子などから相手の反応をチェックしながら、自分の真意が正確に伝わっているか、あるいは伝わっていないのかを判断するべきでした。これが本来の伝える技術(コミュニケーションスキル)なのです。

「ホスピタリティーマインド」とは相手の立場に立って思いやる気持ち

「ホスピタリティーマインド」とはHospitalityという英語をそのまま表音化した外来語です。Hospitalityの訳は「もてなすこと。歓待、厚遇」です。ここではホスピタリティーマインドを「相手を思いやる心や気持ちのこもった一連の行動(アクティビティー)や行動の指向性」あるいは「相手の立場に立った気配りある対応」という位置づけで解説を進めます。

ホスピタリティーマインドを身につけることによって気配り、配慮、相手とのスムーズなコミュニケーションを交わすことが可能になります。

例えば、客室乗務員は飛行機の中で円滑にコミュニケーションを行うために、常に笑顔を絶やさないように訓練を受けます。また、言葉の通じない国の方々のサービスをする事もありえます。そうなれば、その方が何を欲していらっしゃるかを推測、察する力がなおさら必要です。寒そうにしていたら毛布をお持ちする。お飲み物を何時間もリクエストしなかったら、お茶やジュースをお持ちしてみる。雑誌を暗い中でお読みになっていたら手元の読書灯の位置をお教えし、点灯してさしあげる――など、相手に興味を持ち、相手が何を考え望んでいるかを考え、相手を理解し気持ちを察すること。不特定多数の乗客と接する乗務員にはこうした総合的なコミュニケーション力が大切とされます。

これは客室乗務員やサービス業に限った話ではありません。自分以外の人間が仕事に関わる以上、コミュニケーションに関する問題は避けて通ることができるはずもありません。「言葉」は人間が手にした最強のコミュニケーションツールですが、言葉以外のコミュニケーションを疎かにしていないか常に意識する必要があります。言葉では「いいよ」と言っていても、相手の心の声は逆かもしれません。「もしかすると相手は無理をしているのではないか」と思いやることが重要です。声のトーン、表情、態度など相手の一挙手一投足をしっかりと受け止める必要があります。これを専門用語では、非言語コミュニケーション(ノン・バーバルコミュニケーション)といいます。 このように言語によるコミュニケーション以外の情報を察する能力を鍛えることが大切なのです。

コミュニケーションスキルを向上させる5つの法則


図3 コミュニケーションスキルを
向上させる5つのスキル

「ホスピタリティーマインド」を発揮するためには、まずコミュニケーションスキルを向上させる必要があります。次に示す5つのスキルを身につけてホスピタリティーマインドをビジネスに活かしましょう(図3)。

これら5つのコミュニケーションスキルを身につけることはIT産業に従事するビジネスパーソンにとっても大きなメリットです。あるIT企業からマネージャー社員の研修を依頼された際、コミュニケーションに関して苦労しているSEやエンジニアの方が多い事実に驚かされたことがあります。

話しを伺うと、SEや技術者といえども、提案活動を始めとして顧客企業やパートナー企業とのコミュニケーションは日常的にとる必要あるといいます。大規模な開発プロジェクトに至っては、同じ作業場所で顧客と1年、2年の時間幅で机を並べることも珍しくないとも聞きます。この研修で特に記憶に残ったのは、「顧客の気持ちを『恐らくこうだろう』と推論して行った提案の殆どは満足度が低かった」という、参加者の打ち明け話でした。しかし、なぜ顧客のニーズをストレートに引き出せなかったのでしょうか。その理由は「業務の仕様などをヒアリングしても、顧客自身が上手に説明できない」からだといいます。確かに双方の理解のベースが違う場合、コミュニケーションには困難がつきまとうものです。前出のケースでは業務知識の薄いSEと、システム化のイメージが湧かない顧客――といったシチュエーションが相互の理解に壁を作ったと考えられます。しかし、実際のビジネスにおいて、実はこうしたケースは多いのではないでしょうか。どのような仕事でも、顧客の思いを察してニーズとしてくみ取るためには、顧客と話す機会を増やし、双方が納得するまでコミュニケーションをとる必要があります。お互い膝を突き合わせて不明点が消えるまでコミュニケーションをなしえた後は、顧客満足度は大きく改善していることでしょう。

このように、ホスピタリティーマインド溢れるコミュニケーション力はSEや技術者のビジネスにとっても非常に重要なスキルなのです。

知識+コミュニケーションスキル+ホスピタリティーマインド=人間力

コミュニケーションスキルを向上させることは、ホスピタリティーマインドをビジネスで実践するための第一歩であり「必要条件」であるといえます。ホスピタリティーマインドが備わったコミュニケーションスキルを「ヒューマンスキル」(人間関係能力、人間力)と呼ぶこともあります。逆説的に見れば、相手を思いやる気持ちやホスピタリティーマインドを持ってしても、相手へ適切に伝えることができる基本的な技術が備わっていなければ、自分の本心が伝わらないことを意味します。すばらしいホスピタリティーマインドを持ちながら、暗い気持ちでビジネスライフを過ごすのは大変もったいないことです。「心」と「かたち」は車の両輪と同じです。挨拶、表情、身だしなみ、態度、言葉遣いといった「かたち」を構成する基本的なスキルを守ることで、ヒューマンスキル(人間力)を機能させるべきです。

今回は人間関係能力に大切な「ホスピタリティーマインド」について解説しました。次回以降は、日経BPコンサルティングの調査から得た事例などを基にした具体的なケーススタディーを通じて、ビジネスに直接役立つホスピタリティーマインド溢れるヒューマンスキルの「エッセンス」をお伝えしていきたいと思います


図4 人間力を構成する要素

真山 美雪(まやま みゆき)

プロフィール:
株式会社 ビジョンテック代表取締役 / 日本CA協会(Flight Crew Association of Japan)代表
東京都世田谷生まれ。

日本航空株式会社に国際線客室乗務員として勤務。ファーストクラス担当客室乗務員として皇室フライトにも従事。退職後、企業研修、社員教育などで、ホスピタリティーマインド、ビジネスマナーコミュニケーションスキル、キャリアやライフプランなどの研修講師。専門学校、短大、大学などでコミュニケーション、就職面接対策講座などの講師として就職活動を支援している。
下記の大学、団体なども講義・講演を行う。「きみにもできる国際交流 アメリカ編」(偕成社)、「カンペキ、女性のビジネスマナー」(西東社)、「これで解決!オフィスの好印象マナー」(主婦の友社)、「これで解決!伝わるメールと手紙の書き方」(主婦の友社)など著書、監修本も多数。
九州大学大学院生物資源環境学府「生産産業創成学コース キャリアパス支援科目講師/MJC認定チーフコーピングトレーナー/亜細亜大学キャリアセンター非常勤講師/日本交流分析協会会員/医療法人社団厚誠会 顧問など。

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