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2012年09月25日号

第3回:プロジェクトを成功に導くホスピタリティーマインド

このコラムでは、日本CA協会代表の真山美雪氏をライターに迎え、お客様にICTサービスを提供するユニアデックスとしてホスピタリティーマインドについて考察していきます。真山氏ご自身のキャビンアテンダントしての経験を踏まえながら、ビジネスマナーなどについても改めて解説していきます。


今回は「プロジェクト」におけるホスピタリティーマインドのあり方に焦点を合わせます。
そもそも日常的に行われる業務と、プロジェクトとは、何が異なるのでしょうか。アメリカ航空宇宙(NASA)によれば、プロジェクトとは、(1)複数のタスク(仕事)から構成される、(2)複数の組織が参画する、(3)活動期間が限定される――ことに特徴があるといいます。
つまり、様々な立場のメンバーが、時により異なる役割をこなし、期間を決めてゴールにたどり着く必要がある業務と言い換えることができるでしょう。
そのような緊張感のある、複雑な人間関係に満ちた職場にこそ、ホスピタリティーマインドを持ち込むことが求められるのです。

メンバーの無言のサインを洞察する

システムエンジニアリングの分野で言えば、完成まで数年もかかる大規模なシステム開発などは緊張感を伴うプロジェクトの最たるものでしょう。システムを導入する企業側からはシステム部門やシステムを利用するエンドユーザー部門など様々な部門のメンバーがプロジェクトに参画するのをはじめ、コンピューターメーカーの技術者、システムプロバイダーのSEなど、多様な立場の人々が、システム稼働というゴールに向けて歩調を合わせることが求められます。

実は、航空機の客室業務もプロジェクトの要素が強い業務の一つです。テレビドラマの中で扱われる客室業務の世界は、同じクルーが毎回フライトに搭乗して様々な人間模様を繰り広げますが、実際のフライトでは顔見知りのクルーとフライトすることはほとんどなく、ship(飛行機)に乗り合わせ、運命をともにするメンバーはその都度一新されます。フライト時間が十時間にわたる国際線の客室業務で、初めてチームを組むメンバーと的確に意思の疎通を図るためには、ホスピタリティーマインドは欠かせないスキルでした。

ゴール=目的に対する意識を共有することはフライトに限らず、どのようなプロジェクトにも共通する原則です。プロジェクトのマネジメントに携わった方ならば、メンバー間の気持ちのずれが、プロジェクトの進捗に及ぼす影響に思い当たるのではないでしょうか。そうなる前に、プロジェクトを率いるリーダーは「メンバーの中で役割分担は機能しているのか?」、「メンバー全員がプロジェクトの目的を理解しているのか?」など常にチェックし、メンバーが無言のうち発する様々なサインを察する必要があります。第一回コラムでも述べたとおり、言語によるコミュニケーション以外の情報を察する行為を、非言語コミュニケーション(ノン・バーバルコミュニケーション)と呼びます。プロジェクトのマネジメントにおいても非言語コミュニケーションの技術を上手に取り入れ、メンバーが「言いたいことを言い出せないのではないか」、「思いの丈を打ち明けることができずに無理をしているのかもしれまい」などとメンバーの気持ちを思いやることが大切です。

人間は感情で動く生き物です。ホスピタリティーマインドを忘れ、プロジェクトリーダーが独りよがりな意見を押しつけたり、理不尽な権限を振り回したりしたとたん、メンバーの気持ちは凝り固まり、プロジェクト内の信頼関係は崩れ去ります。サッカーの競技でも、個人技に優れた選手を多数集めたチームがチームプレイに徹したチームに敗れることがあるのと同様、メンバー個々の力量はプロジェクトの成否を決める絶対的な条件ではなく、メンバー間の信頼関係こそが真に必要とされるのです。
そのためにも、プロジェクトを率いるリーダーには、メンバーが心に秘めた感情を把握する能力が求められます。メンバー一人、一人の無言で示した徴候を見逃さず、早目にリスクの芽を事前に摘み取って、メンバーの感情や行動をコントロールできるかは、リーダーのホスピタリティーマインドの有無にかかっているのです。

プロジェクトのモチベーションを上げる、ちょっとしたコツ

極論すれば、メンバー全員のモチベーションが上がれば、リーダーは基本的なマネジメントに従事するだけで、プロジェクトは目標を達することができます。逆に、どれだけリーダーが優秀でもモチベーションの低いプロジェクトは失敗を繰り返します。

ちょっとした「言葉使い」ひとつで、メンバーのモチベーションが向上することがあります。例を挙げると――「ありがとう!」「仕事が早い」「〜さんのおかげでここまでくることができた」「頑張ってくれてありがとう」といったポジティブワードを発して相手を認めることが重要なのです。


ただ、これらのポジティブワードはプロジェクトを絶対成功に導く「魔法の言葉」ではありません。プロジェクト内のメンバー同士のコミュニケーションがうまくいっていなければポジティブワードを使っても効果が生まれないばかりか、逆に「空々しい」といったマイナスの作用を引き起こすことにもなりかねません。
メンバー間の感情がこじれたままでがあれば、まずメンバーのモチベーションをあげることが重要です。ホスピタリティーマインドを上手に活用してメンバー間の信頼関係を築くことが、凝り固まったメンバーの感情を解きほぐし、プロジェクトの円滑に運営する近道なのです。

「妥協」ではなく「納得」

非言語コミュニケーションの手法やポジティブワードを駆使しても、もしプロジェクト内の意見がバラバラだった場合でも、あきらめずにお互いに理解する努力を続ける必要があります。こじれた人間関係を改善するのには、結局は「もし自分が〜だったら」という視点で相手の気持ちを察することができるか、否かに尽きるのです。協調できない相手とコンセンサスをとる場合、互いに「納得する」ことが最も重要です。どちらかが「妥協」するという結論は避けるべきなのです。立場や役割の異なる人間の集団では意見が一致しないのは当たり前。だれもが自分のことが一番大切です。プロジェクトのゴールに続く道は平坦ではないかも知れません。しかし、プロジェクトの成功を夢見て「感情の壁」を乗り越えて力を合わせなければプロジェクトの成功はおぼつかないのです。そうした感情の壁の先にあるゴールを、プロジェクトを統括するリーダーがメンバーに示すための、最も基本的で最も大切なスキルが、ホスピタリティーマインドなのです。

真山 美雪(まやま みゆき)

プロフィール:
株式会社 ビジョンテック代表取締役 / 日本CA協会(Flight Crew Association of Japan)代表
東京都世田谷生まれ。

日本航空株式会社に国際線客室乗務員として勤務。ファーストクラス担当客室乗務員として皇室フライトにも従事。退職後、企業研修、社員教育などで、ホスピタリティーマインド、ビジネスマナーコミュニケーションスキル、キャリアやライフプランなどの研修講師。専門学校、短大、大学などでコミュニケーション、就職面接対策講座などの講師として就職活動を支援している。
下記の大学、団体なども講義・講演を行う。「きみにもできる国際交流 アメリカ編」(偕成社)、「カンペキ、女性のビジネスマナー」(西東社)、「これで解決!オフィスの好印象マナー」(主婦の友社)、「これで解決!伝わるメールと手紙の書き方」(主婦の友社)など著書、監修本も多数。
九州大学大学院生物資源環境学府「生産産業創成学コース キャリアパス支援科目講師/MJC認定チーフコーピングトレーナー/亜細亜大学キャリアセンター非常勤講師/日本交流分析協会会員/医療法人社団厚誠会 顧問など。

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