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Feature Story
2007年9月10日号

U&U BITS 2007 パネルディスカッション
〜オープンソースによるビジネスイノベーション インパクトのある打ち手を探る〜

日本ユニシスグループの戦略と取り組みを体験いただく Business and IT Strategy Forum「BITS 2007」における「オープンソース」をテーマしにしたパネルディスカッションは毎年高い人気を誇ります。今年は「オープンソースによるビジネスイノベーション -インパクトのある打ち手を探る-」と題して開催されました。そのディスカッションの模様をご紹介します。

【モデレーター】 株式会社テックスタイル 代表取締役 CEO 岡田良太郎【パネリスト】日本ヒューレット・パッカード株式会社 マーケティング統括本部 セグメントマーケティング本部公共担当部長 (日本Linux協会 副会長/IPA OSSセンター 広報戦略TG主査) 宇佐美茂男 【パネリスト】 ミラクル・リナックス株式会社 取締役最高技術責任者 兼コアテクノロジー本部 本部長 吉岡弘隆
【パネリスト】 ターボリナックス株式会社 wizpy事業部 部長 中尾貴光【パネリスト】 ユニアデックス株式会社 商品戦略部 マーケティング&プロデュース室 Linuxマーケティングマネージャ 松隈基至


■民間だけではなく、政府や自治体にもオープンソースの流れが
―岡田―
みなさん、こんにちは。オープンソースの標準は産業、経済社会に新たな価値と大きな変化を生み出し続けています。本日の「オープンソースによるビジネスイノベーション -インパクトのある打ち手を探る-」では、昨年の「BIT2006」でもご好評いただきましたOSSパネルディスカッションの第2弾として業界を代表する屈指のメンバーをお迎えして、オープンソースの今と将来を分かりやすく掘り下げていきます。ここでしか聞けない話が満載です。エンジニアの方々はもちろんのこと経営者層の方々にも大変興味深いディスカッションになることでしょう。

どうして今回のセッションのテーマが「オープンソースによるイノベーション」となったかですが、ITの歴史を振り返ってみるとわかります。ITの世界には、これまでに大きく3つの波がありました。1つ目は計算機の波、次が計算機から機能を伸ばして垂直統合したメインフレームの波、その次がレイヤーを分けて水平に広がっていったオープンシステム化の波です。IT業界の歴史は短いにも関わらず、すでに3つもの波が来ています。そして2010年を3年後に迎えようとしているときに、もっと広い意味で「オープン」という考え方が機能する、「情報のオープン化」の波が来ることを多くの人が期待しています。それが「イノベーション」と関連して取り上げられているわけです。そこで本日のパネリスト4名はそれぞれの立場でイノベーションを起こしてきた、「4人のイノベーター」と名付けています。
また、本日のサブタイトルは「インパクトのある打ち手を探る」ですが、「打ち手」とは何か? 「ブルーオーシャン戦略」という書籍によると、現在の状況から何かを「減らす」「取り除く」「足す」「付け加える」ことによって、新たな「打ち手」を生み出せるとされています。つまり、これらの組み合わせが「打ち手」です。たとえば、企業ならコストは「減らしたい」、新しいサービス・機能は「付け加えたい」ですよね。この考え方が、いかにオープンソースと親和性があるかのということを4人のイノベーターの方々にお伺いできればと思っています。
さて、本題に入りましょう。今年のトピックスとして、外部環境の大きな変化から見ていきましょう。この辺りについて、まずは、松隈さん、どう思われますか?

―松隈―
「マクロ環境」という大きな枠組みを捉えてみた場合、例えば世界の経済や産業構造の動きは「クローズド」から「オープン」に移り変わっているという潮流が見て取れます。また、地球規模の課題となっている国際テロや地球温暖化への対策は国際的な協力関係が構築できなければ解決は難しい状況です。つまり、「オープン化」、「コラボレーション」はマクロ的にも必然的な流れであると言えます。オープン化するということは、様々な連結部のインターフェース統一や基盤となる規格の標準化を行うことであり、また、そのことによって効率化をはかり、コラボレーションを進めやすくするということですよね。私は「オープンソース」のムーブメントは「オープン化」、「コラボレーション」といったマクロ環境の大きなうねりの中において必然的に生まれた、ひとつの現象であると捉えています。

―宇佐美―
近年、日本政府もオープンソースソフトウエア(以下、OSS)の価値に注目していますね。総務省の「情報システムに係わる政府調達の基本方針」でも、従来の特定ベンダーへの一括調達ではなく、共通基盤、個別業務、ハード、運用、保守を別々のベンダーに分離調達して、システムの透明性や柔軟性を向上させる等の試みを行おうとしています。 そのコンポーネント間の“インターオペラビリティ(相互運用性)”は『オープンな標準』に基づく要求要件の記載を求めています。オープンな標準とは、「1.開かれた参画プロセスの下で合意され,具体的仕様が実装可能なレベルで公開されている」「2.誰もが採用可能である」「3.技術標準が実現された製品が市場に複数ある」標準であると定義されています。オープンな標準の実現にあたってOSSの親和性が高いため、非常に注目されています。

―吉岡―
ここ20年くらいでOSSを巡る環境は大きく変わってきました。少なくともお客様に決めていただく選択肢が増えました。組み合わせも自由になりました。しかも、OSSはWindowsのようにブラックボックスではないから、透明性が高くなったといえます。そうなると、それだけ製品の価格にも競争原理が働きますし、その結果が今のような1社独占ではない健全な状態になってきているのでしょうね。
また、製品としてのOSSが普及している以外に、運用と保守のサービスに関しては、製品を提供しているベンダーとは違うベンダーから提供されるようになってきたというのが大きな特徴です。政府の調達でもシステム全体を分けて考えて、運用の部分と保守の部分、それぞれ違うベンダーを選定しています。メンテナンス、サービス、サポートの部分が、さまざまなベンダーで可能になったというのが大きな違いです。そういう変化が出てきているわけですね。


■オープンソースによりシステム構築の選択肢が広がった
―松隈―
みなさんもお分かりだと思いますが、1980年代はいわゆる「垂直統合型」で、ある1社がストレージからハードウエア、オペレーティングシステム(以下、OS)、ミドルウエア、アプリケーションなどシステムの上から下までを1社の製品を使って構築するという動きが中心でした。いわゆるメインフレームの時代です。次に90年代に入り、オープンシステムの時代となりました。UNIXシステムなどは、OSとハードウエアを開発/提供しているベンダーは一緒でも、その上に、例えばOracleなどのデータベースソフトウエアが搭載されたりというように、ミドルウエアの部分が1社垂直統合型から水平分離されてきました。そして、その次にWindowsの時代が来てハードウエアとOSを提供するベンダーが水平分離され、次に2000年頃からLinuxの「オープンソースの時代」が来たわけですね。これらの流れの中において見えてくることは、お客様がシステムを構築するときの選択肢が増え、組み合わせの自由度が高くなってきたということです。さらには、これまでブラックボックスだったシステムが、とても透明性が高くなった。ということは、それだけ製品の価格も、つまり競争が起こりますから、下がってきたといえます。お客様にとっては、オープンソースの時代になって、メリットがいくつも感じられる時代になってきたのではないでしょうか。

―岡田―
ここで公共担当のマーケティングを担当されている宇佐美さんに質問です。政府調達という観点からいくと、公共関連でのOSSの事例はどんな状況でしょうか。

―宇佐美―
最近の注目は自治体ですね。自治体はコストダウンを図りながらも、住民には次々と新しいサービスを提供しなければなりませんよね。また市町村合併がさかんなので、SOAの技術を用いた情報基盤作りが必要になっています。そこで重要なキーワードが「オープンな標準」です。その選択肢としてOSSがいいと評価され、採用いただいていますね。

―岡田―
自治体以外でのOSS採用に関して吉岡さんから見た感触はいかがでしょうか。

―吉岡―
インターネット系のシステムというのはOSS以外には、ほとんどありえないですね。それ以外にも採用事例はいくらでもあります。例えば、ある大手通信事業者は基幹システムの2割くらいでLinuxを採用しているようです。

―岡田―
確かに、金融・証券のようなミッションクリティカル性の高いシステムでさえOSSが活用されてきていますね。デスクトップの分野では、どうなのでしょうか。

―吉岡―
そうですね。デスクトップでOSSを使うと考えたときに、従来は「本当に使えるの?」と懐疑的な考え方が大半を占めていましたが、最近は、地方自治体や一部の企業で採用が拡大しています。プラットフォームはWindowsでも、WebブラウザやオフィススイートはOSSを採用してしまおうという動きも注目です。

■ミッションクリティカルな分野にメインフレームの知見をベースにOSSを活用
―岡田―
民間をはじめ、自治体や政府などでもOSSを採用する流れが顕著になりつつあるようですね。そのような動きの中で、われわれがどんなインパクトのある打ち手を出せるのか。そこでOSSのバリエーションの拡大の話を次にお聞きしたいと思います。まずは中尾さん、なんと基本ソフト、つまりOSを持ち歩くというコンセプトを打ち出されたのですね。

―中尾―
はい。その昔、ラップトップパソコンが出始めたときには、みなさん「えっ、コンピューターを持ち歩くの?」と驚かれたことかと思います。それをさらに進めて、普段、自分が使っているパソコンのデスクトップ環境をそのまま待ち歩けるようにしてしまおうと。たとえば海外出張時などは、ノートパソコンを持ち歩くのが荷物になる、機内への持込みが制限されるといった問題が考えられます。そんなときにたとえば海外のホテルなどにあるパソコンのUSBインターフェースに差し込むだけで、普段、自分が使っているデスクトップ環境を作り出すことができるのです。
この製品はフラッシュメモリの中にLinux OSを搭載しているのですが、機能を削っていくことで、 必要最低限の機能だけを集約しました。これはOSSだからこそできたことです。


―岡田―
OSSは小さくもできれば膨らますこともできる。ものづくりをする企業が、自分たちの意志で、どこからも搾取されず、アイデアを実行していく。これが可能であることはOSSのイノベーションの源泉だと思います。
この考え方は、ミッションクリティカルシステムの分野でも適用されているのでしょうか。

―松隈―
ミッションクリティカルシステムといえば、まず止まらないこと。いざトラブルが起こった場合にはその原因を必ず突き止めて、二度と起こさないよう明確な対策を施せることが絶対条件です。当社は、メインフレーム時代からそれを当たり前のこととしてやってきました。そもそもメインフレームのソフトウエアというのは元々、我々の手元にソースコードがあることが当たり前でしたから、ソースコードが公開されているOSSはメインフレームで培った技術や経験が活かせるわけです。現在はユニアデックスのメインフレーム基盤チームが、その経験や技術を活かし、OSSに転換していくという取り組みを推進しています。

―岡田―
では、ここでちょっとゲストお迎えして、ユニアデックスのOSSでの開発やサポートが実際にどのような状態で進められているのかをお伺いしましょう。ユニアデックスのOSS推進のリーダーである高橋 秀樹さんです。まずは最近の状況としてはいかがでしょうか。

―高橋―
私たちのグループは昨年7名だったのが今年は20名強になりました。約3倍です。同時に私たちだけではなく、周囲にもOSSをしっかりと展開しサポートしていこうという部隊が新たにできました。全社を挙げてOSSに取り組んでいこうという環境が整いはじめています。その状況の象徴とでもいいましょうか。ここで私の部隊のエンジニアを紹介します。大塚 玲子です。


―大塚―
現在はOSSでのミッションクリティカルなシステムのサポートに力を入れています。これまでのユニアデックスが力を入れてきたメインフレームでの知見が蓄積されていますから、それをベースに今後はJBossのプロダクトサポートなどに力を入れていきたいですね。

―岡田―
ユニアデックスからは他にも2名のエンジニアをゲストとしてお迎えしています。小澤 嘉孝さんと中山 陽太郎さん、ステージにお越しください。最近の状況について、とくにOSSはコラボレーションにより、知識や技術がよりブラッシュアップされるという特長があると思うのですが、そのあたりをお話しいただけますでしょうか。

―小澤―
コラボレーションという点では、ユニアデックスと日立製作所、ミラクル・リナックスIPAなどとのコラボレーションで「OSSメッセージペディア」というサイト(http://ossmpedia.org/)を立ち上げました。ここでトラブルシューティングなどの最新情報が入手できるのです。すでに350件以上の事例が掲載されています。


―中山―
最近、私が参加しているプロジェクトは、PostgreSQLのクラスタリング技術です。このプロジェクトでは拡張性と可用性の両方を兼ね備えたデータベースシステムをOSSで作るということに取り組んでいます。それができるのは、ミッションクリティカルなシステムをメインフレームで作るという取り組みによって培ってきた技術的なベースがあるからです。

―岡田―
メインフレームの仕事の進め方とOSSの仕事の進め方での大きな違いはありますか?

―中山―
メインフレームにおける最新情報の入手先は社内だけでしたが、OSSではインターネット上のWebサイトや社外のコミュニティーなどとのコラボレーションに求めることができるところなどが大きな違いですね。

―岡田―
小澤さんや中山さんが今後取り組んでいきたいと思われていることは何でしょうか?

―小澤―
私たちが取り組んでいるOSSでの開発技術やサポート技術はメインフレームで培ってきたものをベースとしています。システムが動かないとき、「なぜ動かないのか?」から始まって、その原因を徹底的に追求し、動くようにするのが、私たちメインフレームをやってきたエンジニアの文化でした。その取り組みの姿勢は、そのままOSSでの開発にも当てはまります。それらの開発手法やトラブルシューティング技術など蓄積されたノウハウを多くの若いエンジニアに伝承していきたいと考えています。

―中山―
私は最先端のメモリーデータベースなどを開発するといったことに取り組んでいきたいです。

■ユーザーも「参加」して「フィードバック」する。それこそがOSSの活用における成功へのコンセプト
―宇佐美―
ユニアデックスはOSSによるシステム開発を、自社で培ってきたメインフレームの考え方に近づけようとしています。また、外部との交流もとても積極的ですね。そこが他社とは大きく違うところです。

―岡田―
OSSの外部環境が盛り上がり、事例も増え、ミッションクリティカルに耐えうる開発も進め られています。スピードや選択の自由、コラボレーションの相乗効果などはOSSがもたらす大きな価値ですが、一方でユーザー企業にとってOSS活用のメリットとは何だとお考えですか。

―宇佐美―
ずばり、ロックインの排除です。政府調達でも「ITゼネコン」なんてメディアに叩かれていましたが、これまでは、特定SIerにより開発の根幹の部分がブラックボックス化されていたため、そのSIerしか受注できないシステムが多かったのです。そのブラックボックスが「オープンな標準」による開発に変われば、「開かれた調達」になり、いろいろなSIerが開発に参加できることで、少しでも安価に、よりよいシステムが構築できるようになる。そうなることがOSS活用のメリットといえるでしょう。



―松隈―
OSSの活用によってシステムの透明性が上がることで、運用の互換性が高まっていきます。また、新たに機能を追加したいという場合でも、システムを構築したSIerだけに限らず、他社に頼んでも良いことになります。それによってシステムを導入した企業は、自分たちがやりたいことを、より安価に早くやってくれるシステム開発会社を自由に公平に選択できるようになります。そこにユーザー企業がOSSを活用するメリットがあると感じています。

―中尾―
ユーザー主導型ということでしょう。ベンダーが介入しなくても使いやすいように改変できる、自分で解決していける…という部分がOSSの強みです。同時に、技術者の育成やコストダウンも図れます。OSSは参加型のものですから、まずは使ってみていただきたい。

―吉岡―
そのとおりですね。たとえば、競合他社が協調することで、業界全体で収益構造を維持し 、発展させていこうというITのエコシステムでいえば、ユーザーが使うことで、OSSの価値が高められるという循環系ができています。そこにいち早くアダプトしたユーザーがインシデントを管理し、それに適合できたベンダーがOSSのエコシステムの中でイニシアティブを取れるというモデルです。

―岡田―
いろいろなお話をありがとうございました。やはり、OSS開発の利点はいろいろな人たちが開発に参加できるところにあると思います。しかも今後、よりOSSの活用を進めていくためには、OSSによるシステムを開発する人、サポートや運用を行う人はもちろん、OSSにより構築されたシステムを利用する人たちの参画も重要なのではないかと感じています。

―吉岡―
利用すれば利用するほど、そこでの発見をフィードバックして、市場や開発者に伝えることができるのがOSSならではですね。

―岡田―
OSSによって「価値を連鎖させていく」。そんな考え方は魅力ですね。OSSは、誰もが自由に使えるわけですから、通常、価値ある情報やノウハウを買うコストを考えると、実質的には無限大の予算をもらっているようなものです。一方、ブラックボックスを買いっぱなしのシステム調達はいわば投資ではなく消費となってしまいがちです。自社の意思でイノベーションを起こしていくには自由度が必要であり、そうであってはじめてIT消費ではなく、IT投資となり得ます。それゆえに、目的志向のIT投資をするなら、OSSを徹底的に使って価値を自律的に生み出していくということ。これがITによるイノベーションを起こし得るキーコンセプトなのですね。本日のパネルディスカッションのメッセージだと思います。みなさん、本日はどうもありがとうございました。



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