Top Leading Talk Feature Story Case Study Inside UNIADEX Learning Back Number
NexTalk image メールマガジン購読のお申込み
〜真価を起動する〜 UNIADEX - NexTalk
サービス見聞録

中国のレストランには、日本とは異なる文化がある。

 たとえば日本の飲食店では、どの店員もおおむね笑顔で元気で丁寧な応対をしてくれるものだ。こうした文化にどっぷりと浸かった人間が中国のレストランに行くと、まずたいていの場合は面を食らう。レストランで働いているウェイター、ウェイトレスは多くの場合地方から出稼ぎにやってきた若者が多く、客に対する挨拶や対応も人によってバラバラだ。中には「いらっしゃいませ(中国語では「歓迎光臨」という)」すら言わず、ただボーっとつっ立っている者もいる。多くの日本人は、こうした彼らのやり方を見るとサービスのレベルが低いと感じるに違いない。
 しかし、そうした対応にも慣れてくると、今度は違った何かが見えてくる。同じレストランに何回か通ううちに、店員が話しかけてくるようになる。
「どこから来たのか?」「どこで働いているのか?」「仕事は忙しいのか?」「家では食事をしないのか?」など、いろいろと聞いてくる。場合によっては「日本語を教えてくれ」という無遠慮なリクエストさえある。こうした態度を「なれなれしい」と感じる日本人もいるかもしれない。
だが外国に身を置いていると現地の人間からこのように親しげに話しかけられるのも悪い気はしない。一人で食事に行っても話し相手になってくれるので退屈しないし、店に通うにつれて友人の店に遊びに来たような感覚になる。
中国のレストランには通常マニュアルのようなものは存在せず、各自がそれぞれの判断で動いている。ちょっと気に入られればメニューにないものでも気軽に作ってくれるし、無料の一品サービスもある。客の前だろうがなんだろうが、喜怒哀楽もストレートに表現し、大きい声を出して喜ぶし、店員同士が人前でけんかもする。こうしたところが実に人間的である。反面、多くの日本の飲食店では、作られた笑顔とマニュアル的な対応とうわべだけの丁寧さが目立ち、これらがサービスに取り違えられているような気がする。
例えば、閉店近くなって客がまだ食事をしていても、椅子をテーブルに上げて掃除を始めたり、早く帰るよう催促する店も未だに存在する。この点では中国のレストラン、特に地場のレストランは鷹揚で(交通事情も関係するが)、好きなだけゆっくりしていってくださいと言わんばかりに無干渉である。
中国のレストランのおもしろいところは、日本人がどこかに置き忘れてしまった「人間臭さ」があるだけでなく、日本人には想像のつかないような合理的なサービスもあることだ。その典型が消毒済み食器である。(すべてのレストランではないが)皿や碗がラッピングフィルムで包まれており、1元を払って使うようになっている。
もちろん無料の食器もあるにはあるが、中国では洗い残しや割れた食器などがあるので、人々は食事の前にナプキンでコップや皿を自分で拭いてから使う。もとより誰もレストランの食器の衛生度を信用していないため、消毒済み食器のサービスは昨今どんどん広まりを見せている。
自己責任の中国で、衛生がわずか15円程度で買えるなら高い買い物ではないだろう。
 日本の飲食店では「当店はお客様を心からおもてなしいたします」という言葉を標語にしているところも多い。でも、中国に行くたびに「サービスとは何か」を考えさせられてしまう。もしサービスという言葉を「客をハッピーにさせること」と言い換えると、中国のレストランのほうが、日本のマニュアル一辺倒で融通の利かないレストランよりも、案外いい線を行っているのではないかと思えてくる。
 

▲ページTOPへ


鈴木武生(すずき たけお)   アジアユーロ言語研究所代表
鈴木武生(すずき たけお)

プロフィール:
東京大学大学院博士課程修了、Ph.D(言語学)。専門は英語、中国語、日本語の意味論。
日中韓辭典刊行会顧問、ファブリス株式会社アドバイザー。
文法研究を行う傍ら、辞書編纂および自然言語情報処理、翻訳通訳サービスなどの国 内外の企業支援、企業語学研修およびコンサルタント、異文化セミナー/ビジネススキルセミナーを行う。
著書・訳書・編纂書には『英会話のピンチ切り抜け 術:成功するコミュニケーションのコツ』(NHK出版)、『詳説正規表現』(翻訳書;オライリー出版)、『実践フランチャイズ・ビジネス : FC起業ノウ ハウのすべて』(翻訳書;ダイアモンド社)、『新漢英学習辞典』(春遍雀來 編、講談社インターナショナル)などがある。


メールマガジン購読のお申込み 〜真価を起動する〜 UNIADEX - NexTalk