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“ユビキタス放送”を実現する「IPナビキャスター」
その気になれば地球の裏側からでも、IP電話放送によるライン制御が


広大な敷地を持つ工場、構内、施設内などで利用される従来のアナログ放送は、PBXベースの集中制御型であり、回線を移動できず、高価な専用設備が必要でした。ユニアデックスが開発したVoIPベースの「IPナビキャスター」は、IPネットワークさえあればどこからでも電話で放送を行うことができる、低コストで柔軟な放送システムです。今回はIPナビキャスターについて、ユニアデックスのIPテレフォニー事業室 高橋マネジャーが説明いたします 。
高橋氏

K社は関東一円にいくつもの店舗を構える、総合家電量販店である。最近の売れ筋商品は次世代型携帯電話であり、店頭も携帯電話一色に染まっている。
ある土曜日の午後、F課長の元に仕入れ担当のJから電話が入った。
「課長、U990i、400台押さえましたよ」
「本当か!いつ届く?」
U990iは、最軽量、200万画素カメラ搭載、JAVAのゲームがプリインストールされた次世代携帯電話で、発売当初から売り切れが続出しており、K社チェーンの店頭からも既に姿を消している。
「明日発送ですから、夕方には店頭に届きます。とりあえず、新橋店と町田店と所沢店でいいですね?」
「ああ、それでいい」
「これでセールの目玉になりますね。それじゃ伝票は後でFAXします」
仕入れれば、すぐにすべて売り切れてしまう話題の機種だ。これで今週のセールは大成功に違いない。そうだ、チラシ。チラシのトップを差し替えなければならない。
F課長は急いで受話器を取るとC印刷に電話した。すると、チャイムが鳴って休日を告げるナレーションが流れた。
「本日、C印刷は休業させていただいております」
「そうか、土曜は休みだった」ナレーションは構わずに続けた。「ご用の方は担当者の内線番号を押し、メッセージを録音してください」
担当のM君の携帯は聞いていない。F課長は、藁にもすがる気持ちで内線番号を押し、すぐに連絡をくれるようメッセージを残した。
担当のMがこの留守電を聞くのは、早くても月曜日の朝出社してからだろう。それではセールにチラシが間に合わない。他の方法を考えなければならない。
「U990iだけのチラシを急いで印刷するしかないか・・・」デザイナーに電話をしようと思ったその時、電話が鳴った。
「いつもお世話になっております。C印刷のMです」
「あ、よかった。悪いね、お休みのところ」
「いいえ。それで何でしょうか」
「急ぎなんだけど、月曜納品のチラシのトップを差し替えたいんですよ。今すぐこっちに来れる?」
「ちょっと無理ですね。今日オフなんで、千葉に釣りに来てるんです」千葉では無理か。
やはり別のチラシを作らなければならない。
「どういう差し替えなんですか?」
「先月使った、U990iのトップを、金額同じでもう一度持って来たいんです。品物が手に入ったので、3店舗同時セールを打つんですよ」
「あ、了解しました。どの店舗ですか?」
「新橋、町田、所沢で、3,000部ずつなんですけどね」
「了解です。工場に指示を出しますので、ちょっとお待ちください」千葉から工場に指示を出す? 確かC印刷の工場は八王子にあるはずだ。確か、かなり大きな工場のはずだが、携帯から電話するくらいで簡単に指示できるのだろうか?
10分くらいすると、再び電話が鳴った。
「お待たせしました。月曜納品のチラシのトップを、1月16日分のU990iのものに差し替えて、新橋、町田、所沢店に3,000ずつ納品ですね」
「そう。それでどう。間に合います?」
「もう指示しましたので、いつも通りに納品させていただきます」
「えっ!? よく担当の方がつかまったね」
「工場に緊急の放送かけたんですよ」
「放送?」
「ええ。うちは結構緊急が多いんで、工場全部にIP電話の放送システムが入っていて、外から
でも電話を使って工場全体に放送を流せるんです。担当者に電話しても席にいるかどうか分から
ないし、携帯もつながらないことが多いから、決めうちで放送かけて、ラインを止めちゃうん
です。印刷単位で業務番号を割り振ってありますから、携帯でその状態も分かるし」
「すごいね!それは」
「F課長の留守電も同じシステムで転送されるんです。だからすぐに対応できました」
「ありがとう。助かったよ。これからデザイナーに連絡して、別途チラシを作らなきゃなら
ないかと思ってたけど、安心して帰れます。C印刷さんの放送システムにお礼を言わなくちゃ
いけないね」...

これは架空の物語ですが、「IPナビキャスター」を利用すると、このようなことが実際に可能になるのです。「IPナビキャスター」について、ユニアデックスのIPテレフォニー事業室 高橋マネジャーが説明いたします。


IPナビキャスターとは?

専用マイク、放送設備を使わずに、電話から構内放送をすることができるシステムです。固定電話、無線電話、IP-PHSなどIP電話から放送ができ、通常のPBXからもかけられるようになっています。放送制御サーバーはソフトウェアとして実装されているので、WindowsやLinuxなどの一般的なPC上に構築できます。
音声変換機を設置することでアンプの直前までVoIPによって音声をデータとして流すことができるため、IPネットワークが敷設されていれば特別な回線などは不要です。

放送の仕組みにIPパケットを使っているため、WANやLAN、本社と支店などをつないだ放送も可能となります。既存の放送システムの場合は回線のある構内でしか使えないのですが、「IPナビキャスター」の場合はWANをまたいだリモートの拠点に対しても放送できます。実用性があるかどうかは別として、それこそ海外の工場や施設にも放送で作業を指示することも可能です。

それだけではありません。「IPナビキャスター」はシステム放送にも対応しています。システム放送とはPCに録音しておいたメッセージを自動的に流したり、業務系のシステムと連携して放送を流したりすることをいいます。「IPナビキャスター」は業務系システムと連携するインターフェースを持っていますので、工場の機械を制御するシステムのイベントを受け取り、その情報を構内に自動的に流すことなどが可能です。それを聞いた作業員は次の工程の準備を行うことができます。

また、緊急度に応じた優先放送が可能になっています。通常の連絡放送をしている時に緊急放送が入った場合、通常の放送のジョブを止めて緊急放送を優先して流すことができます。優先度にはプライオリティがつけられるようになっており、優先度のレベル設定は、電話番号による特番制御で行います。
900番、800番など設定された特番を押してから話すと、指定したレベルに合わせた放送ができます。
流すエリアについても、優先放送と同じように特番を押してから流すことで、放送する内容と流すエリアを設定できます。
システム構成例


IPナビキャスターは、どのような企業に向いているシステムなのでしょうか?

高橋氏主なターゲットとしましては、製造業。工場ですね。次に流通業。倉庫などの広い敷地を持っているところです。そして店舗。広い売り場面積があるところです。
小売店舗の場合は、通常レジにマイクがあって店内放送をするのですが、それを無線のIP電話やPHSを使うことで、お店のどこからでも放送ができるようになります。
自治体での利用も考えられます。地方自治体が提供しているCATVインフラにIP電話を乗せ、その中で放送します。今はラジオで行っている防災放送をIPに変更するなどのニーズがあります。


「IPナビキャスター」を開発されたのは、どのようなきっかけからでしょうか?

新日本製鐵様が原点です。元々、君津製鐵所ではオペレーターが介在し手動で工程進捗状況を放送していましたが、ここでトランシーバー無線を更新することを目的にアナログの事業所内PHSシステム構築の線で話が進んでいました。しかし「将来においてもアナログインフラ?」との疑問があり、共通インフラ(=IPネットワーク)を利用した電話システムを実現できないか?電気メーカーやSierへ新日鐵様がヒアリング調査を始められ、これが弊社とのきっかけになりました。その後、音声(聞こえものすべて)をIPインフラで実現することに向け検討が進展しました。エリア対応をなさりたいとか、優先順位をつけたいですとか、そういうニーズに対応させていただきました。最終的には、製造業で使う上で最適の機能を盛り込んだものになっていると思っています。
新日鐵様の場合は、リレー制御からメインフレーム、Linuxまで利用されており、間に置かれたインターフェースサーバーを通して、プラットフォームの違いを吸収することでシステム放送を可能にしています。工場ならではの工程進捗状況連絡にはスピーカーを利用しています。

このシステムは「IPページングシステム」もしくは「ユビキタス工場」と呼ばれています。
IP電話と放送システム、PDAを使った工場の制御システム、Webカメラによる工程監視システムがあり、これをすべてIPインフラ上に乗せています。
これまで君津製鐵所の現場作業員はトランシーバーを使って連絡を取り合っていらっしゃいましたが、これでは外部との連絡はとれません。また現場での制御系システムは経験がないと操作できなかったのですが、IPインフラに統合することにより、ひとりひとりに持たせたIP-PHSなどを使って、経験者による放送とPDAによる制御システムの操作をすることが可能になりました。
今まではバラバラだったシステムを、IPの上で連動させることが可能になったわけです。


ネットワークのトラフィックは問題ないのでしょうか?

VoIPでよく使われるQoSにより、音声パケットを優先して流すように設定しています。ネットワーク帯域を100Mbps用意しており、音声はひとつ100Kbps、Webカメラ1台で数MBですので、帯域としては全く問題ありません。


このシステムを構築する上で特に工夫されたところなどありますか?

高橋氏このページングシステムは、屋外を含むかなり厳しい環境に無線LANを構築しています。それが特長ですね。無線LANといいますと屋内がメインだと思うのですが、それを東京ドーム3個分にあたるかなり広大な敷地面積で、なおかつ屋外を含めて構築している。その上で放送システムが稼動しており、さらにQoSをかけて音声の品質を保っています。

構築する中で苦労したことといえば、優先放送の場合に放送の切替制御が追いつかなくなってしまう現象でしょうか。例えば、700番で放送して、800番が入ってくると前の700番を切って800番で放送し、次に900番が入ってきたら、800番を切って900番を放送する形になります。当初割り込みは、一度にひとつくらいかと思っていたのですが、実際は秒単位で次々と放送が入ってきて、制御が追いつかない状態になって放送できなくなってしまいました。
普通、構内放送で、次から次へと秒単位で放送が割り込んでくることはあまりないのですが、工場では緊急対応が発生しますので、放送できなければ人命に関わる場合もあるのです。
最初のバージョンでは割り込みが重なると不具合が発生することがあったのですが、秒単位で割り込まれても対応できるようなチューニングを行った結果、問題なく稼動しています。
IP上にて秒単位でのスピーカーの制御も行っています。スピーカーは常時ONにしておくとノイズを拾うため、放送の時だけONにして、ない時はOFFにする必要があります。今回のシステムでは放送に入った時、瞬間的にms単位でON/OFFを制御しています。
24時間365日止まらない、ミッションクリティカルな環境で使われている放送システムとして、他にはないシステムだと思います。


かなり厳しい条件でも対応できるシステムのようですが、他社のシステムでこのレベルのものはあるんでしょうか?

多分無理でしょうね。無線LANなど外部環境を含めたシステムであることや、トランザクションの多いシステムを現状で実装しているのはユニアデックスだけだと思います。新日本製鐵様が厳しい環境を用意してくださったことで、このレベルのシステムが初めて可能になったと感謝しています。


従来のトランシーバーや放送設備と比較して、どのようなメリットがあるのでしょうか?

通常放送システムの場合は、放送に対応したPBX設備が必要になります。それからアンプやその他の専用の放送設備が必要になりますが、「IPナビキャスター」の場合は、スピーカーと簡単なアンプと電話、そして放送サーバーで実現できます。エリアの追加は配線作業などせずともコンピューター上でできますし、管理もすべて社内で行うことができます。放送サーバーもPC上に構築されますから、情報システム部門の方でしたら管理が可能です。
PBXを利用している場合、設置したものを引っ越すのが大変ですが、IP電話の一番のメリットはネットワークに接続するだけで簡単に使えることです。
もちろんIPネットワークに接続されていれば、地球の裏側からでも放送を行うことができるわけで、低コストで、まさに「ユビキタス」放送システムを手に入れることができます。色々な業種によってIPナビキャスターの使われ方も様々だと思います。そういった意味で、今後さらに、お客様に育てていただく放送システムだと考えています。


「IP FORUM 2004」(2004年4月7日(水)・8日(木)、東京ビッグサイト)に出展。
〜 今回登場した高橋マネジャーをはじめ、弊社スタッフが特別講演を行います 〜


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