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Leading Talk
2008年9月25日号

NextTalkではITトレンドウオッチャー 神田敏晶の「オルタナペディア」をスタートします。今回は、新連載【特別編】として、ユニアデックスの トレンドウォッチャー 松隈基至との対談をお届けします。いま注目されている「クラウドコンピューティング」とは?

 
「オルタナペディア」のコンセプトはこちら

 

 
 
《 神田 》  
ウェブ2.0、SaaS、かつてはユビキタスやグリッドコンピューティングといろいろな最新IT流行語に惑わされた僕たちなんですが、今度のクラウドコンピューティングは、はたして本物(笑)なんでしょうか?
神田敏晶(かんだ としあき)
ビデオジャーナリスト。世界IT情報をビデオでレポートし、Webで発表することをライフワークとしている。 現在は、取材の傍ら関西大学で非常勤講師として「ネットジャーナリズム」についての教鞭もとっている。
ユニアデックス株式会社商品戦略部マーケティング室プラットフォーム戦略グループ  
グループマネージャ 
松隈 基至(まつぐま もとゆき)
国立情報学研究所 社会共有知研究センター産学連携研究員の肩書きも持つ。
 
《 松隈 》
以前から、我々はインターネットそのものをクラウド(雲)に例えて表現していたんですが、ネットの向こう側にある様々なサービスを利用するコンピューティングスタイルのことをGoogleのエリック・シュミットCEOが「クラウドコンピューティング」と言い出したことがきっかけでこのキーワードが認知されはじめました。最近では、アマゾンのAmazon EC2(開発者向け従量制ホスティング)やAmazon S3(データストレージホスティング)、IBMのIBM Blue Cloud戦略、MicrosoftのWindows Live Core、さらにHP、Sun Microsystemsと、こぞってクラウドコンピューティングに参入してきています。
 
《 神田 》
ハード、ソフトベンダー問わず参入してきているんですね。
 
《 松隈 》
はい、そうなんです。我々、ユニアデックスのようなICTの運用をサポートをする会社としても、顧客の煩わしさを解消するために運用管理のライフサイクルマネジメント(LCM)化に取り組んでいるんですが、雲の中にアクセスすれば何でも解決できるというクラウドコンピューティングというコンピューティングスタイルは、これからのICT運用にとって大きなパラダイムシフトになると考えています。
 
《 神田 》
これまでインターネットでは、「情報を読む」ということが主体だったのですが、Wikipediaのようなサービスの登場によって、世界中の人々の集合知が活かされるようになりましたね。Wikipediaでは、情報を書き込めるだけでなく、たとえ情報が間違っていても、別の誰かが情報を修正してくれたり、内容を追記してくれたりするので、百科事典よりも深い知識が得られるようになりましたね。
それからGoogle Docsの登場によって、データを複数のローカルディスクに持つよりも、Google Docs内で管理するほうが情報もつねに最新で、グループ内での共有が気軽にできるようになりました。これは、Web2.0の範疇だと思っていたのですが、こうしたサービスもクラウドコンピューティングなのでしょうか?
   
《 松隈 》  
“雲”にアクセスしてユーザーが即座にサービスが利用できる、という意味ではクラウドコンピューティングといえますね。ただし、クラウドコンピューティングは、特定のサーバーにアクセスする、というより、ハードやソフトウエア、データソースの所在をユーザーに意識させることなく利用できる、という意味あいが濃いですね。
ユーザー側から見るとWebサービスの進化とその効果がいわゆる「Web2.0」と言われていますが、かたや、検索エンジンやSNSなどのサービスを提供/運用する立場から考えるとどのようなサーバー機器にどのアプリケーションを配置し、データをどこに格納するのか、またセキュリティーや負荷を考えて、それを自社内やデータセンターにいくらでどのくらい設置するのか、いろいろなパターンや状況を想定してシステム構築を考えなければなりません。
つまり、利用者がいなくても、将来的な利用者の増加を見込んで多大な先行投資をしなければそれらのサービスを実施できなかったのがこれまでです。しかし、クラウドコンピューティングでは、それらの多大な先行投資は必要なく、サービス提供者ですら必要なリソースを必要な時だけ活用し、それに見合っただけの対価を支払えばいいという好都合な環境が構築できるのです。しかも、アクセスする側は、PCでも、携帯でも、iPhoneでも何でもかまわないという世界なのです。また、自分のデータをクラウドに預けると、別の誰かがそれを別の形で活用できるという、今までにない新たなコンピューティングの世界も見え始めています。 つまり、Webサービス提供者側の利便性を優先した究極のシステム、というのがクラウドコンピューティングの特徴ではないでしょうか。
   
《 神田 》  
それは、Webサービス提供者にとってまさに福音ですね。ハード機器やOS、アプリケーションを購入しないで、サービスインに踏み込めるのですから。しかし、それではハードベンダーの方や、運用なさるユニアデックスさんのビジネスを脅かしかねませんか?
   
クラウドコンピューティングとは
インターネットをクラウド(雲)に例え、雲の中にある無数のコンピューターやデータをユーザーが意識することなく、利用するスタイルを表す。またPC、携帯を含むさまざまなデバイスからインターネット上の『クラウド』にアクセスすることで、必要な時に必要なサービスを受けることができる仕組み。 Web2.0、ASP、SaaS、PaaS、APIの公開を経て、ようやくそれらを広義で包括する上位のキーワードとして「クラウドコンピューティング」が登場してきた言葉。 OS、アプリケーション、サービスなどのコンピューター業界におけるビジネス概念が、「クラウドコンピューティング(cloud computing)」)によって、大きく変化するといわれている。
 
 
《 松隈 》  
そうなんですよ。我々ICT業界の根底を揺るがすパラダイムシフトが起こるかも知れません。いままでは、ユーザーに機器を購入していただき、OSを入れて、サーバーを設置し、アプリケーションを開発して、納品していく。そして我々は、その運用面をサポートするというビジネス形態でした。しかし、クラウドコンピューティングとなると、ユーザーは機器を購入する必要がなくなり、複数のサービスを組み合わせて、必要な分だけ利用するというビジネス形態になるんです。ベンダーさんも、そして我々も新しいサービスやサポートを模索している最中ですね。まさに雲の中。これは危機でもあり、実はチャンスでもあると捉えています。
   
《 神田 》  
なるほど。ICT業界でも新しいビジネススタイルを試行錯誤している真っ只中、ということですね。
   
《 松隈 》  
たとえば、ここにSASTIKというUSBデバイスがあります。このUSBデバイスは、容量がゼロでデータを全く保存できないものなんですよ(笑)。しかし、このSASTIKを挿入するだけで、インターネットにアクセスできる環境にあるブラウザーを搭載したパソコンであれば、どこからでも、自分の会社のデータやメールサーバーにアクセスできるのです。使っているのはブラウザーのエンジン部分だけ。そして、仕事が終わって抜き去ると、キレイにキャッシュも削除してデータはすべてクラウドの中に安全に保存されているという仕組みになっています。面白いでしょ。今度、このSASTIKは日本ユニシスがサービスとして顧客に提供していきますが、すでに我々の社内でも全社で導入しており、社員一人ひとりが使っています。
   
《 神田 》  
おおっ〜!それは、もうUSBメモリーでデータを持ち歩くだけの時代は終焉しそうですね!データのストレージが複数にあるよりも、データがクラウドの1カ所に保存され、関係者がその瞬間から活用できるというワケですね。これはクラウドコンピューティングの便利さを一発で体感できる商品ですね。
 
《 松隈 》

つまり、クラウドコンピューティングとは、「所有することから利用すること」へのパラダイムシフトそのものなんですね。また、すでにAmazonなどが参入していますが、これは何が起きてもおかしくないことを象徴しています。

ネット本屋さんが、システムのインフラをそのまま貸し出すサービスをやりはじめるものだから、我われも安穏としてられませんよ(笑)。しかも世界で一番、利用されているショッピングサイトとして、セキュリティーも実証済みのインフラを、レンタルサーバー費用程度、いや、もしかしたらもっと安い価格で利用できるのですから。



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