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Leading Talk 2008年12月19日号  

神田敏晶の「オルタナペディア」 Vol.02 インターネット6000日間の興亡
「オルタナペディア」のコンセプトはこちら  
 
画期的なアイデアに満ちたiPhoneのアプリケーション

iPhoneの最大の特徴は、「AppStore」というアプリケーションストアである。音楽配信サービスから始まったiTunesStoreが、アプリケーションを販売するプラットフォームへと成長している。

iPhoneやiPodTouchのソフトウエアをデベロッパーが開発し、アップルと売上をレベニューシェアしながら販売している。無料のソフトも多く存在するが、なによりもすべてのソフトがたったの数100円という市場なので、購入する方もとても気軽だ。今月は買い過ぎたかな?と思っても数千円しか使っていない。

人気ランキングは、毎週変化し、想像もしないような画期的なアイデアに満ちたiPhoneのアプリケーションが登場してくる。

たとえば、音楽では、世界のFMラジオがコマーシャルつきで楽しめる「FlyCast」、西暦で選ぶとその年のヒット曲だけが流れる「Top100s by year」、鼻歌で歌って楽曲を検索できる「midomi」、iPhoneをギターにする「PocketGuitar」などがある。

写真アプリケーションもユニークだ。
iPhoneには、30万画素の低レゾリューションのカメラしかない。しかしその性能を活かしデベロッパーが開発している。ロシアのトイカメラをイメージした「ToyCamera」、70年代のポラロイド写真をイメージした「CameraBag」、犬を撮影するときに、ワンと吠えてくれて犬をふり向かせるという「犬カメラ」、ユーザー登録不要の写真SNS「PhotoShare」、見知らぬ他人と写真を見せあう「PhotoSwap」と写真だけでもこれだけ多彩なアプリケーションが登場している。
 
自由度の高いiphoneのアプリケーション開発

 
iPhoneという限られたデバイスの中で、デベロッパーがこれほどまでに開発に熱中しているのはなぜだろうか?全世界690万台の市場があるからか?実は、それだけではない。

これには、現在の携帯電話市場が、かつてのMS-DOSもしくはホストコンピューター時代の世界観に酷似しているからだ。「iアプリ」や「EZアプリ」のように携帯電話にもアプリケーションプラットフォームがあるが、それらはかなり封建的なヒエラルキーで統制されている。

iPhoneの場合、誰もがアップルのサイトにアクセスして、SDK(ソフトウエアデベロップメントキット)をダウンロードして、登録すれば、iPhoneのデベロッパーになれてしまうという気軽さがある。新規参入者を拒まないのである。
いや、新規参入者がサードパーティーと呼ばれるデベロッパーとなり、かつてのMacの市場を牽引してきた歴史的なマイルストーンがあるからだ。

つまり、iPhoneは、1980〜90年代のPCと同じ進化の過程をなぞるように歩んでいる。

メーカーがOSとPCを作り、周辺装置やソフトをサードパーティーと呼ばれるデベロッパーが開発するという構図だ。iApp Storeでは、その関係が再構築されているように感じる。

PCの世界では、常に机やイスに座っている時間が必要だった。しかしiPhoneは、机とイス以外の時間で稼働している。つまり携帯電話と同じ時間帯で稼働していることになる。むしろそちらの時間のほうが個人の自由度は高いのである。

携帯電話の世界観は相手とのコミュニケーションがメインだったが、iPhoneの場合は、メインは自分自身にあるようだ。自分のためのブログ作成ツールやSNS、お小遣い帳に、カロリー計算、チェックリストなど、ありとあらゆるiAppが登場する。
 
インターネット興亡後の問題

 
個人の機能を拡張するという概念で誕生したパーソナルコンピューターは、1984年以来、1/4世紀(9000日間)をかけて、ようやく机とイスというデスクトップのメタファー以外を見いだした。
そしてインターネットのメタファーは6000日、無線LANメタファーで3500日、iPhoneメタファーはたったの500日(日本では130日)である。

ネットの世界で起きた劇的な変化が、今度は、手のひらの中のパームトップで起きようとしている。デスクトップメタファーを簡易に移植した携帯電話インターネットと違って、本当に24時間、いつでもどこでも、個人の機能を拡張するパーソナルコンピューターの時代が、やっと本当に始まったようだ。

そして、今度の問題は、拡張された個人が何をすべきかである。
今までのコンピューティングは人間の仕事のデフレ化を促進してきた。スピードアップは、仕事の量や質をあげたが、給与体系はそのままであり、結局デフレとなった。仕事は10年前の100倍に増えているのにインカムは変わらない。つまり人間の価値は下がっていたのである。
これからのコンピューティングは、仕事や趣味の価値や質を高めるものでなくてはならないとボクは思う。

 
神田敏晶氏 神田敏晶(かんだ としあき)

KandaNewsNetwork,Inc. 代表取締役
impress.TVキャスター
早稲田大学非常勤講師

プロフィール:
ビデオジャーナリスト。神戸市生まれ。ワインの企画・調査・販売などのマーケティング業を経て、コンピューター雑誌の企画編集とDTPに携わる。その後、CD-ROMの制作・販売などを行った後に、1995年よりビデオストリーミングによる個人放送局「KandaNewsNetwork」を運営開始。ビデオカメラ一台で、世界のIT企業や展示会取材に東奔西走中。
現在、impress.TVキャスター、早稲田大学非常勤講師、デジタルハリウッド特別講師、イノベーションラボ講師。2002年4月1日より法人化。

ホームページアドレス http://www.knn.com


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