●11月7日号●
インドネシア・バリ島のテロから1週間後に現場に居た。2年前のナイトクラブでのテロではなく、夕食時に普通のレストランで起きたテロだった。しかも繁華街である。
観光客の多い地域だから、ジャカルタよりもバリの方が狙われる。しかし1週間も経過すると、テロ現場のレストランにはバリケードがなされているが、付近のショップはもうしっかりと通常営業していた。日本のHISだけが閉店されていたのが印象的だった。バリなどの観光地では、テロそのものよりも、テロを恐れて観光客がいなくなることの方が深刻な問題なのである。また、テロに過剰に反応しすぎるのも、テロ行為の目的の1つなので慎重になりたい。メディアも、事故現場ばかりでなく、安全な付近も報道する義務があることだろう。
現在、高級なレストランやホテルでは厳重なボディチェックが実施され、安いレストランや安ホテルではノーチェックとなる。ボディチェックを何回か繰り返し体験することにより、テロの脅威よりも「ボディチェックされない場所にいる」ことの方に不安を感じている自分に気づいた。そのうち、ボディチェックそのものが「高級感」であると認識されるのも時間の問題なのかもしれない。守られていないことの不安をついつい払拭したくなってしまう。
現在、渡航国の安全性を確かめるには、外務省の海外安全ホームページがある。外務省では、4つのレベルで渡航勧告が用意されている。
http://www.pubanzen.mofa.go.jp/
レベル1
「十分注意して下さい」
レベル2
「渡航の是非を検討して下さい」
レベル3
「渡航の延期をおすすめします」
レベル4
「退避を勧告します。渡航は延期して下さい」
現在バリ島は、レベル1「十分注意して下さい」である。スマトラ沖大地震の被害のナングル・アチェ・ダルサラムは、レベル3の「渡航の延期をおすすめします」となっている。10年前であれば、このように個人が外務省に対して、渡航国の安全性を客観的に確認する術がなかった。実際に勧告がでていないから絶対に安全だ、ということはないが、一応の目安としては使えるだろう。また、その地域の情報が常に集約されているので便利である。実際、企業の出張などではレベル1になるとビジネスとして出張できない会社が多く、多大な損失が生まれている。しかし社会情勢はまだ事前に判断しやすいが、自然災害の場合は世界のどこにいても条件は同じなのかもしれない。
1995年の阪神大震災。神戸市市役所職員のビデオキャプチャー画像が、インターネットで等身大の情報としてTVなどのニュースよりもリアルな生活者の視点で報道されたことにより、インターネットメディアの特性が注目された。市内各地の避難所にPCが持ち込まれ、電気と電話線さえあれば、日々の状況が外部に伝達できるということも確認できたが、コンピュータリテラシーが浸透していないために実際に運用レベルにまで達することはなかった。
2001年ニューヨーク911の時、初期のブロガーは、自分のブログに「私は大丈夫」と書き込んだ。
http://www.50minutehour.net/archive/2001_09_01_index.htm
世界はWTCがどうなったのかを知りたがったが、NYに知人がいる人たちは、WTCの事よりも知人の安否のほうが気になった。初期のブログは安否を簡単にパブリッシュできることで話題を集めた。
2004年スマトラ沖大地震による津波では、流されてゆく人の姿が、観光客のホームビデオカメラによる映像で伝播された。2005年7月7日のロンドン同時多発テロ時では、3G携帯によるモブログが、街角で起こった事故の悲惨さを他メディアより早く伝えた。
2005年8月にハリケーン・カトリーナが襲ったニューオリンズでは、ポッドキャスティングによる義援活動がさかんにおこなわれている。
http://www.podshow.com/relief/
インターネットメディアは、災害やテロの度に他メディアがフォローできない情報をカバーするコミュニティ型メディアへと成長してきている。
人類は、自然災害や予期せぬテロに常に取り囲まれているといっても過言ではない。ITは、人類を災害やテロから未然に防ぐためのツールとして活用されはじめている。
災害情報システムは、いざという時に役に立たないというのがほぼ定説になっている。しかし、なくても困るのだ。災害は常に想定の範囲外で発生する。トータルな災害システムでなくても、分散的な災害システムを、いざという時にアッセンブルできる応用力が必要なのだ。
NY911の時、ボクはちょうどニューヨーク発で空を飛んでおり、ヒューストンで降ろされた。空港がロックアウトされ、赤十字のバスでホテルの避難所まで乗せられメキシコ人グループと過ごすことになった。2日目にメキシコ人グループは、町にプロパンガスとパンとソーセージを買出しに行き、3日目にはもう、ホットドッグ屋をやりはじめたのだ。いつ国に帰れるのか分からないので、日銭を稼ぐ商売として勝手に起業したのだった。阪神大震災時に、神戸で3ヶ月近くも避難所の配給に頼っていた自分を恥じた。
災害は一度起きてしまったら仕方なく受け止めるしかない。ただし、その後のリカバリーでは、色んな場面において応用力が必要となるのだとこの時に感じた。
ITも一緒だろう。普段と違うタスクが発生した時に、今、持ちうる資産や人的要素でどう対応できるのか?またそれをどのように使えば、効果が生み出せるか?そのリスクとベネフィットは?そして責任と評価の対象は誰なのか?それらのことが同時にマルチタスクで進められることが必要となってくる。その時に最も重要なのは、決裁権があるのは誰なのか、を決めておくことである。また、その人が決裁できない場合、その権限を誰に委譲するのかまで決めておかなければならない。
ITは災害を未然に防いでくれたり、復旧に役立ってくれたりするだろう。しかし、一番大事なことは、ITを使う側のイマジネーションや応用力である。想定の範囲外のトラブルが起きたことを想像する会議が一日くらいあっても良いのではないだろうか?
神田敏晶(かんだ としあき)
KandaNewsNetwork,Inc. 代表取締役
impress.TVキャスター
早稲田大学非常勤講師
プロフィール:
ビデオジャーナリスト。神戸市生まれ。ワインの企画・調査・販売などのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の企画編集とDTPに携わる。その後、CD-ROMの制作・販売などを行った後に、1995年よりビデオストリーミングによる個人放送局「KandaNewsNetwork」を運営開始。ビデオカメラ一台で、世界のIT企業や展示会取材に東奔西走中。
現在、impress.TVキャスター、早稲田大学非常勤講師、デジタルハリウッド特別講師、イノベーションラボ講師。2002年4月1日より法人化。
ホームページアドレス
http://www.knn.com
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