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Leading Talk
2006年4月28日号

ユビキタスオフィスで優秀な人材を確保しよう!
−テクノロジーに人への優しさを加えることで、
 利便性と人間性のバランスのとれた新しいオフィス環境を実現する−

末端ではまだまだ景気回復の実感はないが、新聞報道や政府発表などなんとなく景気は上向いてきた感もある。ボーナス増額予測や住宅ローン金利の上昇もあり、デフレ傾向はやっと折り返し点に来たのかもしれない。
とはいえ、景気回復は一部大手企業中心で、中堅、中小企業にとってはビジネスに追い風というほどの好材料は揃っていない。ビジネス案件数は増えているものの、コストに対する要求はさらに厳しく、悠長にしているとライバルに足下を掬われる。無理して仕事を獲得したはいいが、社内リソース不足で外注化し赤字すれすれになど、いま企業にはコスト削減しながら「攻めの戦略」が求められている。


■大手中心に採用意欲が旺盛に
ここ最近、大手企業を中心に新卒採用枠拡大のニュースが飛び込んでくる。一部の外資系IT企業さえもが、新卒採用に踏み切るとか。大手IBMなどを除き、即戦力をもっとも重視する外資系企業が、数年間の教育期間を要する新卒を採用するというのだから、中長期的にも景気上昇が予測されてきたということだろうか。

大手の採用意欲が高くなると、知名度の低い中堅以下の企業で優秀な人材を確保するのは極めて難しくなる。そもそも大手企業は、相対的に給与水準が高い。インターネット上で採用企業情報を給与水準の高い順に並べるのはいとも簡単、中小企業がそこで大手より上位に食い込むのは至難の業だ。おのずと、応募は大手に偏ることになる。



■ユビキタスオフィス制度を導入する
そうなると、給与よりも魅力的な仕事環境をアピールしなければならない。休日が多いとかフレックスタイム制度が導入されているとか、人事制度の工夫も必要だ。とはいえ、この程度はどの企業でも当たり前のこと。最近、新たに注目を浴びている制度に「在宅勤務」がある。これをうまく活用することで、中堅、中小企業でも大手に負けない魅力的な職場環境を構築できる可能性がありそうだ。大手よりも、むしろフットワークの軽い中堅、中小企業のほうが、この制度をより効果的に運用できるかもしれない。

「在宅勤務制度」、これはかっこよくいえば、「ユビキタスオフィス」だ。ネットワークの普及した現在では、満員電車に乗って毎日オフィスに出勤しなくとも、どこにいてもオフィスと同じレベルで業務が遂行できる。これを実現させ、自宅でもオフィスでも必要に応じて就業場所を自由に変化させるという制度だ。
実際に諸外国、とくに国土が広大で移動に時間がかかるようなところは、積極的に在宅勤務を推奨しているようだ。カナダのように冬に雪や寒さで通勤が困難になるところでは、この在宅勤務制度がなくてはならないものになってきているとか。

仕事、会社が第一優先だった時代から、個人の時間を大切にしたいという時代に変化していることは誰も否定しないだろう。片道1時間半では、1ヶ月に60時間あまりが通勤時間に費やされる。この時間を趣味や育児に使えたら、人生がどんなに充実することか。

介護が必要な家族を抱えているような場合は、もっと切実に時間を活用したいはず。これらの要求に対し、ICT(Information and Communication Technology)の活用で家庭と職場の両立が容易にできるようになったのだ。
いまでは、大抵の仕事はPC環境があれば実現できるという人も多いだろう。シトリックス・システムズが提供するCitrix Access Suiteやマイクロソフトのリモートデスクトップなどを利用すれば、会社のPC環境がセキュアに自宅に実現できる。これらの方法ならば、ノートPCを持ち歩いて盗難や紛失で情報漏洩なんてことにびくびくする必要もない。このほかにいるのが電話だ。携帯電話を支給する方法もあるが、これでは内線電話をとれない。IP電話を採用し適宜携帯電話に転送したり、ソフトフォンを利用して自宅のPCで内線電話に直接出たりという方法がある。これなら電話をかける側は、実際に相手がどこにいるかを意識する必要はない。
個人の仕事環境が柔軟になり得をするのは、従業員ばかりではない。地代の高い都会に、1人1台の机やスペースを確保せずに最低限ですませられれば、オフィスコストを大幅に削減できる。なによりも、ユビキタスオフィスで「働きやすい会社」というイメージを確立すれば、企業にとっては優秀な人材を獲得する強力な武器になるかもしれない。



■「人」の管理とケアが重要に
在宅勤務制度は、いいことばかりではない。きちんと管理、運営しなければ「人」の問題が発生する。たとえば、顧客クレーム処理をする業務を自宅にて1人で担当していると、ストレスが蓄積する。オフィスであれば、メンバー間で同じ空気を共有できるので、ちょっとした会話でストレスが解消できるが在宅勤務ではそうはいかない。かといって、職場のストレスを家族に向けるわけにもいかない。こういったときには、チャットの仕組みが意外に役に立つそうだ。電話やメールを書いて誰かと連絡をとりあうほどのことではない「ちょっとした愚痴」のようなものを、瞬時に簡単にやりとりできる仕組みが孤独感から救ってくれるのだ。
もう1つの問題は、個人の時間の管理。自宅にいて目が届かないのでさぼる心配もあるが、むしろ在宅勤務では仕事とプライベートの区別がつきにくくだらだらと夜遅くまで仕事をしてしまう例が多いとか。さらに、在宅勤務になると連絡がメールに偏るため、メンバーがどんな心境で業務報告しているのか、そのときの表情や体調はどうなのかといったことを、マネジャーは文字だけではなかなか把握できない。じつは、このことは、在宅勤務にかぎった話ではない。なにごともメールですましていると不要なトラブルに発展、という経験を多くの人がしているのではないだろうか。
マネジャーとメンバー間でいかにしてコミュニケーションをとるか、リモート環境とビデオ会議やテレカンファレンスなどを臨機応変に活用して、やはりフェイス・トゥ・フェイスでのコミュニケーション機会をなるべく多くもつことが重要となるのだ。


■利便性と人間性のバランスをとろう
技術を駆使すれば、利便性は確保できる。利便性や効率を追求しすぎてしまうと、人間性が失われる。ただでさえ無機質で温もりのないコンピュータに対峙することが多い現代では、利便性と人間性のバランスをとることが大切だ。働きやすい会社は、技術的な利便性にも優れていて、かつ人間的な優しさを忘れていない企業であろう。何事もバランスが大事、ということだ。
制度を取り入れる企業だけでなく、ソリューションを提供するベンダーもこのあたりを考慮した提案をするといいだろう。ベンダーは、とかく自社ソリューションの技術的な優位性を前面に押し出しがちだが、ここは1つ在宅勤務者の心の問題にまで踏み込んだ提案ができると、商談を有利に進められるのかもしれない。


  谷川耕一プロフィール
AI、エキスパートシステムが流行っていたころに開発エンジニアになる。
その後、雑誌編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報担当者などを経験。現在は、オープンシステム開発をおもなターゲットにしたソフトハウスの経営とフリーランスライターという二足の草鞋を履いている。
アイティメディア・オルタナティブ・ブロガー。アイティメディア、雑誌などでエンタープライズ系ITニュースを多数執筆。


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