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Leading Talk
2006年6月2日号

情報のカンブリア紀
〜Web2.0時代がもたらす情報環境の爆発的な変化とは?〜

2006年、「Web2.0」によって統括・再定義化されたインターネットサービスは、徐々にではあるが、本来の「インターネットの正しいあり方」を志向するようになってきている。インターネット上で起きていることは、もうすでにサイバーでヴァーチャルな世界ではなく、リアルな世界の延長として認識しておかなければならない。

数百年後の世界から見ると、現在のインターネット社会は、地球人類にとっての「共有すべき神経系シナプス」が、ネットによって一瞬にして繋がった時期に見えることだろう。それはまさに、「カンブリア紀」のように映っているに違いない。生物の進化史上、5億4300万年前のカンブリア紀は一大イベント期であった。


それまではゆっくりと進化していた生物たちが、この時期に、爆発的に多様になったと言われている。カンブリア紀の特徴として、太陽の活動の活発化と大気成分の変化が挙げられる。これらにより酸素が大量発生し、捕獲者(プレデター)と呼ばれる、酸素呼吸を取り入れて迅速に動くことができる生物たちが一挙に誕生した。また、嗅覚・聴覚・触覚などの感覚器官は緩やかに時間をかけて進化を遂げたが、視覚の誕生は爆発的な進化をもたらした。生物に「眼」が誕生したことにより、捕獲活動をコントロールできるようになったり、捕獲者を捕獲する新たな捕獲者が誕生し、捕獲連鎖の生態系も生まれたりしたのだ。最初の眼は三葉虫に備わった。また、三葉虫に捕食されないために、被捕食者にまでも眼が備わった。視覚が登場したことが、カンブリア紀生物の「門」を大きく広げたのである。

メディアにも、過去に爆発した時期があった。新聞が登場したことで、国民の識字率が向上し、視覚によるニュースの収集を可能にした。ラジオが登場したことで、聴覚によってリアルタイムに、しかも何か別のことをしながらでも情報を得ることができるようになった。しかし、これらは「視覚」や「聴覚」という人間の単一の器官を利用した情報の収集方法でしかなかった。しかし、テレビという「視聴覚」を使ったメディアが誕生したことにより、新聞や雑誌を購読していないお茶の間にまで情報伝達の手段が広がったのである。テレビ演説のおかげでケネディはニクソンを破ったが、皮肉にも衛星放送の試験放送の日、ダラスでケネディが暗殺されたことも世界中に「リアルタイムに」知れ渡った。テレビメディアは、音声と映像を組み合わせることによって、自分があたかもその場に居合わせたかのような「疑似体験」を可能にしたのである。


記者のコミュニケーション媒体も伝書鳩が電信に、電信が電話に、テレックスがファックスに…。ファックスが電子メールに…とここまでは、緩やかな変化を遂げてきた。が、ここで「Web」の誕生である。カンブリア紀の「視覚」に相当する大爆発現象が訪れている。Webサイトの評価は、クリック数からページビューへと徐々に変化してきた。Web2.0という概念で、すでにRSSは情報発信において標準とされるようになりはじめ、Webサイトに来訪させた結果のページビューから、検索されることや、RSSを購読させる動向へ変わりつつある。「さよならページビュー数、こんにちはRSSフィード数」という図式も見えはじめてきている。テレビはハードディスクレコーダーによって完全タイムシフトを実現し、放送の編成をカスタマイズした。EPG(電子番組プログラム)は、ネットと結合し新たなサービスを生みだす。薄型大型テレビは、日本家庭のリビングルームの環境をも進化させる。インターネットのブログは、一部のユーザーの特権であった個人ホームページを、誰もが開設できる無料のホームページへと変化させ、ある者はアフィリエイトで小遣いまでも捻出できるような構造を構築する。


従来、情報に対しての「ユーザー」は、エンドユーザー(消費者)として情報を受信して収集し、消費するという役割であった。しかし、今やユーザーは、ブログやブログの吐き出すRSSによって、最先端の情報発信者へと進化しはじめている。情報における「カンブリアの視覚」を持ったといえるだろう。それらの視覚を持ったユーザーの動向を大手メディアが報道し、さらにユーザーがその動向を分析するという情報の連鎖する環境が誕生している。それらにより情報環境は大きく変わるだろう。ローランド・ホールは購買行動を「AIDMAの法則」として、Attention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)のように位置づけた。しかし、それは現在「ホリスティック・コミュニケーション」によって、「AISASの法則」へと変化した。AISASの法則とは、Attention(注意)→Interest(関心)→Search(検索)→Action(行動)→Share(共有)とされ、「検索」と「共有」という行動が目立って変わっている。インターネットがこれらを劇的に簡単にしてきたのだ。広告や販売促進に「検索」や「共有」という仕掛けは、残念ながらなじみにくい。「口コミ」や「バズマーケティング」といった、噂レベルのユーザーメディアではなく、もっと本格的なユーザーメディア、すなわちCGM(コンシューマー・ジェネレーテッド・メディア=消費者作成メディア)などを意識していかなくてはならない時代へ突入してきている。

しかし、情報環境の生態系がカンブリア紀並みに変わりつつあるのに、ビジネス面での応用は、いまだに少しずつしか進化していないのが現状だ。

「ビジネス2.0」への変化対応が必要になってきている。

  神田敏晶(かんだ としあき)
KandaNewsNetwork,Inc. 代表取締役
impress.TVキャスター
早稲田大学非常勤講師

プロフィール:
ビデオジャーナリスト。神戸市生まれ。ワインの企画・調査・販売などのマーケティング業を経て、 コンピュータ雑誌の企画編集 とDTPに携わる。その後、CD-ROMの制作・販売などを行った後に、 1995年よりビデオストリーミングによる個人放送局「KandaNewsNetwork」を運営開始。
ビデオカメラ一台で、世界のIT企業や展示会取材に東奔西走中。
現在、impress.TVキャスター、早稲田大学非常勤講師、デジタルハリウッド特別講師、 イノベーションラボ講師。2002年4月1日より法人化。

ホームページアドレス http://www.knn.com


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