特集:ユニアデックスのITビジネスに対する考え方や取り組み状況、そして各ソリューション概要などを各スペシャリストがご紹介します

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2015年05月19日号

連載対談「未来飛考空間」 第1回 -辻野氏と語るITの今と日本の課題-前編「分かっていますか? After Internetの力」

5年先、10年先を見据えたときに、ITはどのような役割を果たしているのでしょうか。これから求められるITサービスを追求するために、2013年、ユニアデックスは未来サービス研究所を設立しました。連載対談「未来飛考空間」では、研究所員がビジネスリーダーや各分野の専門家と対談をし、ITや社会の未来像を探っていきます。第1回は、ソニーのカンパニープレジデントを歴任し、グーグル日本法人の社長を務め、現在はアレックスの代表取締役社長兼CEOとして活躍する辻野晃一郎氏と意見を交換しました。その模様を2回にわたってお伝えします。
辻野 晃一郎(つじの こういちろう)
プロフィール:
1957年福岡県生まれ。
1984年に慶應義塾大学大学院工学研究科を修了し、同年ソニーに入社。入社後、VAIO、スゴ録、コクーンなど、ソニーの主力商品を次々と生み出す。2006年にソニー退社後、翌年、グーグルに入社。2009年にグーグル日本法人代表取締役社長に就任。 2010年4月にグーグルを退社し、アレックス株式会社を創業。著書に『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』『成功体験はいらない』がある。

■インターネットがもう一つ地球をつくった


ユニアデックス 小椋 則樹
―小椋―
辻野さんは、ソニーで世界を相手にビジネスを手掛け、また、グーグルというグローバルなインターネット企業の日本市場の開拓をリードされてきました。今はクラウドファンディングという新しいビジネス創生モデルにも取り組まれています。その辻野さんから見て、今のビジネスで注目すべきポイントはどんなところにあるのでしょうか。

―辻野―
最も大事なことは、インターネットの普及によって、世界が一変してしまったということです。「Before Internet」と「After Internet」はまったく違う世界です。前者はリアルな地球が一つだけ存在し、後者はサイバー空間に出現した二つめの地球、バーチャルな地球が存在する世界です。バーチャルな地球に国境はありません。30億の人たちが直接つながっています。当然、競争するうえでの前提条件も変わってしまいました。
しかし、日本の企業の多くはいまだに「Before Internet」の世界にとどまったままです。一方で米国の企業はシリコンバレーに象徴されるように、「After Internet」の世界でビジネスを展開しています。私がいたグーグルでは、技術革新に莫大な投資を続け、変化を加速させています。このままではその差は広がる一方です。


―小椋―
日本の企業の多くは品質第一で成功してきましたが、その成功体験から抜けきれないでいるところも否めません。変化に素早く対応できる体制や仕組みを提供していくことも、私たち未来サービス研究所の役割だと考えています。そのため、我々はまず共感できる未来予測を行い、その上でより正確な判断がすぐにできるように情報をまとめ、共有および活用できる仕組みをつくったり、エンジニアには将来を見据えて新たな技術の応用にチャレンジする場をつくったりとさまざまな活動を行っています。


アレックス 辻野 晃一郎氏
―辻野―
日本人は品質を大切にしますよね。それは確かに大事なことです。しかし、一方で多くの工業製品が、消費財になりつつあります。例えば、スマートフォンも同じものを長く使うのではなく、次々に買い替えるのが当たり前になっています。「走りながら進化させていく」というスタンスに切り替わっているのです。
大事なことは、同じ品質という言葉でも、かつての耐久財の品質と今の品質とは根本的にアプローチが違うということです。企業のサーバーにしても、昔は壊れないことが重要でしたが、今はサーバーを分散させて、壊れたらマシンを入れ替えることで、継続性を実現しています。冷却にしても、強力な冷房機器を入れて電力を使って冷やすより、寒冷地にデータセンターを設けるなど、少しでも電力に頼らない工夫をしています。もしくは、冷却をしない、壊れたら交換する、という発想に変わってきています。こうした発想の転換ができていない企業が多いのではないでしょうか。


■ITの進化で人間の役割も変わっていく

―小椋―
最近の動向で見逃せないのは、ソフトウエア化の流れです。ハードウエアであるコンピューターはもちろん、ストレージやネットワークも仮想化されて、ソフトウエアによって構成・管理されるようになりました。それに伴って、ハードウエアのエンジニアもソフトウエア化に対応していくことがますます求められてきています。

―辻野―
システム開発のスタイルも大きく変わりましたね。以前は、要件定義、基本設計、詳細設計、そしてプログラミングというウォーターフォール型の開発が当たり前でした。今は創り変えながら、完成度を高めていく、プロトタイピング型のアジャイル開発が普及してきています。しかし、重厚長大型の大企業はこの開発スタイルの変化にもなじめずにいます。今でも、重くてがっちりしたシステム開発から抜け出せない。これではWebシステムの変化の速さにはついていけないのは、当然です。

―小椋―
システムの提供者と利用者をつなぐシステムが簡単に利用でき、容易に試行・構築ができるようになってきました。そこで我々SIerには既存のシステムとさまざまなサービスを最適につなぐプロデューサー的な役割がより求められるようになります。ただ、これはSIerの世界だけに当てはまる変化ではありません。人とデバイスやシステムとの関係、デバイス同士のつながりなどIoT(モノのインターネット)の世界において、関係と役割はより複雑化しその中でまた大きな変化が起ころうとしています。

―辻野―
そうですね。今、人間の役割に大きな変化が起ころうとしています。2045年に人工知能が人間を追い越す「シンギュラリティー(技術的特異点)」が話題になっています。多くの仕事が人間からコンピューターに移行していくのは間違いないでしょう。

―小椋―
コンピューターに人の仕事が奪われてしまう話がよくでてきます。そこで、人工知能が本当に人間の能力を越えていくのかな?という疑問はあります。例えば将棋を引き合いに出すと、電王戦などでコンピューターが勝ったなどとよく話題になります。コンピューターが勝負に対して勝つことは実現できても、“勝ち手”として美しさを表現できないと言われてもいます。この人間の特性である“美しい”勝ち方ということを含めて、機械が世の中を支配するようになるのでしょうか?この人間の機微みたいなところが表現できるまでは難しいのではないかと思います。

―辻野―
コンピューターが得意なところは人間の脳で言えば左脳の部分。ビッグデータにしても左脳が中心です。これから人間の感性の部分、右脳をどうコンピューターに置き換えていくのかは大きなテーマでしょう。実際に、脳の働きを再現して、意思を持つコンピューターをつくろうという取り組みは始まっています。SFのような話ではなくて、少なくとも見かけは感情を持っているかのような振る舞いをするまでには進化するのではないかと思います。
ただ、最後の付加価値を加えるのは人間です。そのためにも右脳を鍛えて、感性を研ぎ澄ませることが重要です。今、義務教育で美術や音楽が選択科目になっていく傾向のようですが、人間とコンピューターのこれからの関係を考えると、まったく逆行した流れですね。知識よりも感性が大事なんです。



ユニアデックス 藤田 勝貫
―藤田―
今の人工知能はその世界にまだほど遠いですが、人間ならではの感性に起因する仕事でも、ソフトウエアで自動化できる部分は結構あると思います。技術開発の担当者として、どこまでを自動化すべきか、どこからを人手でやるべきなのか、切り分けるポイントに注目しています。大事なことは、このポイントが常に変化していることです。便利になるにつれて、人がやるべきことも変わっていきます。

―齊藤―
私はロボットの研究を通して、人間というのは何なのだろうかと考えています。言い換えると、人間とコンピューターはどこが違うのかということです。突き詰めると、同じことができるわけですが、そうなったときに、人間に何が残るのか。これはやはり長い目で見て、うまく付き合っていくしかないと思うんですね。

■今がまさにビジネスモデルの転換点

―小椋―
ITが進化する中で、ビジネスに対するアプローチも変わっていくと思うのですが。

―辻野―
今はビジネスモデルが転換している真っ只中です。これまでの大量生産のスタイルはもう古い。いかに個々人のニーズに合わせたものを、タイミングよく提供できるかが問われています。少なくとも、日本や欧米という先進国では、そういう曲がり角に来ています。
さらに、一歩進むと、欲しいものを自分でつくることができる時代、もっと個人のパワーが主導権を持つ時代になります。そこには在庫の概念もない。個人が車を所有するのではなく、ウーバーのように、必要なときにスマートフォンで最も近いところにある車を利用するカーシェアリングが広がりつつあるのも、同じ文脈でとらえることができます。


―小椋―
当社もここ数年は消費者の動きを常に意識したうえでB2Bのビジネスを行っています。これからは個人の行動を観察し知見を得て、将来の潜在ニーズを予測することでこれからのビジネスの判断基準にしていくことが大事になりますね。


ユニアデックス 齊藤 哲哉
―齊藤―
私は個人的にクラウドファンディングで投資をしているのですが、魅力は自分が欲しいと思ったものに投資できることです。そこには国境はありません。
これは働き方や組織にも共通する変化です。同じものをつくりたいと考える人たちが集まって、バーチャルカンパニーをつくって仕事をするようになるでしょう。それはこれまでの会社組織とはまったく違ったものになります。


―辻野―
おっしゃる通りです。そこが「Before Internet」と「After Internet」の大きな違いです。これまでの“会社”という概念すら、今まさに大きく変わりつつあるんです。



>> 後編「After Internetの世界で生き残るには」に続く。

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