特集:ユニアデックスのITビジネスに対する考え方や取り組み状況、そして各ソリューション概要などを各スペシャリストがご紹介します

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2015年06月09日号

連載対談「未来飛考空間」 第2回 -辻野氏と語るITの今と日本の課題-後編「After Internetの世界で生き残るには」

これからのITの役割は何か、そのために今注目すべきポイントはどこなのか――。
当社の未来サービス研究所の研究所員と、アレックス代表取締役社長兼CEOの辻野晃一郎氏の熱い話し合いは、ITからビジネスへと幅広い話題に及びました。後編では、「After Internet」の世界で起きている変化の本質と、日本企業が生き残るためのイノベーションへの取り組みについての議論をお伝えします。
辻野 晃一郎(つじの こういちろう)
プロフィール:
1957年福岡県生まれ。
1984年に慶應義塾大学大学院工学研究科を修了し、同年ソニーに入社。入社後、VAIO、スゴ録、コクーンなど、ソニーの主力商品を次々と生み出す。2006年にソニー退社後、翌年、グーグルに入社。2009年にグーグル日本法人代表取締役社長に就任。 2010年4月にグーグルを退社し、アレックス株式会社を創業。著書に『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』『成功体験はいらない』がある。

■変化の本質に気づけるかどうか


アレックス 辻野 晃一郎氏
―辻野―
「Before Internet」の世界では、会社の定義はずっと同じでした。人が集まって仕事をして、会社が利益を上げて、給料を分配してもらう。会社には、資本力、組織力、人的能力、流通チャネルがある。会社という土俵があってこそ、仕事ができたんです。
しかし、インターネットの世界では違います。個人の能力次第で会社組織に属さなくても仕事ができる。ワークスタイルは大きく変わっていきます。


―齊藤―
自分がどういう存在で、どんなことができるのか。しっかりとアピールできる能力を持っていれば、個人がいくつものバーチャルカンパニーに所属して仕事をすることもできます。しかも、そこに国境はないわけですね。

―辻野―
実際にそうしたスタイルで仕事をしている人たちはまだ少ないかもしれませんが、選択肢が広がっていることは事実です。個人が組織に帰属することの意味合いが、インターネットの出現で劇的に変わっているんです。感度の高い人は、組織を抜けてマルチに能力を発揮し始めています。
一方で、日本の新卒一括採用の仕組みは変わっていません。大学生も就職の時期を迎えると、とたんに保守的になって皆が大企業を目指します。これには驚かされますね。昔とまったく変わってない。企業は、もっと個人でエネルギーを発揮させて、その力を活かすシステムを考えていかないと欧米とは差が開くばかりです。



ユニアデックス 藤田 勝貫
―藤田―
欧米では先駆者となることが称賛されますが、日本では企業も個人も常にセーフティーネットを求めてしまうという傾向が強い。それは技術力がないからなのでしょうか。それとも他に理由があるのでしょうか。これは日本の特異性なのかと。

―辻野―
日本はガラパゴスだといわれていますが、それは昔からです。江戸時代もそうなんですから。でも閉ざされた内側で繁栄をつくり出す天才的な国でもあるんです。江戸時代は世界で最も平和な国でしたし、携帯電話の世界では圧倒的に進化したモデルをつくり上げました。ガラパゴス的なりに尖った進化を遂げているんです。日本人自身がそうした強みに気づいていないことが問題なのではないでしょうか。

■強みを活かすためのイノベーションを

―辻野―
日本が尖った進化を遂げられたのは、ユーザーがもともとレベルが高いからです。昔、女子高生がポケベルを利用して異常なスピードで新たなコミュニケーション手段を生み出したように、ベースのクオリティーの高さがある。欧米ではそれが分かっていて、面白いネタが日本にあると常に見ています。
ただ、日本人がそれに気が付いていなくて、全部持っていかれてしまう。例えば伝統工芸品なんかがそうです。日本人はそれほど価値があると思っていなくても、世界で絶賛されているものは多い。日本のホラー映画も同じ。アメリカでリメイクされて大ヒットしても日本にはお金が入ってこない。謙譲の美徳かもしれませんが、事業化が上手ではないんですね。だから経済的に苦しくなって、負のスパイラルに陥っているんだと思います。



ユニアデックス 小椋 則樹
―小椋―
ちょっとしたビジネスのネタをイノベーションにつなげる視点と仕組みが大事ですね。未来サービス研究所ではイノベーションを起こすための共創の場として「フューチャーセンター」をつくりました。ここでは我々IT企業だけではなくさまざまな企業の方と未来像を共感し、共創できる仕組みを準備しています。その中で生まれたビジネスアイデアを具現化するためには、さらにオールジャパンの体制をつくりたいと考えています。つまりオールジャパン体制でこの変化の激しい社会に対応し、ガラパゴスと言われがちな日本だけではなく世界へ向かって貢献していきたいと考えています。

―辻野―
イノベーションとは泥臭いものです。いいアイデアや技術だけではイノベーションではありません。世の中に広まってこそイノベーションなんです。
しかし、既成の概念を壊すイノベーションは必ず攻撃を受けます。グーグルもYouTubeもそうでした。華やかな成功の裏には、くじけずに努力し続けることが必要なんです。そこまでの覚悟を持っているかどうかが分かれ目ですね。


―小椋―
いつも悩んでいることですが、イノベーションをどう評価するかは難しいですね。例えば“実現の可能性”を評価軸と考えるとそれが低いものほど、イノベーションにつながることも多かったりします。経営も含めて企業の考え方や方針によるところがありますが、成功するまで辛抱できるかどうかが大事になります。あと一年待てれば流れが来たという話はよく聞きます。

―辻野―
確かにそうです。しかし、言うは易く行うは難し、ですね。ビジネスで成功する人は、一般大衆が思いつかないことをやろうとする。株でいえば、もうける人は逆張りができる人です。しかし、これには胆力がいる。

―小椋―
未来サービス研究所としてはイノベーションに向けた場をつくるだけでなく、成功するまで面倒を見るプロデューサーとしての役割を果たしていきたいと考えています。
今年、日本ユニシスグループのフォーラムで当社のビジネスの方向性についてお話する中で、我々未来サービス研究所からのテーマとして機械学習を活用したサービス化について講演しました。これは今年度の当社の重点ビジネスであるIoT(モノのインターネット)ビジネスに向けた新しい試みの一つです。未来社会において、機械と人間が共存し、その役割が変わる話はしましたが、そのような環境においても当社は“感動を与えるサービス”を提供していきたいと考えています。実現のための主要な要素が、データと分析になります。
例えば、集めたデータを単に分析するだけでなく、前回触れた行動観察の技術を利用して、私たち独自の視点を取り入れることで独自のサービスを創造する仕組みを構築する計画を立てています。ユニアデックスのエンジニアはお客さまとともにITシステムをつくり上げてきており、行動観察は得意分野であることからどんなサービスが描けるか楽しみです。


■ビジネスの差を生むスピード感の違い

―辻野―
今クラウドサービスが伸びていますが、これまでのやり方をクラウド上に置き換えて満足しているだけでは不十分です。組織や経営スタイルもクラウドのよさをフルに引き出せるように変えるべきでしょう。
クラウドのよさはバーチャルな地球上でリアルタイムにつながっていることです。グーグルでは、テレビ会議に世界中のスタッフが参加し、時差を超えて同じ場を共有し、分からないことはその場で検索し、その場で判断を下して、その場で担当と期限を決めてしまいます。会議が終われば、すぐに行動です。しかも、その活動が全社で共有されている。すごい速度でビジネスが回っているわけです。
しかし、日本の企業は、いまだに秘書がいて、電話やメールでアポを取って会って、議論は持ち帰って検討することが多い。これもグーグルカレンダーなどを使えば済むことです。初めての人との会議でも、始まるまでには相手が誰かすっかり把握して臨める。スピード感が違いすぎます。


―小椋―
クラウド上でさまざまな形のコミュニケーションが取りやすい環境自体は、集団で動くことが得意な日本人にとっては有利に働くと思っています。ただ、おっしゃるとおりクラウド時代における体質改善がしきれていないところがあります。だからこそ、我々はフューチャーセンターや発想ワークショップによって、叡智を集めスピード化を進めています。そして日本人の得意なパターンに近づけていきたいと思っています。日本人に得意なコミュニケーション手法やオフィス環境改革なども我々のテーマとして取り上げ検証しています。このようなインフラを提供していくことも私たちの役割と考えています。

―藤田―
未来サービス研究所は3年目を迎えて、スタッフも増員されています。自由に一人ひとりがやりたいことができるようになって、社内外の人たちとの交流も増えて、同時にスピード感も出てきたと感じています。

―辻野―
日本企業にとってもう一つ大事なのはトップダウンではなく、自分で仕事を創っていく一人ひとりの使命感です。グーグルでは、他人に言われたことをやりたければ軍隊にでも行け! と言っているぐらいです。やりたい意志をもった個人の集団であることが力につながります。我々一人ひとりが自分の考えで活動することで、面白いことが生まれてくるはずです。


ユニアデックス 齊藤 哲哉
―齊藤―
私たち未来サービス研究所のメンバーは“ファーストペンギン”です。集団に先駆けて最初に飛び込んでいくのが使命なんです。それが未来をつくっていくことにつながると信じています。

―辻野―
まさに“モルモット”ですね。ソニーでは、そう言われることが誇りでした。ぜひ、モルモットになってください(笑)。

―小椋―
通常、自分の計画が失敗することは嫌がります。しかし、成功することばかりではありませんので、我々としては必ず行動し「失敗したという結果」を出すことも重要と言っています。結果は知財として残り、また新たな判断をすることで次につなぐことができます。当然成功するほうがうれしいのですが。

〜ディスカッションを終えて〜
辻野さんとの対談は、とても刺激的で未来の方向性を感じ取れるものでした。
未来サービス研究所の目的は、5年、10年という長いスパンであるべき姿、つまり未来像を描き、業種業態を超えて社外の企業との結び付きを構築し、日本発のイノベーションを起こしていきたいと考えています。
今後もインキュベーションを行うフューチャーセンターや、共創を目的としたワークショップといった取り組みを通して、新しいビジネスのプロデューサーとしての役割を果たしていきたいと考えています。

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