今回は「本音と建前」に関する特集です。時折、「日本語は本音をはっきり言わないが英語はストレートに言う」というような話を耳にしますが、実際のところはどうでしょうか?筆者の感覚から言うと、たしかにそういう傾向はあるかもしれませんが、英語でも本音と建前を使い分ける場合があります(また国によっても違いがあります)。
特にビジネスシーンなどでは相手との関係が重要になりますので、それなりにソフトなもの言いをする傾向にあります。例えば
A: “What kind of person is he?” 「彼はどんな人ですか?」
B: “Oh, he is nice.” 「ああ、いい人ですよ」
という会話があったとします。この場合、Bの言うniceは建前で、本音としては「別に取り立てて言うこともないフツーの人」くらいの意味で使われていると考えるとよいでしょう。また、
A: “Let's do lunch sometime!” 「いつかランチでもしましょう!」
B: “Yeah, let's.” 「ええ、そうしましょう」
という場合にも、Aは建前上相手を誘っただけで、恐らく実際にランチに行くことはなさそうです。
このほか、
“Maybe I'll see you again someday.” 「またいつかどこかでお目にかかれれば」
では再び相手に会う可能性は低く、
“Don't call us. We'll call you.” 「電話は結構です。こちらから掛けます」
となると、まず相手から電話が掛かってくる場合はありません(これはかなりぶしつけな表現ですのでご注意を)。そのため迂闊に”I’ll call you.”と言うと、建前トークに勘違いされることがあるので注意が必要です。
ではどう注意すればよいのでしょうか?そのコツは「具体的に話す」ことです。例えば上記の例では“I’ll call you on Friday.”というだけで俄然本音度がアップします。また、
“We'll think about that.” 「それについては考えてみます」
とのみ言うと、本音度30%くらいにしか聞こえませんが、
“We'll think about it and get back to you next week.”「検討後、来週ご連絡します」
のように、具体的な情報を加えて答えれば、しっかりとした約束として受け止められます。このように「何につけても具体的に話す」ということが大きなカギとなります。
またイントネーションでも本音に聞こえるか建前に聞こえるかがかなり違ってきます。
A: What do you think about this restaurant? 「このレストランどう思います?」
B: Uh, interesting place. 「うーん、面白いところですね」
という会話で、Bが三つの単語をゆっくりと平らな口調で発音したとします。この場合、恐らくBは建前で言っただけで、本音は「つまらない」という意味になります。
しかしBがイントネーションで、各単語の語尾を下の図のようにシャープに降下させて発音すると
”Wow, interesting place.”

「本当に面白い」という意味で受け取られます。
また例えば、オフィスで誰かが ”Will you copy this report?” (このレポートをコピーしてくれますか?)と頼みごとをしてきたとしましょう。この場合もイントネーション次第で、あなたのメッセージは字面とは違った意味になります。例えば、
・Sure! 素早く下降イントネーションで → よろこんで!
・Sure. 平坦でゆっくり、 → はあ、はい。
・Yeah, OK. ゆっくり口調で、OKのKは少し上げる → ええ、まあ・・・
・Gee(やや高く)/ I don't (中くらいで平ら)/ know(低く平ら).
→ えーっ?ほんとにやるのぉ・・・?
英語では、社交の場では相手に対する丁寧さから「建前的な話」もするのですが、その一方で、自分の意見を披露する場面では、かなりはっきりと意見を言うのが普通です。本音を正直にズバっと言う人も、日本と比べた場合、straightforward(率直)な人として評価される傾向にあります。ソフトなトーンながらも本音を言いたい場合には、次のような表現が訳に立つかもしれません。
●Frankly speaking/Personally speaking/Off the record/,
I don't want to work with that company.
正直に言って/自分個人としては/オフレコだが、あの会社と取引したくない。
最後に本音と建前に関連した表現をいくつかあげておきます。
● put on a facade: 本音を見せずにうわべだけで振舞う
She often puts on a facade when she is at a party.
彼女はパーティーの席ではよくうわべだけで振舞う。
● show one's poker face: 本音を見せない
He's always showing his poker face, no one knows what he really thinks.
彼はいつもポーカーフェイスで、誰も彼が何を考えているか分からない。
● This is our official stance: (建前として)これが我々の正式な立場である
部下1: This software should be more user-friendly according to our clients.
(顧客の話ではこのソフトはもっと使いやすくしたほうがいいと。)
部下2: Shouldn't we make those changes?
(そうした変更をしなくていいんですか?)
上司: Well, not now. We are set to release it this week as is. This is our official stance.
(いや、今はいい。このまま今週発売することに決まっているんだ。基本的にそういう方針でいく)
今回のような“本音と建前”の微妙なニュアンスを掴むことで、英語でのコミュニケーションが、少し円滑になるかもしれませんね。


