日本人から見た上海パンデミック生活(第3回)

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2022年08月08日

  • 中国

ネットマークス上海の宮崎 英樹です。
ネットマークス上海は、2003年から在中日系企業を中心に、ITインフラサービスを提供しています。お客さまの多くは日本でユニアデックスと取引をされているため、中国内でも日本と同様のサービスが提供できるように心掛けています。

今回は、日本人から見た上海パンデミック生活の第3回、ロックダウン解除後の生活、ロックダウン中に重宝したもの、ロックダウン中に感じたことなどを紹介します。

本記事は2022年6月10日時点の情報です。最新情報は在中国日本国大使館のWebサイトをご覧ください。

長かったロックダウンは2022年6月1日午前0時に解除されました。日本のニュースで報道されているとおり、上海市内の一部では深夜にもかかわらず、多く人が街に繰り出しました。これまでの鬱憤を晴らすかのように、お酒を飲み、花火を上げる光景はまるでお祭りのようでした。私はといえば、すでに夢の中でした。

実は5月中旬から不定期でしたが、陰性者に対して一時的な外出許可を出す地区もありました。忘れもしない5月27日夕方、私も約2カ月ぶりに外に出ることができました。アパートの管理室で外出許可証を受け取り、エコバッグをいくつか持参し、勇んで外に出ました。沿道の花は手入れする人がいないため枯れてしまい、路上には落ち葉やごみが散乱していました。近隣の小規模店と飲食店は軒並み休業中でした。人通りもまばらで、車の交通量も少なく、街が一層寂しく感じられました。初夏の陽気の中を軽く汗をかきつつ、お目当てのショッピングモールに到着しました。しかし、ショッピングモールの中に入るには入場券が必要だといわれました。私が住んでいるアパートメントからショッピングモールまで徒歩で10分以下にもかかわらず、入場券が配布されなかったため、結局、何も買えずに手ぶらで帰宅しました。それでも、久しぶりに目にする外の世界は新鮮で、2時間限定の外出を楽しむことができました。

日本人から見た上海パンデミック生活
アパートの管理室で受け取った外出許可証
日本人から見た上海パンデミック生活
人通りがほとんどない街中
日本人から見た上海パンデミック生活
ロックダウン中、桜の季節からアジサイの季節に

ロックダウン解除後も、上海住民に対して72時間以内のPCR検査が原則として義務付けられています。陰性証明証がないと、建物に入ったり、公共交通機関を利用することができません。また、建物や駅に入る前に、掲示してある2次元バーコードをスマートフォンで読み取ります。政府がシステムを管理しているので、感染者と接触したとシステムが判断すると、接触者は外出禁止となり、その接触者が居住する地区単位で隔離処置が実施されます。

日本人から見た上海パンデミック生活
市内の至るところにある移動式PCR検査所
日本人から見た上海パンデミック生活
PCR検査の結果はスマートフォンのミニプログラムから確認可能

さて、私も6月1日解除当日の夕方に仕事を終え、街に繰り出しました。とても気分がよく、自然に頬が緩んできます。営業している店舗数は1/3以下でした。行政指導により、店内での飲食は禁止で、持ち帰りのみとなっていました。しかし、個人経営と思われる小さな飲食店ではこっそりと店内で飲食していました。また、別の店のテラス席では多くの人が飲食を楽しむ姿がありました。そのため、またすぐに感染者は増加するのではないかと心配になりました。

日本人から見た上海パンデミック生活
多くの人で賑わうBBQレストランのテラス
日本人から見た上海パンデミック生活
商品が並び始めたスーパーマーケットの陳列棚

極端すぎる政策と頻繁に変わる方針 - 情報の開示がない、遅い、急すぎる

ロックダウンの開始当初、予定期間は5日間のみでした。その発表も開始日の前日でした。当初、上海市当局はロックダウンの実施を否定していたにもかかわらず、急な発表だったため、多くの住民は食料確保に走り、一部の店舗ではパニック状態になっていました。ロックダウンの期間中に感染者数が拡大していくにつれて、期間は延長されていきました。正当な理由があるので、期間を延長するのは仕方がありませんが、解除の明確な基準が公表されないことには困惑しました。来週には解除されるかもしれないといううわさが流れるたびに、期待が高まり、結局は解除されずに落胆するのです。そして解除がいつになるのか不安でいっぱいになりました。上海市当局が解除日の発表をしたのも5月30日でした。それも段階的な解除ではなく、市内の地下鉄や路線バスの運行を全面再開し、すべての車の走行も認めました。

ロックダウン中、通信販売の配達員たちは、一度自宅から出てしまうと帰宅が許されなくなるので、橋の下にテントを張って生活していました。また、地方から上海に出てきた人たちの中には、職を失うと同時に、住む場所を失う人が続出しました。急な情報開示のために、ロックダウン前に想定できたことができませんでした。

経済への影響

今や中国の主要産業である自動車関連企業にとって衝撃的なニュースがありました。それは上海市の自動車販売議場協会が発表した2022年4月の新車登録台数が0台だったことです。ロックダウン中だったため、当然のことですが、前年度同月の販売台数は2万6311台たったため、落差が大きすぎます。5月もロックダウンが実施されていたため、5月度の販売台数も、おそらく0台でしょう。無論、市中の他業種の店舗や工事現場も2カ月間の休業を迫られていたので、新車販売だけではなく、建設業、衣料や外食産業へのダメージも深刻です。ただし、中国国家統計局は2022年5月度の消費者物価指数が前年同月から2.1%上昇したと発表しました。理由としてはコロナ防止対策が進み、供給が安定したことだそうです。

地域格差

前述のショッピングモールの入場券にも当てはまりますが、配給数が多い地域と少ない地域、配給品が充実している地区としていない地区、外出許可が多い地域と少ない地域など、地域格差が顕著です。

重宝したもの

  • 調理器具と調味料
    日頃、自炊(主に、炒め物)することが少ないのですが、ロックダウン中は必須となりました。温かいご飯を炊いてくれる炊飯器や、野菜の皮むきが簡単にむけるピーラー、食材を切るハサミは、本当に買っておいてよかったと思いました。ピーラーがなかったら、私の手が傷だらけになっていたと思います。調味料は何といっても食用油です。配給で配られるまで家になかったため、食用油を使わずに炒め物を作るとすぐに焦げて真っ黒になり、(味覚的に)苦い思いをしました。それでも醤油や塩、胡椒があっただけ、ましでした。次回のロックダウンに備えて、こつこつと調味料を買い集めています。
  • 冷凍食品、インスタント食品、フリーズドライ食品
    簡単に食べられる冷凍食品とインスタント食品は単身者の味方です。もともと飲茶文化のためか、上海は餃子や肉饅などの冷凍食品が豊富にあります。電子レンジが備わっているアパートメントで本当に助かりました。仕事で忙しいときの昼食は数分で作れるインスタントヌードルにフリーズドライのミックス野菜を入れて食べました。栄養も摂れるため、フリーズドライの野菜はとても重宝しました。

反省点としては、普段から食料品は余裕をもってストックしておくべきでした。とりわけ長期保存ができ主食になる乾麺、パスタ、米は数カ月分を用意しておけば、少しでも不安が軽減できたのではないかと思います。長期間の節制生活ではチョコレートを食べ、コーヒーや紅茶を飲むことが、よい気分転換になりました。食べ過ぎ、飲み過ぎは厳禁ですが、多めにストックしておけばよかったと思いました。プレミア価格で野菜をネットスーパーで購入しても、すぐにダメにしてしまい、何度も後悔しました。それでも食べたいのが生野菜です。

  • 縄跳びとヨガマット
    長期間外出ができず、部屋に閉じこもっていたので、運動不足に陥り、体力が落ちた、太った、という話を多く聞きました。普段、外出するだけでも運動になっていたのだと思いました。私は上海で生活しはじめてから、通販でスマート縄跳び(スマートフォンと接続し、アプリに運動量を記録できる縄跳び)を購入したので、ストレス解消も兼ねて毎日のように縄跳びにいそしんでいました。(スマートではないただの)ヨガマットも買っておいたので自室で簡単な柔軟体操をしていました。そのためか体重は増加せずに済みました。
  • ご近所付き合い
    私が住んでいるアパートメントには多くの外国人(私も外国人ですが)が住んでいます。天気のよい日には、アパートメントの敷地に出てきて、いつの間にかお茶会が始まります。とりわけ英語が得意なわけではないのですが、片言でも話せたおかげで、情報交換ができ、何気ない会話が気分転換になりました。ニュージーランド、ドイツ、アメリカ、台湾などいろいろな地域の人と知り合いになることもできました。そして、時には物品を分け合うなど団結力が生まれていました。ロックダウンがなければ、このような人々が同じアパートメントに住んでいるのも知ることはなかったので、よいコミュニケーションの機会になりました。
  • リモートワーク環境
    セキュリティーの観点から、ローカルPC上に重要な資料を保管しておくのは危険とはいえ、資料をまったく使わずに業務はできません。弊社は、社外から事務所のサーバーに接続できるように、VPNを構築しています。そのため、ロックダウン中でも業務を遂行できました。また、メールシステムは、社外のホスティングサービスを使用しています。VPNに限らず、リモートワーク環境をまだ導入していない企業は、ぜひ導入することをお奨めします。

最後に問題発生!!

5月下旬頃に、業務で使用していたスマートフォンの電源が入らなくなりました。充電ケーブルを接続しても、一向に充電されません。ちなみに今回のブログに写真が少ないのはそのせいです。

ロックダウン後に、Androidベースのスマートフォンを購入したのですが、言語選択に日本語がなく、Google系のサービスも一切使うことも、日本のアプリケーションのインストールもできませんでした(涙)。やはり私が住んでいるのは中国でした。

中国でスマートフォンが使用できないのは致命的です。日頃のコミュニケーション、支払い、はたまたPCR検査履歴や税務申告など、ありとあらゆるものが、スマートフォンのアプリケーションWeChatやアリペイのサブ機能を使用します。私は、日本から、日本の回線キャリアを使用するスマートフォンを持参してきたので、そのスマートフォンを使って関係者とコミュニケーションをとり、PCR検査も受けることができました。とりあえずは大きな問題もなくホッとした一方、もしロックダウン中にスマートフォンが使用できず、代替品もなかった場合を考えると、恐ろしくなりました。これから中国に赴任される方は、日本のキャリア用、中国地場のキャリア用、予備用の3台のスマートフォンを用意することをお勧めします。

ロックダウン後に、Androidベースのスマートフォンを購入したのですが、言語選択に日本語がなく、Google系のサービスも一切使うことも、日本のアプリケーションのインストールもできませんでした(涙)。やはり私が住んでいるのは中国でした。

今回は以上となりますが、少しでもロックダウン中の生活を感じていただくことができたでしょうか。そして、今後のロックダウンの備えになれば幸いです。次回は、上海生活でお役に立ちそうな情報を投稿したいと思います。ぜひ、楽しみにお待ちください。

弊社ではBCP(事業継続計画)の観点からも必要な、VPN環境構築、リモートデスクトップ環境構築、資産管理、エンドポイントセキュリティー、クラウド構築など、リモートワークに役立つ商材を取りそろえています。

今後、BCPへの対策が必要になった際には、ぜひともお声がけください。 詳細につきましては、お気軽にお問い合わせください。

宮崎 英樹(Hideki Miyazaki)

ネットマークス上海 技術部

日本ではオープン系コールセンター、技術員管理などを担当。ネットマークス上海での業務内容は、主に技術マネージャーとしての作業品質管理、新規顧客開拓、商材発掘などをしています。趣味は食べることと散歩。休日には自宅アパートの近辺、時には遠出をして上海の名所を散策しています。

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