医療情報の統合導入事例山口県厚生農業協同組合連合会 長門総合病院様

2014年08月06日

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医療情報の総合ポータルを構築し、診療科を超えた、情報共有・連携で、利便性と的確な診療の両立を図る

急性期医療及び慢性期医療の両面から地域医療をみつめ、地域中核病院としての責務を果たす ことを使命として掲げる長門総合病院。同病院では、電子カルテシステムの更新に当たり、すべての院内システムの情報を集約して一画面上で閲覧できるシステムを構築。診療科を超えた情報共有を図ることで、業務の効率化と医療サービスの高度化の両立を実現している。

  • JA山口厚生連 長門総合病院 臨床工学科長
    肥田 泰幸氏

システム概要

長門総合病院では、既存の医療情報システムが旧態化していたことから、フルオーダリングシステムを備えた電子カルテシステムへと刷新して2013年2月より本番稼働を開始。その際に、多岐にわたり独立して存在していた院内システムから必要な情報を集めて1つのWebブラウザーで閲覧できるよう、データの連携基板を構築。これにより、医師や看護師をはじめすべての部門スタッフが、必要なすべてのデータをすぐに探して見られるようにした。このシステムは現在、長門総合病院における医療情報の総合ポータルとして、現場での活用が進んでいる。

システムの特徴

  • 各院内システムの情報を一画面に集約して全体的な状況把握が可能
  • WebベースのUI で素早い起動
  • 専門性が高い個々の医療システムの情報をシームレスに連携
  • 臨床業務の実態に最適化した院内無線LAN環境を実現
  • 携帯端末を使い、臨床現場で撮影した画像データを患者と紐付けて情報共有

導入前の課題

陳腐化したシステムを更新してフルに電子化したい

長門総合病院では、10年ほど前に基幹医療情報システムを導入したが、オーダリングシステムの中の一部の機能しか使っておらず電子化が不十分であり、システム自体も陳腐化が進んでいた。紙の書類も依然として多く存在していたことから、紙と電子データの非効率な混在が問題となっていた。そこで、電子カルテを含めたフルオーダリングシステムの導入が急がれていたが、既存の業務環境が変化することに対し現場からの反発の声も少なからずあった。

独立した院内システムの情報を1つに集約し
一覧できるようにしたい

長門総合病院では、薬剤や医療画像、放射線、病理、検査、栄養管理など、個々の専門領域に特化した院内システムが多岐にわたり独立して存在し、それぞれのシステム間では情報の共有と連携ができていなかった。しかも、それぞれのシステムの操作が複雑で、ボタンやメニューの位置なども統一されておらず、慣れた担当者にしか使いこなせない状況だった。当然これらすべての院内システムを横断して情報を見たいという医師からのニーズが高まる。簡単かつ同一の操作で情報を素早く網羅的に得ることのできるような新しいシステムが強く求められていた。

導入後の効果

基幹電子カルテシステムと各院内システムを、
枠組みを超えて連携し情報を集約

フルオーダリングシステムを備えた基幹電子カルテシステムへと刷新を図ると同時に、(株)イメージワンの医療情報統合システム製品「CMED(シーメド:Connectio MED)」を使い、各部門の院内システムとデータを連携。さらに、1 つのWeb画面にすべてのシステム から得た情報を集約して一覧できるようにした。電子カルテシステム更新プロジェクトのリーダーで臨床工学科長を兼務する肥田泰幸氏は、「患者を起点にして情報を見るだけでなく、病気をキーワードとして横断的に情報を集めて一覧できるようになったことで、診療科を超えた真の情報共有が実現できた。時系列でも情報が見られるのはCMEDならでは。また一画面上で簡単に操作できることから、かつては業務が変化することに不満を抱いていた現場スタッフからも、評価する声が聞こえるようになった」と語る。

タブレット端末で臨床現場の情報を共有。
医療ミスの防止と確実な診断を可能に

医師や看護師が病室でタブレットなどの携帯端末を使い患者の状況を撮影、その画像データを自動的にシステムに取り込めるようにしたことで、利便性の向上や医療ミスの防止を図れるようになった。患部や措置部分などを撮影すると同時に画像データがその患者と紐付いて保存されるため、後々の人力での整理作業は不要だ。「このシステムは自分たちのアイデアを実現したもので、医師からも看護師からも非常に好評。皆、いつもポケットに入れてちょっとしたことでもメモ代わりに記録している。看護師が患者の様子を見て何か気づいたことがあれば、以前であれば口頭で医師に伝える必要があったが、今はタイムスタンプつきの画像で示すことができるので確実な診断にもつながっている」(肥田氏)

お客さまの評価

複数の診療科をまたぐ患者のカルテ探しが大幅に効率化

「なんといっても最大のメリットはカルテを探しまわる必要がなくなったことだろう。患者は様々な診療科に入院する場合があるが、かつては、患者が以前かかっていた診療科のカルテを探しだすのに一苦労していた。また、検査を受ける際にも、カルテを一緒に持ち運ぶ必要があった。しかし現在では、いちいちカルテを探さなくても、過去の情報を含めて1つの画面上から閲覧することができるようになったため、業務を大きく効率化することができた」と肥田氏は言う。また、他の診療科への紹介状を書く頻度が減ったほか、診療に関する情報は最初からテキスト文字としてデータベースに集約するため、クセの強い肉筆を苦労して読む必要もなくなった。さらに、ある月の患者の動向といった情報の分析・把握ができるようになったことについても肥田氏は評価する。

医療とITに精通したユニアデックスが"総合商社"として活躍

今回のシステム刷新には、電子カルテシステムや各院内システム、医療情報統合システムなど、それぞれのシステムごとにベンダーが異なるマルチベンダー体制で進められたが、各ベンダーとの窓口となって調整にあたったのがユニアデックスだった。ユニアデックスは、各システムの独自フォーマットの変換やブラウザーでの即時表示を可能にする技術の開発のほか、無線LAN環境の構築などインフラ整備も担当している。「マルチベンダーのプロジェクトにはコーディネーターが必要不可欠。ユニアデックスが"総合商社"として各ベンダーとのやり取りの間に立ってくれたのが成功のポイントだと言っても過言ではない。現場スタッフのITに不慣れなところを補ってもらったり、システム間をどう接続すればいいのかについてアドバイスをもらったりと、ユニアデックスが医療とITどちらにも精通していること、そして何度も足を運んでもらえることへの信頼感はとても強い」と肥田氏は評価する。

2014年07月取材

Profile

所在地
山口県長門市東深川85番地
電話
0837-22-2220

1944年農業会長門病院として発足し、各地に診療所を開設。1948年山口県厚生農業協同組合連合会の設立と同時に移管。その後、患者数の増加に伴い、医療の近代化に対応する医療機器・設備の整備充実を図るとともに、患者ニーズの多様化に対応するため、診療科の拡大、診療体制の安定充実に努める。高齢、2007年より在宅医療へも目を向け、地域医療福祉連携室を設置するとともに、訪問看護・訪問リハビリテーションを開始し、地域に根ざした病院をめざしている。

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  • 自治体・企業・人物名は、取材制作時点のものです。