パネルディスカッション アジア各国のセキュリティー事情(第3回)

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2022年01月14日

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こんにちは、ユニアデックスグローバルセミナー事務局です。
今回は2021年8月24日に開催したオンラインセミナー「ビジネス化するサイバーアタック — あらためて考えたい、海外拠点におけるセキュリティー対策のポイント」より、パネルディスカッション"アジア各国のセキュリティー事情"の内容の一部を皆さまにお届けします。

日本で計画したセキュリティー対策、ひとたび海外に展開しようとするとなかなかうまく進まない、なんとか適用しても抜け穴を探し出されてしまう・・・
そんなお悩みありますよね。何が問題で、何が原因なのか。
ユニアデックスの海外関係会社の各国ネットマークス(上海・ベトナム・タイ)も現地から参加して、一味違う観点でディスカッションを行いました。

また、2021年7月14日に開催した各国ネットマークス(フィリピン・シンガポール・インドネシア)とのパネルディスカッション前編 新規タブで開く 後編 新規タブで開く もお楽しみください。

パネルディスカッションメンバー

パネルディスカッションメンバー

各国それぞれの文化や国民性、お人柄を教えてください

アジアセキュリティ事情2
田中/ネットマークス・上海(以下田中)

上海は国際都市であり、中国の中でも特別な都市という感覚を持っています。日本人と比べると、率直にものを言ったり、態度に現れる傾向はあります。会社でのコミュニケーションについてはオブラートに包んで会話するのではなく、相手が何を思っているのか直接的な表現を使って齟齬がないようにコミュニケーションを取ることを心掛けています。

アジアセキュリティ事情3
中元/ネットマークス・ベトナム(以下中元)

ベトナム人は、一般的に、勤勉で真面目で、手先が器用といわれていますが、私もベトナムで生活する中でそう感じています。ベトナム人の特徴として、家族や親族との絆をとても大切にすることが挙げられます。そのため、例えば何か会社の行事などがあれば、家族や親族などたくさんの人を連れていきます。また、ベトナム人はプライドが高いといわれており、何かあって注意する際に、頭ごなしに叱ってしまうと、プライドが傷つき、その後の関係がうまくいかなくなってしまうケースがよくあります。

ウェビナー②ビジネス化するサイバーアタック
高橋/ユニアデックス・エバンジェリスト(以下、高橋)

そういった場合、どのように伝えるのがよいのでしょうか

アジアセキュリティ事情3
中元

まずは人前で叱らないこと、また伝えたいことをその目的や背景など含め、丁寧に伝えると理解してくれます。

アジアセキュリティ事情4
ウィセ/ ネットマークス・タイランド(以下、ウィセ)

タイ人は平和的です。相手の悪いところを直接的には言いません。仕事に対しては責任感を持って取り組み、とても勤勉です。ただ、トップダウンの組織に慣れているせいか、自発的に行動するのではなく、上司の指示を待つ傾向があります。もう1点、高みを求めず妥協するのが早く、「まぁ、このくらいで大丈夫だろう」と、考える傾向があります。そのため、自分たちが求めるレベルを細かく指示し、相手に明確に要件を伝える必要があります。また、メールなどのレスポンスは日本人に比べて遅い傾向にあります。

アジアセキュリティ事情5
市川/ ネットマークス・タイランド(以下、市川)

微笑の国と呼ばれていることもあり、タイ人は基本的に明るいのが特徴です。外国人に偏見がなく、自国民と同じように接してくれるので、非常に住みやすい国です。日本人以上にグローバル精神を持った国だと思います。仕事に関してもタイ人だからといって日本人に劣るようなこともありません。ただ、日本人と比べて、何事にも結論をすぐに出す傾向があります。これは、「なぜなぜ分析」など問題解決するためのフレームワークを使用しない文化に起因するのか、自分が思ったことをそのまま結論づけてしまいます。そのため先ほどウィセが話したとおり、業務指示は細かく明確にという話につながってきます。

ウェビナー②ビジネス化するサイバーアタック
高橋

タイ以外の国では外国人の受け入れについてはいかがでしょうか?

アジアセキュリティ事情6
田中

街中に外国人がいることは上海に住んでいる現地の人には当たり前の光景で、食べ物や日常生活で使用するものなど、世界中のものが街中に溢れています。

アジアセキュリティ事情7
中元

外国人は多く住んでおり、日系企業だけでも2,000社ほどあります。また、ベトナムは親日国家ともいわれており、とても親切です。

各国のビジネスとセキュリティーの現状と事情背景を教えてください

中国のITセキュリティー事情

①中国におけるITセキュリティー関連法令

アジアセキュリティ事情7
田中

ネットマークス・上海は2003年に設立した会社で、今年で18年目を迎えます。

本社は上海にあり、広州、大連、天津に事務所があります。上海や広州が主なサポート対象地域ですが、中国全土を網羅しており、サポートできる体制があります。主なお客さまは日系企業であるため、日本語を話せる現地営業担当もおり、中国国内でも日本と同等のサービスを提供できます。ネットワークインテグレーション事業(ネットワーク、サーバー、WAN回線まわり、クラウドサービス)が主な事業内容です。中国国内で欧米系の製品が一部調達できないこともありますが、中国政府に承認された製品についてはすべて調達できます。

また、保守運用サービスにも注力しており、中国全土がサポート対象地域です。さらに、お客さまの要求レベルに合わせたエンジニア常駐サービスも提供しています。

1.サイバーセキュリティー法(中華人民共和国綱絡安全法)
  • 2017年7月施行、2019年12月等級保護規定
  • 会社などの組織が収集した個人情報の暗号化やセキュリティー対応することを義務化
  • アクセスログ取得、ポリシー作成、問題発生時の訓練も必要
2.データセキュリティー法(中華人民共和国数据安全法)
  • 2021年6月法令決定、9月施行予定
  • データを分類管理する分類・等級区分保護制度
  • データの越境移転や輸出規制を実施
3.個人情報保護法(中華人民共和国個人情報保護法)
  • 2020年10月発表されたが細則など審議中で施行時期も未定
  • 中国版GDPR:General Data Protection Rules

②IT関連のセキュリティー事情としては、主に次の3つがあげられる

1.セキュリティー意識は、日本と比べると高くはない
  • セキュリティー事故の多くは内部情報漏えいが多い
  • ウイルス感染経路は、メールよりもダウンロードが圧倒的に多い
2.日本本社からの情報セキュリティーガバナンスは適用が難しい
  • 中国独自のアプリケーション、グローバルソフトウエア調達不可、独自の財務システム
  • 特にWeChatは、私用アカウントのビジネス利用が定着しているため、実質的に管理は困難
3.グレートファイアーウォールの存在
  • 通信規制により、日本と中国との間では、一般的なネットワーク構成で支障が出るケースが多い

ベトナムのITセキュリティー事情

アジアセキュリティ事情8
中元

ネットマークス・ベトナムは2007年に設立した会社です。

ハノイ本社のほか、ダナンとホーチミンに事務所があり、ベトナム全土をサポートしています。

ネットワークシステムの設計、保守、運用、ネットワーク機器の導入、IT全般におけるコンサルティング、エンジニアリングなどに対応しています。

  • ネットワークシステムインテグレーション
  • 保守メンテナンス、アウトソーシングサービス
  • PC、サーバー、カメラなどのIT機器の選定および販売
  • ソフトウエア開発
  • インターネットの速度、安定性都市部や工業団地では、ネットワーク環境は安定してきており、オンラインの打ち合わせなど、問題なく行えます。しかし、地方や、古い建物では、インターネット環境が整っておらず、オンライン会議の際に通信が悪くなるということはたびたび起こります。
  • 違法のコピーソフトウエアが流通し、個人だけではなく企業でも違法のソフトウエアを使用しているケースが多発しています。

ベトナムのサイバー被害について

  • コンピューターウイルスによる被害は、2019年に約1000億円に上る
  • インターネット上にある出所不明のソフトウエアのダウンロードによる感染、電子メールを介した感染が増加傾向にある

2019年より、ベトナム政府がサイバーセキュリティーに対する能力向上を目的とした国家プロジェクトを始動。
現在、国家としては、サイバーセキュリティーに対する成果が出始めています。また、以前と比べ、日本本社を主導に、サイバーセキュリティーに着手する企業も増加しています。しかし、多くの企業では、サイバーセキュリティーに対する重要性を理解しつつも、予算や人財の不足などにより、後回しになってしまい、問題が発生してからの対応になってしまっている状況にあります。

タイのITセキュリティー事情

アジアセキュリティ事情9
市川

ネットマークス・タイランドは1999年に設立した会社で、今年で22年目を迎えます。

主なお客さまは日系企業で売上げの約80%を占めています。

従業員数は約100名程度で日本人は2名在籍しており、日本語を話せる従業員は(日本人も含め)5名います。

ICTインフラストラクチャーのトータルサービスを提供しており、主な内容は次のとおりです。

  • ITインフラストラクチャー・ソリューション
  • アプリケーション開発
  • データセンター設備および配線工事
  • 1タイでは、中央銀行(BOT)がタイの銀行に対し、年に1回の侵入テストを求めている関係上、銀行、保険、リースなどの金融企業ではサイバーセキュリティーに対する意識が高く、セキュリティー対策も進んでいる。
    企業全体を見るとサイバーセキュリティーへの意識や投資にはバラツキがある。
  • 2タイでは、セキュリティー事故の情報を入手することが難しい。事故など詳細情報は、ほぼ公開されていない。
    2020年9月に、大規模のサラブリー病院でランサムウエアを使った身代金(約2,200億円)が要求される。
  • 3タイでのセキュリティー関連法案は法的には整備されつつあるが、実効性は未知の部分もある。
    • 2007年7月18日:コンピューター関連犯罪法(90日間のログ保管)
    • 2020年4月19日:電子システムを利用した会議に関する勅令および新セキュリティー基準
    • 2020年5月27日から2021年5月27日:個人情報保護法:(英名)Personal Data Protection Act B.E. 2562サイバーセキュリティー法(国家全体のサイバーセキュリティーの強化を目的)
  • 4日本のセキュリティー投資予算と比較し、タイのセキュリティー投資予算は低い傾向にあり、サイバーセキュリティー対策が後回しになりがちな傾向にある。
  • 5グローバル対応したセキュリティー商品およびセキュリティーサービスは、ほぼ導入できる環境にある。
アジアビジネス通信

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