世界最先端のIT国家、エストニアを知っていますか
【第1回】エストニアが電子立国できたワケ

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2019年03月01日

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ITの世界でエストニアが話題になっています。
世界最先端ともいえる電子政府を実現し、ほとんどのサービスがオンラインで完結します。IT基盤のセキュリティーは強固でデータの改ざんは難しく、暗号技術を組み込んだ電子署名によって、セキュリティーと利便性を両立させています。さらに、エストニア国民でなくても仮想住民になれる電子住民権「e-Residency」を発行(もちろん、ユニアデックス社員も何人か...)。グローバル人材がこぞって仮想住民になっています。このエストニアで起業したNext innovation OÜ代表取締役の熊谷宏人氏に、エストニアの何がすごいのか、解説していただきます。

最近IT分野で何かと話題に上がるエストニアですが、皆さんは「エストニア」という単語をインターネットで検索したことはありますか。IT感度の高い方ならすでにさまざまな記事をお読みになっていることと思います。まだ調べたことのない方のために、もう一度検索をしてみると、以下のようなページが多く表示されます。

  • IT大国エストニア
  • エストニアの電子政府について
  • e-Residencyの取得方法は?

電子政府やe-Residencyについては連載を通じて紹介していきますが、人口約130万人の小国エストニアは、世界で最も先進的なデジタル社会の1つです。2007年には、総選挙でオンライン投票を可能にした最初の国となりました。エストニアは世界最速レベルのブロードバンド回線と、1人当たりの起業率が非常に高い国として知られています。市民は、自分の携帯電話から駐車料金を支払い、すべての個人の健康医療データはクラウドに保存されています。約95%の人がオンラインで行う税申請は、5分ほどしかかかりません。
バルト三国で最も小さいこの国は、どのようにしてこれほど強力な技術を発展させることができたのでしょうか。

小さな国の決断——ITに国の未来を託す

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エストニアがソビエト連邦崩壊後の1991年に独立を取り戻したとき、外の世界への独立した唯一のつながりは、外務大臣の庭に隠されていたフィンランド製の携帯電話でした。

1991年にソビエト連邦から独立して間もなく、エストニアはインターネット経済と大規模な技術革新が、天然資源のない小さな国にとって頼りになる道であると判断しました。そして、1992年に当時の首相であったMart Laar(マルト・ラール)氏が低迷する経済を上向きにする政策を続けたことで、国の基礎が築かれていきます。

その後2年間で、平均年齢35歳の若い政府はフラット所得税、自由貿易、透明な予算と民営化を実現しました。国は土地を登記する場所すらない状態から、ペーパーレスでの登記を可能にしました。新しいスタートアップ企業は円滑で遅延なく登記することができ、動き出したくてたまらない人たちに拍車をかけました。

ソビエト連邦時代の脆弱なインフラは、政治が白紙の状態から始まったことを意味していました。前大統領のToomas Hendrik Ilves(トーマス・ヘンドリク・イルヴェス)氏は、エストニアのニュースサイトMüürileht(ムーリレット)でこう振り返ります。
「私は独立を回復した時からエストニアのIT開発に注目していました(中略)モザイク(初期の一般的なWebブラウザー)がちょうど出ていたし、誰もが平等な競争条件にありました」※1
国の若い大臣たちは、従来の技術に縛り付けられることなく、インターネットに強い信頼を置き、独自のデジタルシステムを構築し、国を動かしていきました。

教育も重要と考えられました。コンピューターを教室に整備する全国的なプロジェクトにより、1998年までにすべての学校がインターネットに接続されることとなります。2000年に政府がインターネットへのアクセスは人権であると宣言したことで、ウェブはこれまでにない広がりを見せました。さらに2012年、官民のパートナーシップで、5歳児にコーディングの基礎を教えるために、ProgeTiiger("Programming Tiger")と呼ばれるプログラムが発表されました。エストニアは、教育に力を入れ、国の未来をITに託したことで、電子国家としての国際的なポジションを確立していきました。

それでは、エストニアのように小国ではなく、国が白紙の状況でもない他の国々は、どのようにすればこの例に学べるでしょうか。Ilvis(イルヴェス)氏はこう述べます。
「エストニアの成功は、"従来の技術"を捨てることよりも、"従来の考え方"を取り除いたことである」※2

例えば、紙ベースの税申告の手続きをコンピューターに複製することは無意味です。エストニアでは、オンラインに情報があらかじめ記入されていて、納税者は計算が正しいことをチェックするだけで税が申告できるシステムをつくり、紙ベース前提の考え方を廃していきました。ゴム印やカーボン紙、そして長い行列は、「電子政府」に取って代わられました。

欧州一のセキュリティー国家

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エストニアの歴史はインターネットの歴史と重なります。国としての独立と同じ時期にWWW(World Wide Web)が誕生し、オンライン接続が普及し始めました。エストニアが四半世紀前から築き上げてきたITの基盤は、現在の国のセキュリティーを強固たるものにしています。

Global Cybersecurity Indexによるレポートでは、エストニアは欧州1位のセキュリティー国家です※3。SymantecやMalwarebytesといったグローバル企業のリサーチや開発拠点であり、世界最大のブロックチェーン企業、Guardtimeが生まれた国でもあります。そして、2008年にはNATOのサイバーセキュリティー本部(NATO CCD COE)が設立され、世界にセキュリティーの重要性を発信してきました。

こうしてエストニアは、日本をはじめとする世界の先進国がIT化や強固な情報セキュリティーを参考にする国となりました。

EstoniaNight

エストニア人は、明日自分の国がどうなるかもわからない時代を生き、壊れていく支配体制を見ながら、この国の政治がどうあるべきかについて、考えてきました。負の歴史の教訓から、国のアイデンティティーを取り戻すためにゼロから電子国家を築き上げ、情報セキュリティーを強化してきたのです。

エストニアの国旗は3色のシンプルなデザインです。「青」は、エストニアの空や海を表し、国民を象徴するとともに、希望や団結を、「黒」は、故郷の大地と同時に暗黒時代の悲しい歴史を忘れまいとする決意を、「白」は、氷と雪および人々の幸福の追求を表します。

この国のテーマは、独立した当時から常にグローバル化でした。世界にどんなインパクトを与えられるか、そして混沌の中で、国としてどう生き延びていけるか。そんな未来国家エストニアの動向にこれからも目が離せません。

【とっておきエストニア現地レポート】

お気づきかと思いますが、ネットで「エストニア」を検索しても、IT関係以外の記事はなかなか出てきません。しかしエストニアの魅力は本当にITだけでしょうか? いいえ、そんなことはありません。

今回はエストニアの食事情について紹介します。

今流行りの料理

これは間違いなくSushiでしょう。実際にエストニアの街を歩いてみると分かるのですが、ピザ屋やハンバーガーショップよりも、Sushiレストランの方が簡単に見つかります。

メニューは、普通のサーモンの握りから巻き寿司に衣をつけて揚げたものまであり、味は幅広く、オリジナルの工夫が凝らされています。

SushiRoll

おすすめレストラン

★日本食レストラン Haku★

タリン市内の住宅街にポツンと建っていて看板もないお店ですが、日本人料理人の方が経営しており、中の雰囲気はとても日本らしく、かなり前に日本で流行ったであろう曲が流れていました。

Haku
HaakuNIGIRI

着物を着たエストニア人女性のスタッフの方に注文をして、握り寿司や天ぷらをいただきました。お寿司に関してもお米とお米の間に絶妙な空気を含ませた握り方をしてある本格的なお寿司で、今までエストニアで食べた日本食の中でも特に完成度が高く、まるで日本にいるかのような感覚でした。このお店のクオリティーの高さは、Silver SpoonやWhite Guideといった有名なレストランガイドの賞を多く受賞していることからもうかがえます。

最近エストニアでは、このような味や日本の雰囲気にこだわったお寿司屋さんが増えているようです。観光客も増え、景気が上向いている証拠なのかもしれません。

エストニアではSushiレストランがとても多く、さまざまな雰囲気のお店があるので、エストニアでお寿司を食べ歩く際は、いろいろな楽しみ方もできそうです。

熊谷宏人 氏

Next innovation OÜ 代表取締役

1997年生まれ、東京都出身。東京・小平と米・イリノイにて幼少期を過ごす。エストニアのサイバーセキュリティー教育に魅了され、タリン工科大学ITカレッジのサイバーセキュリティー専攻に入学(在学中)。2018年3月にエストニアでNext innovation OÜを起業。日本とエストニアの架け橋となるべく日々奮闘中。

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