なぜ現場が抱える課題は経営に響かないのか
~経営層を動かすIT課題の伝え方~
- お役立ち情報
2025年06月09日
現場が抱えるIT課題の解決は、企業の持続的成長において不可欠な要素です。しかしながら、企業では現場と経営層の間に視座のズレが生じており、重要な課題がそのまま放置されたり、的外れな解決策が実行されたりといったことも少なくありません。本記事では、このような現場と経営層の視座のギャップを埋め、課題を的確に経営層へ届けるために有効な3つのステップを詳しく解説します。
目次
現場のIT課題が経営層に伝わらない理由
現代の企業は、業務の効率化とコスト削減、従業員一人一人の生産性向上、セキュリティー対策の強化など、数多くのIT課題に直面しています。現場も経営層もこれらの課題解決の重要性を認識していますが、実際には手つかずのまま放置されたり、効果的な解決策が講じられなかったりといったケースは珍しくありません。
課題解決のためには「経営層への課題の報告」と「経営層の適切な意思決定」の2つが不可欠です。しかし、現場からの訴えが、なかなか経営層に響かないという声が、多くの企業から聞こえてきます。この状況を放置したままでは、企業の持続的成長を阻害する恐れがあります。
なぜ現場と経営層の間でこのようなズレが生じてしまうのでしょうか。
その根本的な原因の1つとして考えられるのは、現場から経営層に上げられる課題が、経営層が持つ中長期的な視点と合致していないことです。
例えば「持ち出し用端末の台数が不足している」といった、日常業務で発生しがちな現場課題を例に考えてみましょう。こうした具体的な課題をそのまま報告しても、その解決が自社の成長や企業ビジョンの実現にどのようにつながるかが経営層には見えにくく、重要性を正しく判断してもらえない可能性があります。結果として優先順位が低く見積もられ、対応が後回しにされてしまいます。

現場課題を経営視点へ翻訳する3つのステップと注意点
裏を返せば、業務で発生するさまざまな課題に対し、現場の視点を経営層と同等のレベルに引き上げることで、双方のコミュニケーションを大幅に改善できます。現場の課題を経営層が理解しやすい形で報告・提案することにより、企業のビジョンや中長期目標との関連づけが可能になるからです。
では、どのようにして課題に対する視座を高めていけばよいのでしょうか。これを実現するために、以下の3つのステップで整理することをお勧めします。
1つ目のステップは「課題の整理」です。現場から上がる課題には、要望や不満が織り交ぜられていることが少なくありません。そのままでは現場に停滞や困難を起こしている状況の重要性が正しく認識されないため、まずは課題として扱えるように変換する必要があります。
2つ目のステップは、個々の課題の共通点や関連性を明確にし、類似の課題をまとめる「グルーピング」です。これによって経営層は、現場に起こっている課題の全体像をより把握しやすくなります。
そして3つ目のステップは「課題の抽象化」です。グルーピングした課題に対してその本質を表現するインサイトを示します。課題の本質を保持しつつ抽象度を引き上げることで、経営層は事業戦略と結びつけやすくなります。

これら3つのステップを進める上では、いくつかの重要なポイントに注意を払う必要があります。各ステップの留意点を十分に理解した上で、着実に進めていきましょう。
1つ目のステップでは、不満や要望をそのまま受け止めるのではなく「なぜその声が上がったのか」という背景を深掘りし、課題として明確に整理することが重要です。例えば「モバイルパソコンが重すぎて持ち運びに不便」という声があったとしても、単に軽量化を求めているのではなく、頻繁な移動や外出先での業務が前提となっている可能性があります。背景を適切に捉えることで「業務環境に適した端末が整備されていない」といった、解決すべき課題としての形に変換することができます。
2つ目のステップのグルーピングでは、類似性や関連性に基づいた課題の整理が鍵となります。関連性の薄い課題を無理にまとめると、各課題の本質が不明確になり、逆に過度な細分化は個別最適に偏り、人的リソースや時間の無駄遣いを招きます。課題間の関連性を慎重に見極めながら、適切な粒度でグループ化することが重要です。
3つ目のステップで行う抽象化の度合いは、課題解決に大きな影響を与えます。例えば「持ち出し用パソコンの不足」という課題を「業務効率と生産性の低下」や「売り上げの低下」まで抽象化すると、課題の範囲が広がりすぎて具体的な解決が困難になります。「働き方に合わせたパソコンが整備されていない」といった元の課題が読み取れるレベルで抽象化することを心がけましょう。
これら3つのステップの注意事項に共通することは、現場が課題の本質をいかに深掘りし、適切に整理するかということです。課題の抽象化は、経営層に行動を促すための必須の手段です。さまざまな課題を抱える現場自らが、まず課題の本質はどこにあるかを十分に理解することが求められます。
計画段階から実行まで一気通貫で推進するには
実際に企業が課題解決を進めていく上では、前述の3つのステップに加え、経営層の意思決定を促すための「目標設定」「優先度設定」「アプローチ案の提示」といったプロセスが欠かせません。
ユニアデックスではこうした取り組みを包括的に支援するITコンサルティングサービスを用意しており、課題を経営層の視座へ引き上げるとともに、迅速かつ的確な意思決定を実現する環境を提供しています。
具体的には、まず抽象化された課題に対してビジョンと関連づけた目標を設定することで、解決策の方向性や達成すべき状態を明確にします。続いて、課題の本質を客観的かつ定量的に評価し、優先順位を明示することで、企業戦略に沿った投資判断を支援します。さらに、課題解決に必要な検討事項や具体的な対策などのアプローチ案を提示し、経営層からの理解と支持を得ることで、迅速な意思決定を促します。
加えて、ユニアデックスは多くの企業のITインフラの設計・構築・運用・保守に長年携わることで培ってきた豊富な実績と経験を有しています。この知見を生かすことで、現場で顕在化している課題はもとより、潜在的な課題についても経営層の視座を踏まえて整理し、課題解決の全体像を明確化する役割を担うことも可能です。
技術の進化や市場の変化によって、企業を取り巻く環境や課題は今後さらに複雑化・多様化していくと考えられます。そうした中でも、本記事でご紹介した課題解決のプロセスは視座を揃えて考えるための普遍的な手法として、これからも活用できるはずです。少しでも皆さまの課題整理のヒントになれば幸いです。

関連情報
関連商品・サービス
関連ソリューション
関連コラム
お問い合わせ
お客さまの立場で考えた、
最適なソリューションをご提供いたします。
お気軽にお問い合わせください。