発想の転換以上の創造性を! いま求められる創造的発想力を鍛えるには?

  • アイデア発想

2022年11月04日

  • ソリューション

経済成長が伸び悩む日本の現状において、健全な競争力を復活させるため個人の創造性、独自性がより問われています。反面、価値の所在が有形資産から無形資産に移り変わっている中での価値創造に悩むことが多い時代になっています。このような状況において、未来サービス研究所でもアイデア発想のワークショップをはじめ創造性を刺激する活動を行ってきました。今回は、独自にアイデア思考法として「ユニークブレインラボ」を開発し、また経営コンサルタントとしても活動されている株式会社経営技法 代表取締役社長 鈴木俊介氏に「創造的発想力」をテーマにお話を伺いました。鈴木氏とは、コロナ禍になる前から「ユニークブレインラボ」を中心とした研修や勉強会でご一緒させていただき、その世界観のおもしろさに共感しています。創造性とそこから発想される世界の広さを紹介します。

  • ユニークブレインラボは、株式会社経営技法の登録商標です。

鈴木俊介(すずき しゅんすけ)
株式会社経営技法 代表取締役社長
ユニークブレインラボ開発者
 
1969年生 慶應義塾大学、Case Western Reserve 大学院卒 MBA取得。出光興産、KPMGビジネスアシュアランス、Kepner Tregoe Japanを経て、2009年(株)経営技法を設立。2011年から創造力強化のため思考技術トレーニング体系「ユニークブレインラボ」を企業研修中心に展開。業種、職種を越えて5,000名が受講。新商品新事業創出からコーチングまで、幅広い適用分野と連携しながら展開中。 思考技術=ものの観方、考え方、考える手順を基軸においたソリューション、ノウハウを設計開発。知識を実務に活かす「センス」を鍛えることで、成果創出につなげる。 産業財、自動車、エレクトロニクス業界を中心に、大手コンサルティング会社が提供しない領域で、技術、マネジメント、マーケティング問わず、顧客の課題に合わせた、独自のコンサルティング、および研修メニューを提供。
 
所属団体
NPO法人ランチェスター協会理事
NPO法人日本創造力開発センター監査役

鈴木氏プロフィール写真

いまの時代、ユニークブレインラボ開発の必要性とは何か?

小椋:最初に、アイデア思考法として「ユニークブレインラボ」を作ろうとしたきっかけやその背景について教えてください。

鈴木:「ユニークブレインラボ」を作ったのは2011年。2009年に独立しコンサルタント業を始めた頃、思考技術をテーマとして活動していました。そこでは企業の課題を"謎解きする"ような活動を行っていて、その時に使ったテクニックを体系化し、まとめたものが「ユニークブレインラボ」です。
当時、「ものを考える」「思考力」といえば、最初にロジカルに考えて答えを絞り込むという方法を説く人がほとんどでした。そこで分かったことは、ロジカルに考えることはスムーズなんですが、そこで分かった原因に対してどう対応するかという発想に結びつけることが難しいということです。もうひとつ、多くの方は実験と観察のプロセスに苦手意識があること。生の一次情報を自分で集めてきて、その中から問題そのものを自分で気づけるか、発見できるかどうか。人が見えないことを見る、そして人が考えないことを考える。よく言われる、発明の前の"発見"が難しいということです。この中でのやり方はまさに創造的思考法であって、当時他にはなかったために自分でまとめることにしたんです。

ユニークブレインラボ ロゴ

ユニークブレインラボの特徴とその効果

小椋:実践の中から生まれてきた手法ということですが、その特徴や効果について教えてください。
 
鈴木:ユニークブレインラボでは、創造的思考を4つのアプローチ(抽象化思考、複眼力、構想力、連想力)にまとめています(下図参考)。もともとは等価変換理論における抽象化を発端としていて、それ以外にさまざまなケースにおいて必要な手法を分析・法則化してまとめています。

創造的思考の4つのアプローチ

一般的に創造性の中で、"複数の組み合わせ"と"異質のものとの出会い"を同義的に言われてますが、ここでは曖昧にしないで、"組み合わせ=構想力"、"出会い=抽象化思考"と分類しています。コンセプト段階は良いが、具体的な形に仕上げる段階においてはこのようなさまざまな着眼点が必要になってきます。そしてこれらは、別な頭の使い方をするものなのです。この4つのアプロ—チで取り組むことにより創造的発想力が鍛えられます。ユニークブレインラボでは、それぞれについて独自に作ったエクササイズが用意され、全体で約60種類ほどあります。

小椋:私も定期的にこのエクササイズを受けていますが、その中で自分の脳が得意な分野と不得意な分野があることが分かったりもします。この効果についてエピソードなどあれば教えてください。
 
鈴木:繰り返しやっているうちに4つそれぞれのバランスが取れてきます。僕は構想力や連想力が上達してきました。結果、自分がこんなにダジャレ(連想力による)が上手くなると思っていませんでした(笑)
 
小椋: 確かに、ダジャレが多いですね。ユニークブレインラボの勉強会に参加されている中にも、自分の成長を感じるという方がいらっしゃいますね。
 
鈴木:よく言われる効果のひとつは、考えるスピードが早くなることです。コンセプトとして"数多くアイデアを出すこと"を掲げていますが、そのために自然とスピードもついてくると思っています。最近は、顧客折衝や社内会議においてもその場ですぐに切り返すことで大きな判断や決定をするケースが増えています。ますますこのような思考のスピード感が大切になります。そして、数多く出すことで人が言わないことを考え出すことができます。エクササイズでは、鍛えていない筋肉を鍛える感覚で続けていると4つの思考の回路がつながり始めるんです。
 
小椋:ユニークブレインラボのWebサイト には、その理念の中で「ユニークブレインラボによる創造性強化のアプローチは、各人の創造力を強化するだけではなく、異能に対する理解と寛容性を高めることにもつながります。」と説明があります。この想いについて少し説明していただけますか?

ビジネスアイデアイメージ図

鈴木:発想力や創造力がつくよりも先にこちらの方を皆さんは実感します。これは、人の言うことに対してひとつひとつに腹を立てなくなることです。逆に、自分のアイデアに固執する人がいますが、それはアイデアの数が足りていないからです。いつも100個ぐらいさまざまなレベルのアイデアを出していれば、人のコメントが何も気にならないし、その意見が自分とは違った視点でどんどん膨らませ発展させるきっかけにもなりありがたいです。数多く出すことは多様性を受け入れることでも大変意味があります。

未来予測の思考技術としてのユニークブレインラボの使い方

小椋:未来サービス研究所では独自に未来予測を行っています。その過程においては創造的発想力をとても必要とします。5年ほど前に鈴木さんが講師された未来予測の研修を受けたとき、冒頭に"変化の変化を考えることが重要"と言われたことが印象に残っています。ユニークブレインラボの未来予測での活用について教えていただけないでしょうか?

鈴木:僕は、未来予測の大前提として、たくさんの未来を考えることと言っています。これは多くの人が自分の好む未来を描こうと目指すので未来の答えの可能性はどんどん増えていき、その中で1つの答えを予測することはとても難しくなっています。そこでたくさんの未来を考えるということは、ユニークブレインラボの多くのアイデアを出すことと全く同じなんです。ここでも重要なことは、人が言わないユニークさが求められるということです。ビジネスにおいても差別化ができた時点で勝負が決まるのと同様に未来予測についても他の人が言わない未来を描くことに価値があります。製品開発のアイデア発想とは時間軸が違うだけで思考は同じなんです。

未来案内板

小椋:未来予測の方法について質問を受ける時、まずより多くの時間を使って未来のコトを考えてくださいと答えています。鈴木さんはどのように答えますか?
 
鈴木:僕がはじめて未来予測をしたのは高校の時でした。当時、国語の名物教師がいてその授業の最後で未来予測の作文を書く課題が出されたんです。テーマは自分の趣味でもスポーツでもなんでもよかった。しかし、ここには教科書などに書かれていない未来のことなので、自分の頭で考えなさい!という意図があったんです。
 
そこで、テーマは普段から政治や経済に興味があれば比較的簡単に思い浮かんでくるのですが、なければやはり自分の未来について考えることになりますよね。自分の趣味、人生、家族のことなどなど身の回りのことなどはおもしろいです。人は自分に関心のないことを考えるのは苦痛でしかありません。事業において、新製品を作ることも、自分の会社や業界の未来に関心があり自分たちが作りたいと思っているから生まれるんです。
 
小椋:いまの時代、自分の未来に興味を持っている人がどのぐらいいるのか気になっています。私が仕事で未来予測をはじめてから変わったことは、自分の未来を考えることが習慣になりました。若い頃はあまり考えていなかったかもしれません。
 
鈴木:僕は30代のころから転職するなどキャリア形成を考えていたので自分の未来のことをいつも意識していました。自分の立場が安定していればあまり意識しないかもしれません。いまは考えないで済む環境になっているのかもしれません。
 
それならば、自分のパートナーのことや趣味のことなど身の周りで好きをみつけることです。その時に有効なのが"複眼力"になります。つまりいろいろな視点をもつこと、自分とは違う目線を持つ人の立場から考えることです。これは自分とは異質なものを受け入れることに通じます。

ユニークブレインラボで目指すものとは

小椋:最後に、鈴木さんが今後の活動で目標とされていることを教えてください。
 
鈴木:目標は、世界を変えること、です。そのために世界を変えられる人を一人でも増やしたいです。各人がそれぞれの持ち場で今までとは違う前提で変え方や行動を変化させ、世の中を良くしていこうと思う人がどんどん増えていくことを願っています。

change

身近な例では、多くの人はSNSの時代に慣れてきているので、皆さんがおもしろいユニークなコンテンツの発信者になれば、世の中が楽しくなるのではと考えています。世界へも発信できる環境はあるので、みんながもっと身近なおもしろさや自分自身のおもしろさに気づいて、ユニークさを追求すればさらに楽しくなるのではないでしょうか。
 
これからの産業人に必要なことは、全員が違ったスキルを持ち、考え方も異なること、つまりユニークさです。それぞれが異なるのでみんなが協力し合う方法を学んでいくと考えています。現在の教育体系も産業人をターゲットにした内容に変化していく必要があるかと考えています。そこでユニークブレインラボが貢献できればと思います。

小椋:鈴木さん、今日はありがとうございました。未来サービス研究所もユニークさを追求して世の中の変化に貢献していきます。今後もご一緒できることを楽しみにしています。

インタビューを終えて
 
未来サービス研究所では、異業種企業でのアイデア創出のワークショップを実施していますが、その中でユニークなアイデアを出すことは簡単ではありません。時間的な制約、新しいツールの利用などさまざまな工夫をしてきました。今回の鈴木さんとのインタビューでは、同じ狙いで工夫を重ねてきた思いに共感できたことに加えて、ユニークブレインラボへの想いの奥深さを感じとることができました。
 
ユニークブレインラボには認定制度があり、私は「ユニークブレインマスター」をいただきました。今後も、鈴木さんとは同じ想いで世の中を変えていく活動を続けていきたいと思います。
 
未来サービス研究所 小椋則樹

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