

2022年4月18日公開
ニュースやビジネス記事などで「イノベーション」という言葉をよく耳にするようになりました。日本政府の政策にもイノベーションに関する施策が盛り込まれ、イノベーションに取り組む企業も増加しています。
日本でイノベーションが注目されている背景には、日本企業の国際的競争力の低下があります。GAFAMを始めとして世界で続々と新しいサービスが登場し、私たちの生活はますます快適になっています。一方、日本企業からは目立った新しい商品やサービスが生まれていないことが懸念されています。
未来サービス研究所では、イノベーションが起こりやすい組織のあり方について調査研究を行っているほか、幅広い企業とのイノベーションの種づくりを目的として、異業種交流ワークショップ「未来妄想サロン」の継続開催や、社内外の共創パートナーとの合同ワークショップの開催を行っています。
調査研究の一環として、「イノベーションに取り組む企業200社にアンケート調査」を実施し、日本企業のイノベーションへの取り組みや課題の実態把握、企業がイノベーション創出を行うために必要な組織体制や取り組みについての考察を行いました。
「イノベーション創出を促す組織、取り組みとは?」アンケート調査概要
調査方法 :Webアンケート
調査時期 :2021年12月
調査対象 :イノベーション創出に関わる業務に携わる方で
Aグループ:イノベーション創出のための組織構築が円滑に進んでいる方 100名
Bグループ:イノベーション創出のための組織構築が円滑に進んでいない方 100名
※従業員数50名以上の会社に勤める25~75歳の方を対象にアンケート調査を実施
本アンケート調査は、一部の主要項目を紹介した【報告書(抜粋版)】、全項目と考察を記載した【報告書(完全版)】があります。この記事の最後に【報告書(完全版)】のお申し込み方法について詳細がありますのでご確認ください。
「イノベーション創出を促す組織、取り組みとは?」アンケート 報告書(抜粋版)
この記事では、どのような取り組みがイノベーションの創出を促進するか、アンケート調査を踏まえご紹介します。
イノベーションの取り組みにはさまざまな課題が・・。
イノベーションの定義は多々ありますが、今回の調査では「自社の既存ビジネスの延長線ではない、新しい方向性の新規ビジネス創出」と定義しました。
イノベーションを起こすためには、既存ビジネスとは異なる新しいビジネスを起こす必要があります。そのためには、既存の概念にとらわれない自由な発想で新しいアイデアを出すことや自社にはないリソースを有する社外と連携することが有効です。しかし、ただ「新しいアイデアを考えましょう!」「他社と共創活動をしましょう!」と号令をかけただけでは、担当者は何をしたらよいのか困惑してしまいます。
アンケート調査では、「あなたがイノベーションに関わる中で感じる課題感、強化したいこと、会社に期待したいことを自由にご記入ください。(自由回答) 」という設問から、現場担当者のイノベーションの取り組みへの模索や課題感が見えてきました。
アンケート結果から得られたイノベーションの取り組みについての声(自由回答から抜粋)
イノベーション創出現場で行われている取り組みは?
それでは、イノベーションに取り組む企業は新しいアイデアを創出するために具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか?アンケート調査(Q12)によると、
- アイデア発想を促進するためのワークショップ、ブレーンストーミングの実施
- 社内でのアイデアソンなどアイデアを発信できる場の設置
- 社内ベンチャー制度、社内新規事業コンテストなどアイデアを事業化できる場の設置
- 異業種交流会への参加促進
に取り組む企業が多くみられました。
また、新しいアイデアを生み出すために重要なことについての質問(Q14)では、
- さまざまな人と対話し刺激を得る機会があること
- さまざまな人の考えを知ったり、ディスカッションしたりする機会があること
- ひらめきを言葉、形にする機会があること
- 制約にとらわれない発想をする機会があること
を重要とする回答が多くみられました。
イノベーション創出に関わる業務に携わる方で
◆ Aグループ:イノベーション創出のための組織構築が円滑に進んでいる方 100名
◆ Bグループ:イノベーション創出のための組織構築が円滑に進んでいない方 100名
「さまざまな人との対話の場」と「アイデアを発信しブラッシュアップする場」を作ろう!
自由回答の結果から、イノベーションを目指し新しいアイデアを出そうとしても、既存事業で培ってきた経験がかえって自由な発想を妨げ、新しいアイデアが出づらくなってしまうことが懸案事項となっている様子がうかがえます。それを打破するため、ワークショップやブレーンストーミングなどでさまざまな人と対話し刺激を得たり、制約にとらわれない自由な発想の機会を作ることでアイデア創出を促したりしていることがわかります。
対話する相手としては、社内の同部署、他部署、同業種企業、異業種企業、大学や自治体などが考えられます。社内や同業種の企業とは、対話の場を設けやすく近い価値観でコミュニケーションを図ることができます。異業種企業など自社との共通項が少ない他者ほど社内だけでは出づらい新しい発想が生まれやすくなるでしょう。
ひらめいたアイデアは基本的には担当者の頭の中にあります。自由回答の結果からは、アイデアが浮かんでも多忙な業務の中で忘れ去られてしまったり、具体化の手法がわからず実現に至っていなかったりという現状がみえてきます。担当者の頭の中にあるアイデアを言葉や形にして他者と共有し、さらなる対話でアイデアのブラッシュアップを繰り返しながら具体的な企画にしていくことが必要になります。
つまり、自由なアイデアを創出しイノベーションを実現していくためには、「さまざまな人との対話の場」と「アイデアを発信しブラッシュアップする場」を設置することが有効であるといえます。
アイデア創出から事業化までのフロー
ゆるやかな異業種交流ワークショップがイノベーションのきっかけに!
自由回答の結果から、外部企業との接点の作り方や深め方に課題を感じている企業が多いことも見えてきました。
外部企業との接点の作り方としては、
- 社外で開催されるワークショップや研究会、研修など異業種交流に参加
- HPやSNS、展示会などで自社の取り組みや強みを発信しコンタクトを募る
- イノベーションハブやCVCの設置
などの方法があり、目的に合わせて使い分けていくのがよいでしょう。
未来サービス研究所では、企業同士が利害関係の無いゆるやかな横のコミュニケーションでつながり、未来社会の在り方について制約無く自由に対話することで、互いに刺激を与え合いひらめきを生み出す場としてさまざまな形の異業種交流ワークショップを開催しています。
コロナ禍で業務に直結しない横のつながりを作ることが難しくなっていますが、オンライン会議ツールやバーチャルオフィス、オンラインホワイトボードなどのITツールも活用し、非対面でもコミュニケーションが活性化できるよう工夫しています。
参加者からは、
「参加者の方のお考えや、会社の状況を知ることができました。課題共有や自分になかった考え方を知る機会になり、有意義な時間を過ごすことができました。」
「他の皆さん方がとても思考回路に柔軟性があると感じました。普段から未来予測を考えるにあたり、発想をより柔軟にしていく必要がある事を学ばせていただきました。角度を変えての視点が必要だと感じました。」
「人間の想像力よりも偉大な発明はないということを学びました。これまでは新たな企画を考える際、実現可能であるという枠組みを前提とし、新規性や独自性を考慮して、アイデアを生み出そうとしてきました」
などの感想がありました。
未来サービス研究所が開催する異業種交流ワークショップの魅力の一つは「ゆるやかさ」にあると考えます。向上心や好奇心を持った参加者同士がゆるやかな横のつながりを作り、日常業務から少し離れて未来社会について対話を行うことで、相互に刺激し合い、普段は出ないようなひらめきを生み出すことができます。また、多様な業種の方と出会うことで共創企業との出会いの場としても機能しています。
今回実施したアンケート調査から、改めてさまざまな方との対話がアイデア創出に重要だと感じました。未来飛考空間は、多様な考えを持った方々が集まり、より多くの未来像を創造/想像する場作りのコンセプトです。これからもこのコンセプトのもとさまざまな形のワークショップを企画し、イノベーションの種をたくさん生み出していけたらと考えています。
未来サービス研究所が開催するワークショップの様子
「イノベーション創出を促す組織、取り組みとは?」アンケート調査概要
調査方法 :Webアンケート
調査時期 :2021年12月
調査対象 :イノベーション創出に関わる業務に携わる方で
Aグループ:イノベーション創出のための組織構築が円滑に進んでいる方 100名
Bグループ:イノベーション創出のための組織構築が円滑に進んでいない方 100名
※従業員数50名以上の会社に勤める25~75歳の方を対象にアンケート調査を実施
「イノベーション創出を促す組織、取り組みとは」アンケート 報告書(抜粋版)
「イノベーション創出を促す組織、取り組みとは」アンケート 報告書(完全版)
(本資料はダウンロードリンクをメールにて送信いたします)
【報告書(完全版)】概要
ファイル形式 PDFファイル
ページ数 68ページ
目次 Ⅰ サマリー(4)
Ⅱ 考察(8)
Ⅲ 調査結果
1.イノベーションへの取組概況(15)
2.イノベーション創出を促進する組織(19)
3.イノベーション創出を促進する具体的取り組み(30)
4.イノベーション創出の要諦、課題(38)
Ⅳ 単純集計(40)
考察内容 ・イノベーションに取り組む目的の明確化
- イノベーションは目的ではなく成長のための戦略
- 目的を全社に浸透させ健全な危機意識を醸成
・イノベーションの方向性の定め方
- コアコンピタンスの明確化
- トップダウンvsボトムアップ
・イノベーション創出を促す組織
- 人材の専門性、多様性、流動性
- 既存事業と切り分けた評価方法や働き方の設定、失敗を許す組織風土
・イノベーション創出を促す具体的な取組
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(2022年04月27日更新)