コロナ禍で進む学校教育のデジタル化、小・中学生の保護者はどう対応しているか?
「ICTを活用した学校教育に対する家庭での取り組みに関するアンケート調査」を行いました。
- ライフスタイル
2020年11月26日
- 子育て・教育
新型コロナウイルスの影響により今年の3月から5月にかけて多くの学校が休校措置をとるなか、緊急手段として家庭内でPCやタブレットを用いた学習動画の視聴や、学校が配信するオンライン授業の受講などICTを活用した学校教育の取り組みがなされました。
さらに現在、文部科学省が推進するGIGAスクール構想や学校教育のデジタル化に向けた各種規制の緩和、デジタル人材強化などの動きが加速しています。将来は学校内だけではなく、家庭内においてもデジタル教材やオンライン授業を活用し、学校教育と連動した学習をする機会がますます増加すると予想されます。
ユニアデックス株式会社未来サービス研究所では、小学生・中学生の保護者を対象としたWebアンケートを実施し、ICTを活用した学校教育に対する家庭での取り組み状況と保護者の意識について調査しました。
「ICTを活用した学校教育に対する家庭での取り組みに関するアンケート調査」概要
【調査内容】
- 新型コロナウイルスの影響による休校期間中および現在における、家庭でのICTを用いた学校教育の実施実態
- ICTを用いた家庭での学校教育に対する保護者の意識
【調査手法】
調査会社のモニターを用いたWeb調査
【調査期間】
2020年9月16日~9月20日
【調査対象】
新型コロナウイルスの影響による休校期間中に家庭でICTを使った学習をした、または現在学習している小学生・中学生の保護者1,091名
- ※塾や習い事など学校教育以外のICT利用は除外して質問
<対象者詳細>
関東・中部・近畿地方に在住する30~50歳代男女
男性(父親)478名、女性(母親)613名
小学生の保護者764名、中学生の保護者327名
調査結果サマリー
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ICTを用いた学習を家庭で行う内容で最も多いものは小学生・中学生(以下小・中と表記)ともにデジタルコンテンツ教材の利用であるが、小学生では配信動画の視聴、中学生では学校側が提供するオンライン授業に参加する割合も高い。ICTの学習ツールでは、小・中ともにZoomの利用率が最も高い。
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学習デバイスは、小・中ともにPCとタブレットが同程度(各約4割)であった。デバイスの所有者は、小学生で「保護者」、中学生で「子ども自身」の割合が高く、学校支給のデバイスを利用している割合は低かった(小学生2.2%、中学生3.8%)。
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ICTを用いた学習を実施するにあたり、新しくPCやタブレットを購入した家庭は小・中ともに約2割であった。とくに小学生ではイヤホン等の付属物やプリンターの購入率も高く、ICT環境の整備が家庭において負担になったと推測される。
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学習環境は、小学生が「リビングで母親と」、中学生は「リビングか自室で自分だけ」という傾向にあった。また子どもの集中力が持続する学習時間は、「30分未満」が小学生で4割強に達していた。
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子どもがICTを用いた学習をするさい保護者が実施していることを「学習環境」「学習内容」「ICT支援」の3分野から質問すると、父親と母親で傾向に違いが見られた。母親は「学習環境」や「学習内容」にかかわる値が高いが、「ICT支援」になると父親と母親の値が同等になるか、父親が逆転していた。
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ICTを用いた学習に対する意見や要望では、学校に対しては双方向型授業、デジタル教材、個別指導など学習方法や内容を充実させることに対する要望が小・中ともに高い。また小学生の母親で「子どもだけで学習するのは難しい(親が付き添う必要がある)」の値が高く、家庭で子どもの勉強を見ることが、とくに小学生の子どもを持つ母親には負担になっていることがうかがえる。
- ※ 調査結果の詳細につきましては別冊のレポートをご覧ください。(下の表紙をクリックするとダウンロードできます)
調査結果ピックアップ(一部)
ICTを用いた学習を家庭で行う頻度は?
新型コロナウイルスによる休校期間中(2020年3~5月)に「ほぼ毎日」「週に4~5回」ICTを用いた学習をおこなっていた割合は小学生47.6%、中学生52.9%と半数近くを占めました。しかし休校期間終了後は「実施していない」がそれぞれ44%、50.8%と逆転していました。
ICTを使った学習の中身は?
小・中ともに、デジタルコンテンツ教材を使った学習がもっとも経験率の高い結果となりました。学校別に見ていくと、小学生ではテレビ番組など既成の動画視聴、中学生では学校教師による授業にリアルタイムで参加する、オンデマンド配信を視聴する割合が増加しています。またICT学習ツールでは、小・中ともに「Zoom」の利用率が最も高くなっています。
学校が支給するデバイスの普及はこれから?
学習に利用するデバイスは、小・中ともにPCとタブレットが同程度(各約4割)でした。デバイスの所有者は、小学生で「保護者」、中学生で「子ども自身」の割合が高く、学校支給のデバイスを利用している割合は、小学生2.2%、中学生3.8%とわずかでした。
約2割の家庭が、学習用に新しくPCやタブレットを購入!
学習環境は、小学生が「リビングで母親と」、中学生は「リビングか自室で自分だけ」
学習する場所は小・中ともに「リビング」が第一位ですが、中学生になると「子ども部屋」も42.2%に達しています。また小学生では45.4%が母親と一緒に学習していますが、中学生になると61.1%が子どもだけで学習しています。
集中できる学習時間、小学生は30分未満が約半数
子どもが集中できる学習時間については、「15分未満」「15分~30分未満」が小学生で合計46%に達しました。中学生では「30分以上1時間未満」が44.6%と最も多くなっています。
- ※ 休憩をはさむなどして一日に複数回学習する場合、一回あたりの平均的な時間を質問
父親と母親では、子どもの学習に対するかかわり方に違い
子どもがICTを用いた学習をするさい保護者が実施していることを「学習環境」「学習内容」「ICT支援」の3分野から質問しました。父親と母親別に傾向を見ると、母親は子どもの学習環境(「生活リズム管理」「学習以外の行動チェック」)、学習内容(「学習進捗チェック」「学習理解支援」)にかかわる行動の値が高いが、 ICT支援(「操作支援」「コミュニケーション支援」)になると父親と母親の値が同等になるか、父親が逆転しています。
家庭におけるICTを用いた学習への意見
小・中ともに値が高かったのは「学校の友達とのコミュニケーションが不足する」でした(小学生31.4%、中学生31.2%)。しかし小学生の保護者では「子どもだけで学習するのは難しい(親が付き添う必要がある)」が最も値が高くなっています(36.3%)。とくに母親では40.2%が「子どもだけで学習するのは難しい」と回答しており、小学生の母親では家庭で子どもの勉強を見ることが負担になっていることがうかがえます。
新型コロナウイルスの影響による休校期間中にICTを活用した学校教育を受けるにあたり、デバイスや付属品の新規購入や、子どもの勉強を見るための付き添いなどの負担を伴った家庭が少なからず存在し、とくに小学生の子どもを持つ家庭での負担感が高い傾向にあることがわかりました。
小学生は集中できる学習時間が短いなど子どもの成長段階によってもデジタルとの接し方には異なる特徴が見られ、これらの実態に即した教材や授業の工夫が求められそうです。
今後も教育のデジタル化の流れが止まることはないと予想されますが、未来サービス研究所では引き続き動向を注視し、ICTを活用した教育を支援するサービスの創出を目指します。
<調査報告書>
- ※ 本調査結果を引用いただく際は出所の明記をお願いいたします。
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- ※ 自治体・企業・人物名は、取材制作時点のものです。
2020年11月26日公開
(2021年07月19日更新)
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