学校教育デジタル化、米国の動向は?シリコンバレーのオンライン教育事情インタビュー
【「リモート」から見える未来 】vol.8
- ライフスタイル
2021年07月12日
- 子育て・教育
2020年3月から5月にかけて行われたコロナ禍の一斉休校から1年以上が過ぎ、小・中学校を中心とした子どもたちの学校生活は対面中心のスタイルに回帰したかに見えます。しかし、GIGAスクール構想やデジタル教科書の導入検討など、大きな潮流として学校教育のデジタル化は着実に進んでいます。
未来サービス研究所(以下、未来研)では、2020年11月に学校教育のデジタル化に対する保護者の意識についてアンケート調査を行っています。その結果、オンライン教育に対するデバイス投資や子どもの学習管理などで、保護者の負担が少なくなかったことがわかりました。
それでは、日本よりも教育のデジタル化が進んでいるとされる外国の状況はどうなっているのでしょうか。日本ユニシスグループの米国拠点NUL SystemServices Corporation(NSSC)に所属し、カリフォルニア州在住の片澤友浩さんに米国のオンライン教育事情を伺いました。片澤さんは、当社オウンドメディアNexTalkの好評連載「シリコンバレー便り」を通じて、米国の最新ICT動向を発信されています。また3人のお子さんのパパでもありますので、豊富な知識とリアルな実体験がギュッと詰まったインタビューになりました!
Google Classroomなど基本となるツールはコロナ以前から使っていました。ただ、自主学習で使うような補助教材的なものはあまり使っていなかったと思います。対面の授業ができていたので、デジタルを活用しようという意識が薄かったのかもしれません。
コロナが深刻化してから、学校側から紹介されるアプリケーションの数が増えました。とくに学校側から個別のアプリについて細かい説明はなく配布されてきますので、使い方のレクチャーは妻や私が子どもに行いましたね。
自宅でのオンライン授業が続くと、「自分で計画を立てて学習する」という自己管理の意識がより強く求められます。ですので、自己管理しながらコツコツ学習できる子とそうではない子、という性格的な違いが対面授業の頃に比べて、より成績に反映されやすくなっている気がします。自分の子どもたちを見ていてそう感じますし、こちらのニュースでも、コロナになってから学力が下がる子が出た、ということが話題になっていました。
地域によって違うかもしれませんが、この学区(District)では、中学校の場合は家庭でデバイスを用意し、学校に通学する時も家のデバイスを持ち込んで使うことになっています。種類はiPadかChromebookという指定がありました。小学校は学校側でツールが用意されています。コロナになってからiPadなど2台もデバイスを新調したので痛手でした(笑)。もちろん、デバイスが準備できない家庭ではDistrictから借りることも可能になっています。
アプリのインストールなど、初期設定は親がしましたが子どもに渡すとすぐに使い方を覚えて、勝手に操作するようになりました。いいのか悪いのかわかりませんが、子どもは慣れるのが早いですね。
必ず授業で使わなければいけないアプリケーションなどはサポート窓口がわかっています。まだ利用したことはありませんが、Districtごとの教育委員会に連絡する形になっています。
日本とは異なり、こちらは教育委員会と保護者の距離が近く、オンラインでのやりとりが進んでいます。ロックダウンを経て学校を再開するときのルールなど、地域全体に関わる連絡は教育委員会から直接保護者あてにメールがきたりします。
米国へ引っ越した当初、子どもが通う学校登録の手続きも教育委員会が窓口でした。日本だと市役所などの行政機関になるのでしょうが、仕組みが異なっています。
わが家では私もずっとテレワークなのですが、長男は私と一緒の部屋で勉強しています。最初は自分の部屋だったのですが、一人よりも誰かが見ていた方が勉強がはかどるタイプなので一緒にしました。次男は自分でやる子なので、自室で勉強しています。末っ子はまだ小さいのでリビングで妻と一緒です。
ただ、一緒にいるといっても見守っているという感覚で、勉強の中身を見たり教えたりということはしていません。学習でわからない点は直接先生とやり取りしています。
もちろんありますよ!フィルタリングをかけたり、アプリを制限したりと策を講じていますが子どもはくぐり抜けてきます。知らない間に聞いたことのないブラウザーを入れていたり、ゲームをしていたり。定期的にチェックはしていますが、いたちごっこですね。子ども同士でGoogleハングアウトをつかってチャットなどのやりとりもしています。その辺は日本にいたとしても変わらないのでしょうね。
現在はコロナの影響でイベントが出来なくなっていますが、先生の誕生日にプレゼントを贈ったり、学校への寄付の協力などでアプリを使ってやり取りしています。米国にはボランティアの文化があるので、学校行事のお手伝いなどは、都度募集して対応しています。こうした文化のため役員も進んで立候補してくれる人がいるので、PTAの役員決めで困ったことはなかったです。
こちらはPTAの担当する範囲がクラス単位のイベントでクローズしていますが、日本のPTAは学校行事のお手伝いや通学路の見守りなど、多くの係や担当がありますよね。PTAの負担感は日本ほど大きくないと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました。
インタビューを終えて
新型コロナウイルスが急速に拡大した昨年の春は、片澤さんのお子さんが通われている学校も日本と同様に混乱した様子だったことがわかりました。しかしコロナ以前からGoogle Classroomなど基本的な仕組みが整っていた点が、その後のオンライン教育への完全移行、現在の対面とオンラインを併用したハイブリッド教育への展開につながっていると思われます。補助教材など教育アプリケーションの種類が豊富であることも、今後日本において効果的なオンライン教育を進めるうえで参考になります。
こうした教育内容面におけるデジタル化に加え、今回のインタビューでは学校や教育委員会と保護者、あるいはPTAといった学校関係者間のコミュニケーションや情報のやりとりがアプリなどの活用により円滑になされている点が印象的でした。ようやく日本でも、連絡帳や紙のプリント配布といったアナログな方法から脱却する動きが少しずつ始まったところです。米国などの先行事例を参考にしつつ、日本の教育制度や文化に合わせたデジタル化が望まれます。
(インタビュアー:未来サービス研究所 八巻睦子)
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2021年07月12日公開
(2021年07月12日更新)
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