ポストコロナの働き方による意識・行動の違いは? ~テレワーク、ハイブリッドワーク、オフィス勤務のセグメント別に比較調査を行いました

  • アイデア発想

2022年10月21日

  • テレワーク環境を整備して柔軟な働き方を実現したい
  • テレワーク
  • ネットワーク

新型コロナウイルスの影響により、テレワークとオフィス勤務を組み合わせて、働く場所や時間の柔軟性を高める「ハイブリッドワーク」への転換が加速しています。この新しい働き方は、従業員の生産性や満足度向上につながることが期待されています。しかし、今後のさらなる働き方改革に向けては、テレワーク主体の働き方、ハイブリッドワーク主体の働き方、オフィス勤務主体の働き方それぞれについて、実態を踏まえたうえでメリットやデメリットを比較していく必要があります。

未来サービス研究所(以下、未来研)では、テレワーク、ハイブリッドワーク、オフィス勤務という働き方の違いによる従業員の意識差や課題の現状を把握するため、「働き方に関するセグメント別比較調査」を実施しました。テレワーク主体の働き方を「ほぼ毎日テレワーク層」、テレワークとオフィス勤務を組み合わせた働き方を「ハイブリッドワーク層」、オフィス勤務主体の働き方を「ほぼ毎日出社層」と区分し、各セグメントが「コミュニケーション」「セキュリティー」「ワークライフバランス」の3つの側面についてどのような働き方を望んでいるか考察を行いました。

調査概要

調査方法
Webアンケート
調査時期
2022年7月
調査対象
一都三県に居住する男女20~60代の会社員、会社役員、経営者を対象とし、直近の勤務状況について以下のように回答を3区分した。
  • 1ほぼテレワーク・リモートワークをしている:538人
  • 2テレワークと出社・オフィス勤務を併用している
    (ハイブリッドワークをしている)    :536人
  • 3ほぼ毎日出社・オフィス勤務をしている  :586人
  • 対象の都県の年代別人口構成比に沿ってウェイトバック集計を実施
  • 総務省『住民基本台帳年齢階級別人口(都道府県別・令和3年1月1日現在)』に基づく

調査結果の詳細につきましては以下のレポート(PDF)をご覧ください。

本アンケートの3区分に関する属性は以下のようになっています。

ハイブリッドワーク資料1

ほぼ毎日テレワーク層は「情報通信業」の構成比が最も高く、ほぼ毎日出社層では「製造業」が最も多くなっています。ハイブリッドワーク層も「製造業」が最多ですが、「情報通信業」も僅差で、テレワーク/出社の中間的といえるでしょう。

社内のコミュニケーションの満足度は?

内容別満足度は「ほぼ毎日テレワーク層」、対象者別満足度は「ハイブリッドワーク層」がトップ

テレワーク主体の働き方では、通勤時間がなくなりワークライフバランスが充実するという一方で、物理的に相手と離れていることから従来の対面コミュニケーションよりも意思疎通がしづらくなる傾向にあります。
 
本調査では、社内コミュニケーションに関して「内容別(定例的な打ち合わせ、報告、1on1の面談など)」「対象別(上司、先輩社員、同僚など)」に満足度を質問しました。

ハイブリッドワーク資料2
<社内コミュニケーション 内容別・対象別満足度>
  • 満足度:各項目の回答について「満足している」「まあ満足している」の合計値

内容別満足度に関しては、「定例的な打ち合わせ、会議」ではほぼ毎日テレワーク層が66.3%、ハイブリッドワーク層が60.3%とテレワークの実施頻度が多くなるにつれて満足度が高くなっており、「業務に関する連絡や相談」「1on1の面談」においても同様の傾向がみられます。「ほぼ毎日テレワーク層」は情報通信業が最も多いという特徴はあるものの、テレワークをしている場合は対面ではないことや移動がないことなどから心理的ストレスが少なくなり、満足度が高くなっているのかもしれません。
 
対象者別満足度に関しては、「同じ部署・チームの上司や先輩社員など」でハイブリッドワーク層が65.0%と他の層に比べて高く、ほぼ毎日出社層は58.8%と最も低くなっています。他にも「同じ部署・チームの部下や後輩社員など」など、すべての項目においてハイブリッドワーク層の満足度が高い結果となりました。物理的に相手との距離が近く、毎日会っているからコミュニケーションに対する満足度が高くなるということではなく、週に数回程度顔を合わせることが適度なコミュニケーションとして良いということが想定されます。

セキュリティーについての心配は?

ハイブリッドワーク層はセキュリティー規定が浸透しており、なおかつ危機意識も高い

総務省では、企業がテレワークを実施する際のセキュリティー上の不安を払拭し、安心してテレワークを導入・活用するための指針として、「テレワークセキュリティガイドライン」を策定・公表しています。テレワークを行う際には従来のオフィスでの勤務とは異なることから、十分にセキュリティーについて気を付ける必要があります。
 
本調査では、社内セキュリティー規定の浸透度・危機意識を測るため、「各種情報資産の管理や利用などについて、社内ルールや規定が定められているか」「各種情報資産の管理や利用などに関する社内ルールや規定の現状について、不安や危機意識を感じているか」質問しました。

ハイブリッド資料3
<情報資産に関するセキュリティー規定の有無と現状への危機意識>

社用パソコンなどを持ち出すことが多い「ハイブリッドワーク層」はどの項目についても他のセグメントよりスコアが高く、セキュリティー規定が浸透しており、なおかつ危機意識も高いことがうかがえます。一方、「ほぼ毎日テレワーク層」は社内セキュリティー規定などに一定の理解はあるものの、危機意識は低くなっています。「ほぼ毎日出社層」は規定の浸透度において他のセグメントよりも低いという結果になりました。
 
では、具体的にセキュリティーについてどのような対策をしているのでしょうか。

ハイブリットワーク資料4
<情報セキュリティーの対策状況(複数回答)>
  • テレワークと出社・オフィス勤務を併用=ハイブリッドワーク層

上記は、「業務に関わる情報セキュリティーについて、対策していることはありますか」という質問に対する結果です(複数回答)。どの層においても「ウイルス対策ソフトの導入」が最も多くなっています。とくに、ハイブリッドワーク層は「対策していることはない」のスコアが13.4%と他のセグメントよりも10%以上低いため、セキュリティーに対する意識の高さがうかがえる結果となっています。

ワークライフバランスは?

「ハイブリッドワーク層」はアクティブな活動への意欲が高い?

テレワークはワークライフバランス向上に有効といわれています。テレワークを行うことで通勤していた時間を業務時間に充てたり、仕事を終えた後には家族と共に過ごす時間に利用したりすることができます。
本調査でも、現状の働き方満足度や仕事と私生活の両立に対する満足度、希望するテレワーク頻度についての質問を行っており、結果は以下となっています。

ハイブリッドワーク資料5
<働き方・仕事と私生活の両立への満足度、希望するテレワーク頻度>

まず働き方満足度をみると、満足と答えた割合は「ほぼ毎日テレワーク層」では82.9%、「ハイブリッドワーク層」73.2%、「ほぼ毎日出社」47.1%となっており、テレワーク頻度が高いほど働き方満足度も高いということがうかがえます。仕事と私生活の両立に対する満足度についても同様の傾向を示しており、やはりテレワークはワークライフバランスに有効であるということがいえるでしょう。

希望するテレワーク頻度ではどの層も現状の働き方を希望しているという回答が最も多くなっています。一方、「ほぼ毎日出社層」は、「テレワークをしたいと思わない」といった回答が最も多く、仕事柄テレワークの実施が難しいといったことが推測されます。
 
続いて、余暇や自己啓発などプライベートに関する具体的な内容別にワークライフバランスの満足度を質問しました。

ハイブリッドワーク資料6
<内容別ワークライフ満足度>
  • テレワークと出社・オフィス勤務を併用=ハイブリッドワーク層

「趣味などプライベートなことをする」「資格取得など自己啓発をする」といったプライベート性の強い項目では「ほぼ毎日テレワーク層」の満足度が最も高くなりました。一方で、「適度に体を動かし運動をする」「友人・知人と食事や飲酒をする」などの活動性やコミュニケーションを伴うものについては「ハイブリッドワーク層」の満足度が高い傾向があります。「ほぼ毎日出社層」は、他のセグメントと比較して項目を横断して満足度の低さが目立つ結果となっています。「ハイブリッドワーク層」は週1~3回の出社が適度な気分転換となり、アクティブな活動への意欲も増えているのかもしれません。
 
最後に、出社とテレワークを組み合わせた働き方について自由回答で意見をうかがいました。

<ほぼ毎日テレワーク層>

  • ライフワークバランスが整うようになって、心身ともに負担が軽減された
  • テレワークだと家族と過ごす時間が増える
  • 個人の都合で自由に選べれば良いと思う
  • 社員のコミュニケーションが希薄になっている

<ハイブリッドワーク層>

  • 半分くらいの比率で組み合わせることで身体と精神面のバランスがとれる
  • どちらもあることで効率的に仕事を進めることができると思う
  • テレワークでも、家以外でもセキュリティーがしっかりした場所で行えるようにしてほしい
  • どちらかを強制するのではなく、効率よく働ける形態を選択できるようにするのがよい
  • コミュニケーションのためにも週に何度かは出社するほうが良いと感じている

<ほぼ毎日出社層>

  • 製造業なのでテレワークは不可能なので考えたことはない
  • カスタマーサービスなので出社する
  • セキュリティーが確立されないと(テレワークは)不可能
  • 職場が決めるのではなく個人個人で出社するかテレワークか決められるようにすればいい

上記のように、それぞれのセグメントによって特徴的な回答がみられた一方で、どのセグメントにおいても共通して上がっていたのは「個人の都合で働き方を選択したい」という回答でした。通院や子どもの行事などがあった場合にはテレワークに切り替えるなど、それぞれの個人の事情に合わせて働き方を選択したいということがうかがえます。
 
また、回答にもあるように、テレワークを行うにはセキュリティー面での整備も必要です。これには、ICT技術や設備の導入だけでなく、その使い方や業務効率向上のための企業全体の意識改革も必須となるでしょう。また、セキュリティーを担保したテレワーク環境を整備しても、上司印が必要な業務のため出社せざるを得ないといったようなことも業務効率向上の妨げとなります。このような課題に対してもICTツールを駆使し解決することは可能です。
 
一方で、テレワークを行うことで社員同士のコミュニケーションが不足するといった回答も見られました。対応策としては、チャットツールの導入や以前本HPでご紹介したバーチャルオフィスツールの導入によりコミュニケーションの向上を図るといったことが挙げられます。
 
今回実施したアンケート調査から、テレワークという経験を経たことにより働き方に対する考え方が変化してきていると感じました。従業員のニーズに合わせた働き方を尊重することが、業務環境の満足度向上につながっていくのかもしれません。柔軟な勤務スタイルは組織と従業員のエンゲージメントを向上させるためにますます重要になってくるでしょう。

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