元サラリーマン落語家に訊く!テレワークですべらないリモート話術 其の三「長~いWeb会議や打ち合わせ・・・うまく切り抜けるには?」

テレワークあるある特別編

  • ワークスタイル

2021年03月19日

  • テレワーク・ハイブリッドワーク

落語から学ぶテレワークで役立つ話術のコツ、をテーマに続けてきた本連載も三回目を迎えました。
公開当初から大きな反響をいただき、未来サービス研究所(以下、未来研)メンバーと参遊亭遊助さんもリモートで喜びのガッツポーズを交わしています。

さて今回は、Web会議や打合せが長引いたとき、行き詰まったときに使えるテクニックを伺いました。
さらに新コーナー「楽屋裏からもう一席」では、読者の方から頂いたお悩みに遊助さんがお答えします!

長~い会議、行き詰まった会議...こんなときどうする?

<お悩み> オンライン相手の話が長い!穏便に切り上げるには?

「オンラインの打ち合わせで相手の話が延々と長くなってしまった時に穏便に切り上げる良い方法はないでしょうか。リアルの場合は微妙な表情をしたり、時計や書類に目を落としたりするなど色々とテクニックがあるのですが、オンラインだと難しいです。」


遊助から一言 answer

ここは、オンラインであることの特徴を逆に活かしていくのはどうでしょう。

話が長いなと感じた段階で、音声が聞こえないふりをする。「あれ、部長?ちょっとすいません、なんか音声が聞こえてなくて...」と一度話を切ってしまいます。そして、「大変申し訳ありません。いずれにしましても、部長がおっしゃっているのはこういうことですね」と話をまとめてしまう。聞こえないふりをしながら話の主導権をこちらに切り戻すわけです。

「いずれにしても」で話をまとめたり、「ところで、これについては」と話題を転換したりすれば良いと思います。

対面だと決して「聞こえない」とは言えないですからね。

オンラインならではの手法だと思います。

その心は? 聞いてみました

未来研:なるほど。つまり、二段構えの作戦なわけですね。まず、システムの不調のせいにする。そして不調で途切れたことをきっかけに、話の主導権を奪って話をまとめてしまう。実用性が高い手法だと思います。

遊助:ただ、主導権を取り返そうとした時に、「聞こえなかったの、そこはこういう意味でね!」ってさらに話そうとする人もいますから(笑)。
そうならならないようにバンバン突っ込んでいくしかないですね。

未来研:そういう人は手強いですね(笑)。相手が主導権を取り返しそうになったら、他の人に振ってしまうのも良いかもしれないですね。

遊助:そうですね。「部長こういうことですね。これについて○○さんどうですか?」と話者を変えてしまうのも手でしょうね。とにかく、主導権を相手に渡さないように。
あとは話している人も、話がまとめられなくて困っている場面は結構あると思います
だから、まとめてあげるというのも救いの手かもしれないですね。

<お悩み> 延々と続くオンライン会議...うまく抜けるには?

「同じような状況ですがオンライン会議が長くなって来たときに切り上げを促したり、自分だけうまく退出したりする方法はないでしょうか?たとえば終わってほしい時間になると室内からインターホンを鳴らして、『では宅配も来たのでそろそろ』みたいな流れにするなど考えられますが...。他に方法はありますか?」


遊助から一言 answer

落語の中に「親の遺言で、ぬか味噌は触れないんです」というフレーズがあります。「親の遺言でオンライン会議は60分までとされているので」・・とは言えませんやねぇ。

「では宅配も来たので・・」は上手な一人退出フレーズですよね。ただ毎回使うわけにもいかないので、いくつか用意しておかれたらいかがですか?「他部署(他社)との次の打ち合わせがありますので」「あ、ちょっと電話が入りましたので」「子供を迎えに行く時間ですので」「(タイマーを鳴らして)あ、料理の煮込みが終わっちゃった。次の手順にいかなきゃ」などなど、それぞれの状況に合わせたフレーズ=「言葉の箱」を用意しておいて使い分けてはいかがでしょう。

落語には、本題に入る前の「マクラ」という雑談がありますが、これも場所や相手などに応じて変えていきます。新しく創る場合もよくありますね。どんなフレーズをかましてやろうかと思いながら、言葉の箱をお創りになったら楽しくなりますよ。

その心は? 聞いてみました

未来研:ここでも「言葉の箱を増やす」作戦が有効ですね。本連載の其の二「Web会議、話に入るタイミングがむずかしい・・・」新規タブで開くでも言葉の箱についてのアドバイスがありました。視覚情報が少ないオンラインの世界だからこそ、言葉のバリエーションを沢山持っておくことが大切になりますね。

遊助:「会議が長いので」といってしまうと相手を非難することにつながるので、自分事のフレーズにしてしまうのがよいでしょう。気楽なオンライン飲み会だったら、「眠くなったので寝ます」とか、「お風呂に9時23分に入ることになってるんです~」など最後にジョークで逃げてしまうのも手です。

未来研:「医者に言われているんで」とかもいいですね。箱が充実してきました!一人であれこれ考える時間が充実しそうです。

<お悩み> 行き詰まったオンライン会議、場を和ませるには?

「オンラインミーティングが行き詰まったときなどに、カメラ画像の背景に小さいお子さんや動物が映ったり、声がしたりして癒されることがあります。私も同じようなテクニックで人を和ませたいのですが、一人暮らしだし動物も飼っていないので難しいです。リアルな猫のしっぽのぬいぐるみなどを購入して対処すべきでしょうか?」


遊助から一言 answer

落語の世界は長屋の生活感満載なので、庶民に親しまれたと思いますが、お仕事では、そういうものを切り捨てているので、ふと生活感が垣間見られると和みますよね。ミーティングが何となく険悪な時とか、ドン詰まりの時などに生活感を出すと緊張緩和に効果的かもしれません。

おっしゃるような、猫のしっぽのぬいぐるみなどが画面にチラチラしているのもいいですし、生活音をちょっと流してみるなどいかがでしょう。竿竹屋の売り声「た~けや~、さおだけ~」という音をふと流すとか・・・は難易度高いか(笑)。

その心は? 聞いてみました

未来研:一人暮らしで出せる生活音だと、家電の電子音を鳴らしてみるアイデアが思いつきました。電子レンジのチンする音、洗濯機の音とか。一歩間違えると仕事中に何してるんだと言われそうですが(笑)、状況に合わせて考えてみます。

遊助:そういうことを考えること自体を楽しんでほしいですね。「自分ボケ」でちょっと面白いことをして周囲を和ませる、そういうネタの箱を楽しみながら創ってみる

未来研:自分ボケにはバーチャル背景を使うという手もあります。私はミーティングごとに背景を変えて、相手の出身地の背景にしたりして突っ込んでもらうタイミングを待ったりします(笑)。
そういう意味では、突っ込んでくれる人をミーティングに仕込んでおくのもいいかもしれないです。
相手や状況にもよりますが、対面でやっていたレベルの雑談はオンラインでも大丈夫なんだとわかったらボケや突っ込みがやりやすくなりました。

遊助:自分ボケは誰も傷つけないので良いよね。自分が話題のネタになることでうまく雑談にも誘導できますし。

生活感があり過ぎるのも...

本日の心得

  • ミーティングの空気を変える「言葉の箱」や「自分ボケ」、創ること自体を楽しもう!

楽屋裏からもう一席

読者の皆様から頂いたご意見やお悩みに遊助さんがコメントします!

東京在住・Sさん

「Webを読んで、37年間エリートサラリーマンだった方の深さと厚みを知りました。落語だけではなく、本当に自由自在に自己表現できる方だと思いました。さて私は、人の前に立つと『あがる』のです。どうすればいいでしょう。オンラインであっても、対面になると恥ずかしくてたまりません。オンラインの定期会合を一年以上も経験して、やっと慣れてきましたが・・・。」


遊助より

まぁ!大変なお褒めを頂きありがとうございます。人前であがることも、失敗することも当たり前のことなので、「あ、あがっているな」「まあ、失敗してもいいや」と思っているといいかもしれません。

自分では失敗したと思っても、周囲に聞くと「そう?」と返ってくることも多いものです。つまり、他の人はそんなに気にしていないということです。

そして、あがること、失敗することも受け入れてはどうでしょう。「あは、あがっちゃった」「てへ、失敗しちゃった」と笑って許しちゃう。そうすることで、あがることや失敗が小さい事になって、「誰かに何かを伝える」という一番大事なことに集中できるのではないでしょうか。

私も、しょっちゅうあがっていますし、失敗しています。でもほとんど気にしてないので皆さんからはそのように見えないでしょ。

タイ・バンコクの口演にて幽霊を演じる遊助さん。
とてもあがっているようには見えません!
  • 記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。
  • 自治体・企業・人物名は、取材制作時点のものです。

2021年03月19日公開
(2022年07月22日更新)

参遊亭遊助(豆生田信一)さん

公式サイトはこちら

1981年 東京大学経済学部卒、横浜銀行入行。ニューヨーク支店、総合企画部、営業統括部などを経験。
1989年 ミシガン大学MBA取得
2001年 ALSOK入社。タイ現地法人社長、子会社社長など歴任
2014年 三遊亭遊三の実践落語教室入門。2015年1月初高座
2018年 ALSOK退社、落語に専念
現在までに240回以上の高座、100題超の噺を披露。英語落語や、新郎新婦の馴れ初めを語る「なれそめ落語」、故人をしのぶ「想い出落語」など創作にも取り組む。とくに、経営者からのヒアリングをもとに創業物語や企業の歴史を伝える「落語 DE 社史」は豊富なビジネス経験を活かしたオリジナル落語と評判を呼び、日本経済新聞でも紹介された(2021/1/12文化欄)。

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