大好評!元サラリーマン落語家に訊く、テレワークですべらないリモート話術 其の二「Web会議、話に入るタイミングがむずかしい・・・」編

テレワークあるある特別編

  • ワークスタイル

2021年03月02日

  • テレワーク・ハイブリッドワーク

テレワークの働き方が定着しつつある現在、同僚やクライアントとのコミュニケーションの取り方が難しいと感じる方が増えています。とくにテレワークの場合、相手の仕草や場の雰囲気などリアルな状況ならば容易に受け取れる情報が制限されるため、「会話を聞く」ことから得られる情報のみに依存する傾向があるといわれています。

テレワークとコミュニケーションの関係を調査する未来サービス研究所では、同じように会話を主体とした話芸エンターテインメントである落語に注目。37年の会社員生活を経て落語家へ転身した参遊亭遊助さんから、テレワークに使えるリモート話術のコツをお聞きしています。

好評だった前回の「沈黙・雑談編」に続く第二弾。Web会議などでありがちな「話かけるタイミングがとりにくい!」というお悩みを一問一答形式で取り上げました。遊助さんから事前にメールで頂いた回答に、インタビューで「その心は?」とバシバシ突っ込んでいきます!

入室のあいさつ、「どうぞどうぞ」問題...タイミングにまつわるお悩みは多数

<お悩み> Web会議、入室したらすでに上司が盛り上がってる!

「Web会議で早めに入室したつもりだったのですが、中では部長と役員がすでに雑談で盛り上がっていて、下っ端の自分は入室したことを伝えるタイミングがつかめず・・・。リアル会議ならドアを開けた直後に元気よく『お疲れさまです!』と言えば済む状況なのですが、オンラインだと挨拶のタイミングが難しいです。」


遊助から一言 answer

落語には幇間(ほうかん:太鼓持ちの意)というのが出てきますが、これは料亭などでとにかくお客さまにヨイショする仕事です。

例えば、「いよっ!旦那!相変わらず素敵なお召し物で、また新しい羽織をお召しになって、憎いよ!えっ?ずっと前から来ていらっしゃる?・・・見えないねぇ、いえね、あなたなんざぁ、日々生まれ変わったように見栄えが新しくなる、中身が新鮮だとお召し物も新しく見えるってなもんですよ」なんて具合です。

そこで、ここは幇間戦略でいきましょう。

入った途端、上司の雑談が盛り上がっていようがなんであろうが、「遅くなりました~」ととにかく割って入って存在をアピールしてしまう。この瞬間を逃すとあとドンドン入りづらくなりますよ。

「別に遅くないよ、時間前だ」と言われたら、

「上司の貴重なお時間を、無駄にしてしまうとはサラリーマンとしては遅いで~す」とヨイショしてしまいましょう。

その心は? 聞いてみました

未来研:これはまた、上下関係の絡んだサラリーマン度の濃い悩みですね(笑)。リアルな会議では、会議室自体がコミュニケーションしやすい装置になっていたと思います。ノックすればみんなドアの方を見ますし、「上座」「下座」という仕掛けもあります。上座にいる上席は自然とドアを開けた人の顔が見えやすい位置にいるので、挨拶しやすい。

Web会議には入室者の上下関係がわかる仕掛けはありませんし、とくに人数が多いと入ったことすら気づかれないというときもあります。ご回答のように、太鼓持ちになってヨイショすることで、オンライン空間でも上下関係を作るというのは面白い発想かもしれません。実践するには勇気が要りそうですが(笑)。

遊助:やっぱり入った瞬間が最大のチャンスですよね。この時に「入りました」とか「遅くなりました」と言うのがいいんじゃないですか。そこで逃してしまうと言いにくくなりますよ。

未来研:そうはいってもやっぱり、そのタイミングは逃してしまいがちです。そして、ちょっと経ってから気づいてもらい、「あ、○○さんも入ってたのね」声をかけられることがあります。普通に「入ってます」と答えてもいいのですが、なにか気の利いた切り返しのできる一言はないでしょうか。

遊助:「〇〇、降臨してます!」とか。ちょっと難しいかな(笑)。

未来研:自分が入室した時の会話のことに触れるのもいいですね。「△△の話題の頃からいます」といった具合に。どのくらい前から入室していたのか、相手に伝えることもできます。
さらに、そのタイミングが自分についての会話をしている時だったならとくに美味しいです(笑)。

遊助:「あの時から実はいました」「なんだいたのか。言えよ」みたいな感じね(笑)。
あとは、入る前の心づもりは大事かもしれませんね。
すでに中に誰かがいるかもしれないと考えながら入室して、実際に誰かがいた場合は用意しておいた言葉を使う。
その時に言うべき、「言葉の箱」をあらかじめ持っておくと良いでしょう。

未来研:とくにギリギリにWeb会議に入ったときは、既に相手がいらっしゃることが多いですからね。「言葉の箱」肝に銘じます!

<お悩み> 上司のハウリング、誰が指摘する!?

「Web会議が始まって、部長のマイクがずっとハウリングしているときがありました。そんなとき誰が『部長、ハウってますよ!』と口火を切るのか?みんな様子見でタイミングや言い出し方が難しい。」


遊助から一言 answer

落語に出てくる長屋には「月番」ていうのが持ち回りでいましてね。まあ、今でいう町内会の班長さんみたいなもんですよ。この人が町内の細々したことを面倒見るんですが、会議でもあらかじめ月番を決めておくといいんじゃないですか。

ハウリングが起こったときは、月番が「あれ、すいません。私のハウっています。PCおかしいかなぁ、皆さんどうですか?」と自分ごとにして聞いてみましょう。他の人はそれに応えて「あ、私も、私も、僕も、・・」と同調してあげたところで、月番が改めて「部長すいません、みんながハウっているようです。イヤホンをお使いになることはできますか?」

てな感じだと円満に進みませんかね?

その心は? 聞いてみました

未来研:またまた上下関係に関わる質問です。上司の音声がハウっている場合、あとは上司の髪型が変な乱れ方をしている時とか(笑)、どうやって指摘したら良いのやら。

髪型についてはリモハラにつながる恐れがあるので指摘しにくいですが、ハウっていた場合は、誰かが言わざるを得ないですよね。
遊助さんの回答の通り、進行役となる月番の方から言ってもらうというのが一つの方法です。
そして、さらにいいなと思ったのが、自分ごととして伝えるということですね。
「私にはハウって聞こえるんですが」と言うことは、周りに対する気配りになるなと感じました。

遊助:そうなんですよ。
「部長ハウってますよ」と言うと、「お前のせいだぞ」となってしまいかねないですが、「私にはハウって聞こえるんですが」と言って、自分の方がおかしいのかなという言い方にすると、相手も傷付かずにすみます。
さらにそこで、「他の人はどうですか?」と投げかけると、「私も」「私も」「俺も」となって、落語的になるかもしれません(笑)。

未来研:YOU(ユウ)メッセージと I (アイ)メッセージの発想と同じですよね。「あなたが悪い」と言うよりも、「私はあなたの発言で傷つきました」と言うと、相手に柔らかく思いを伝えられる。このハウリングの話も「私は」を主語にするので、同じ手法かなと思いました。
ちなみに、進行役や調整役のことを落語では月番というんですね。

遊助:長屋物の落語では結構出てきますね。
「今月の月番は誰だい?」
「与太郎?」
「与太郎かー?」と言った具合です。
ちなみに与太郎はバカの代名詞みたいなものです。

未来研:与太郎かはともかく(笑)、Web会議では月番的な人が必要ですね。IT業界の人はカタカナが好きなので、すぐにファシリテーターとかモデレーターとかいってしまうんですけど。会議通知のメールに「月番は○○さん」なんて書いておくとちょっと和やかになるかもしれないです。

<お悩み> 発話がかぶる!「どうぞどうぞ」問題

「発話のタイミングがかぶることがよくあります。お互いに『どうぞ』『いいえそちらからどうぞ』となるのですが、『かぶった時の順番はこう決めよう!』みたいなルールを楽しく決められたりしませんか?」


遊助から一言 answer

これもよくありますね~。Web会議の反応マークに「どうぞ・どうぞの銅像マーク」があるといいのかしら(何の解決にもならないか)。

落語には相撲の噺も出てきますが、相撲には行司さんがいますよね。先程の月番が行司を兼ねてもいいかもしれませんね。「山田課長!」とか「鈴木主任!」とか瞬時に軍配を上げて宣言する。部長が「物言い」を付けたりして(笑)。「ただいまの勝負、同時と見てやり直し」とか。

冗談はともかく、進行役など第3者が、田原総一朗さんみたいに瞬時に決めるルールにしてあげるのが、いいんじゃないでしょうか。

その心は? 聞いてみました

未来研:発話がかぶってしまうこと、よくあります。このインタビューでも、すでに何回かかぶっていますが(笑)、Web会議だとこの「どうぞどうぞ」が特に増えますよね。
ルールを決めるほどの問題ではないのかもしれませんが・・・。

遊助:下位者優先にする、というアイデアもありますよね。
「どうぞどうぞ」の際には、立場が下の人は不利じゃないですか。
あえて、下の方を優先する場にしてあげると、新しいアイデアが生まれてくるかもしれません。

未来研:誰と誰がかぶったかわからない場合もありますよね。

遊助:あとオンラインの場合、ネットワークの関係で音声が届くまでわずかなズレもあるので、「どうぞ」という発声自体がかぶったりしますよね。
やっぱり、ここは銅像のマークを作って、銅像マークを先に出した方が発言権を得る方針にした方が良いかもしれません(笑)。

未来研:その銅像マークを出すタイミングがかぶったりして(笑)。

遊助:それを判定する行司が必要かもしれませんね。

参遊亭様インタビュー3
「どうぞどうぞ」問題は奥が深いでごわす・・・

本日の心得

  • 発言のスポットライトが回ってきたときに備え、あらかじめ「言葉の箱」を用意すべし!
  • デリケートな指摘は「自分ごと」にすると柔らかく伝わる。
  • 難しい「どうぞどうぞ」問題、マイクを目下の人に譲ってみては。
  • 記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。
  • 自治体・企業・人物名は、取材制作時点のものです。

2021年03月02日公開
(2021年03月19日更新)

参遊亭遊助(豆生田信一)さん

公式サイトはこちら

1981年 東京大学経済学部卒、横浜銀行入行。ニューヨーク支店、総合企画部、営業統括部などを経験。
1989年 ミシガン大学MBA取得
2001年 ALSOK入社。タイ現地法人社長、子会社社長など歴任
2014年 三遊亭遊三の実践落語教室入門。2015年1月初高座
2018年 ALSOK退社、落語に専念
現在までに240回以上の高座、100題超の噺を披露。英語落語や、新郎新婦の馴れ初めを語る「なれそめ落語」、故人をしのぶ「想い出落語」など創作にも取り組む。とくに、経営者からのヒアリングをもとに創業物語や企業の歴史を伝える「落語 DE 社史」は豊富なビジネス経験を活かしたオリジナル落語と評判を呼び、日本経済新聞でも紹介された(2021/1/12文化欄)。

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