35施設の笑顔をオンラインでつなぐWebコンサートに挑戦! リモート介護最前線レクリエーション編 Part2
【「リモート」から見える未来 】vol.7
- ライフスタイル
2021年01月18日
- 高齢社会
本連載vol.1「オンラインでも利用者様を笑顔にできる!リモート介護最前線」で取り上げた介護施設でのWebコンサート。公開後から大きな反響があり、多くの介護関係者の方がコロナ禍の中でレクリエーションの開催に苦慮していることがわかりました。
この時にご紹介したALSOK介護株式会社様(旧株式会社ウイズネット)が、2020年12月24日にクリスマスコンサートをふたたびZoomで開催しました。しかも参加施設数は、前回の1施設からなんと35施設へと大幅に拡大!
コンサートに招待いただいた未来サービス研究所のメンバーもZoomで参加し、素晴らしい演奏にクリスマス気分を満喫しました。その後、vol.1と同様にコンサートの運営を担当された総務部門の太田さん、情報システム担当の橋本さんに大規模Webコンサート開催のコツについてインタビューしました。
35施設がオンライン参加、聴衆者総数は紀尾井ホール並みの850名!
例年は施設の中に演奏者をお招きしてクリスマスコンサートを開催していました。今年は難しいなと思っていたところに、コンサートの共催でお世話になっている社会保険労務士法人すばる様から、Zoomで開催しないかとのお誘いがありました。
春からすばる様と一緒に取り組んできたWebコンサートは演奏会場と施設を 1:1 でつないだものでしたが、今回は複数の施設が同時に参加する形式に挑戦してみました。
14時からと15時からの二部制にしたのですが、第一部では18施設、第二部では17施設の計35施設が参加しました。参加者はそれぞれ400名ちょっとずつだったので、合計すると約850人になります。企画した当初は10施設くらい参加すればいいかな...と思っていたのですが、予想以上に多くの施設が参加し、関心の高さを感じました。
クリスマスWebコンサートの様子
クイズやリクエストを交え、双方向性のあるプログラムに工夫
演奏された雅カルテットさまは、当施設以外にもWebコンサートの経験を積まれておりオンライン配信に適した演奏スタジオの大きさやカメラの設置方法など、工夫を重ねられています。ですので、今回のWebコンサートでも前回以上にクオリティーの高い演奏をしていただきました。
プログラムの編成という面では、前回のコンサートでは施設と演奏会場が 1:1 の関係だったので、施設側がミュートを外して曲のリクエストをするなど双方向のコミュニケーションが可能でした。しかし今回は複数の施設が対象なので個別のやり取りは難しく、どのように双方向性を持たせるかスタッフで打ち合わせをしながらアイデアを考えました。
まず、演奏の合間に音楽に関する○×クイズのコーナーを設けました。演奏会場側からクイズを出し、各施設のスタッフが参加者の答えを取りまとめて画面に向かって手で「〇」のジェスチャーをするなどの回答をするようにしました。
演奏してほしい曲のリクエストも、あらかじめ候補として3曲を選んでおき、この中から各施設が一番演奏してほしい曲を選択し、多数決で決定するようにしました。この取り組みは各施設から好評で、たとえ自分たちの施設のリクエストとは異なる曲が選ばれたとしても、リクエストに参加することで楽しい体験ができたとの声を頂きました。
施設ごとに挙手やジェスチャーで演奏曲をリクエスト!

コンサートは50分編成にしたのですが、双方向性に力を入れたので、演奏曲数が絞られてしまい、クリスマスソングをもっと聞きたかったという意見も出ました。もっと時間を長くすることも考えられますが、これ以上長くすると要介護度の高い方は疲れてしまうのではないかという懸念もあり、難しいところです。
Zoomの操作面では、各施設はスムーズにいきましたか?
ふだんからZoomの使用に慣れている施設かどうかでコンサートのスムーズな視聴や双方向感の体験に差が出たと感じます。Zoomには入れたがテレビから音が出ない、カメラのアングルがうまくいかず自分たちの顔がうまく写らない、などの問い合わせがありました。
いっぽうで、ギャラリービューで他の施設の様子が見られて楽しかった、という感想もありました。ふだんは利用者様が他の施設の様子を見る機会は少ないので、新鮮な体験だったようです。

ミュートの状態でも聴衆の盛り上がりを演奏者側に伝えるため、前回のコンサートで活躍したポンポンに加えて、団扇や風船を用意したり、職員がサンタクロースの扮装をしたりするなど各施設が工夫をしてくれました。今回はコンサート開催の告知から開催までの期間が短かったのですが、もう少し早い段階で告知をしていたら、さらに色々とコンサートを盛り上げる仕掛けを各施設が考える時間が取れたかもしれません。
なお、今回参加したすべての施設にWi-Fiが入っているわけではありません。Wi-Fiがない施設は、インターネットが接続されている事務室から会場まで長い有線ケーブルを引っ張って視聴しました。PCが事務所から動かせないのでHDMIケーブルを引っ張りテレビとつないだ施設もありました。こうした通信面でも各施設独自の工夫をしていただいたので、かならずしもWi-Fi環境が整っていなくでもオンラインでのイベントは可能であることが分かりました。
接続トラブル等を想定した事前準備が今後の課題
加えて、二回目の入室承認が予定時刻より遅れているという事態を各施設に伝達するのにも手間取りました。電話対応では追い付かなかったので、業務用SNSで一斉配信するなど、不測の事態を想定した緊急連絡手段の準備も必要だったと思います。

リモート介護のポイント ~大規模レクリエーション編
①参加型のプログラムと役割分担
大規模なWebコンサートになると複数の施設と個別のやり取りをすることは難しくなりますが、「参加型」のプログラムを意識することで双方向感のあるプログラムになります。
筆者がコンサートを視聴しているさいも、○×クイズや曲のリクエストに参加者の皆さんが楽しんでいる様子が伝わってきました。
またこの場合、施設側に演奏会場からの呼びかけに答え、クイズやリクエストの回答をとりまとめる担当者が必要になります。同時にZoomの接続状況確認や操作(ギャラリービューへの切り替えなど)を担当するスタッフも欠かせません。施設側の準備として、この2つの役割は別々の方が担当したほうがよりスムーズな進行になると感じました。
②事前の接続確認と緊急連絡手段の確保
全体運営を担当された太田さんと橋本さんからは、「本番直前の接続テストでは時間が足りなくなったので、事前のテストが必要だった」との意見がありました。また、接続トラブルが発生していることを各施設に伝える緊急連絡では、電話を使うと時間がかかってしまったそうです。
私たち未来サービス研究所でも、異業種ワークショップなどで多くの方にオンラインで参加して頂くことがありますが、やはり接続トラブル対策と、接続できない時の緊急連絡手段の確保が課題になります。オンラインイベント共通の課題とも言えますが、事前に接続マニュアルやFAQを配布しておく、緊急連絡手段にはメールやSNSの一斉配信等を活用する、などの準備を念入りにしておくことがポイントになりそうです。
コロナ禍で社会不安が続く現在、誰もが笑顔になれるレクリエーションの重要性はますます高まっています。多くの施設が、それぞれの知恵と工夫でICTを活用しレクリエーションを楽しむALSOK介護株式会社様のような取り組みがますます広がることを願っています!
(インタビュアー:未来サービス研究所 八巻)
関連サイト
「リモート」から見える未来
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2021年01月18日公開
(2022年01月19日更新)

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