いつでも、どこでも、だれでもコンセント無しで電源を利用できる未来!ワイヤレス給電とブロックチェーンが創る新しい暮らしとは?(後編)

【エネルギー×ITが創る未来 vol.3】

未来飛考地図
MIRAI SERVICE - Future Service Laboratory

2020年5月7日公開

ワイヤレス給電技術を用いてコップやお皿を送電部内蔵のテーブルやキッチンに置くと、保温や加熱ができ、回転させると温度調整ができる。そんな新しい暮らしを作ろうとしているスタートアップ企業があります。ワイヤレス給電システム「POWER SPOT」を開発する株式会社ベルデザインです。同社では、身の回りのモノにワイヤレス給電を搭載し、暮らしがより豊かになるような製品、サービス開発に取り組んでいます。
また、仮想通貨などで利用されているブロックチェーン技術をワイヤレス給電システムに活用することで、ワイヤレス給電のビジネス化が加速することが期待されます。

「エネルギー×ITが創る未来 vol.3」では、未来研・金森研究員がPOWER SPOTを開発する株式会社ベルデザイン 代表取締役CEO 鈴木健一郎氏と、エネルギーデジタル化やブロックチェーンにご見識の深い一般社団法人エネルギー情報センター 理事 江田健二氏のお二人にお会いし、ワイヤレス給電とブロックチェーンが創る未来についてお話をうかがいました。


後編ではワイヤレス給電が日本のモノ作り社会に与える影響についてご紹介します。

<前編記事><中編記事>

鈴木 健一郎(すずき けんいちろう)

鈴木社長プロフィール写真株式会社ベルニクス 代表取締役社長
株式会社ベルデザイン 代表取締役CEO

半導体商社トーメンエレクトロニクス(現 ネクスティエレクトロニクス)勤務後、1999年に電源メーカーであるベルニクスに入社。ビジネス戦略室室長、常務取締役を経て2016年代表取締役社長に就任する。

2019年1月にベルニクス社内ベンチャーとしてベルデザインを設立。生活用品・家電に関わる様々な事業者の連携を促進し、ワイヤレス給電が創る新しいライフスタイルの提案に取り組む。

江田 健二(えだ けんじ)

一般社団法人エネルギー情報センター 理事、RAUL株式会社 代表取締役社長

江田氏プロフィール写真

アンダーセンコンサルティング(現 アクセンチュア)のエネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社や大手化学メーカーのコンサルティングに従事する。
2005年にエネルギーデジタル化や環境経営を支援するRAUL株式会社を設立。エネルギー関連の情報提供を行う一般社団法人エネルギー情報センター 理事に着任。エネルギーデジタル化に関連する市場活性化や新ビジネス創造を目指し執筆・講演活動を行う。

主な著書
 「エネルギーデジタル化の未来」
                      「ブロックチェーン×エネルギービジネス」など多数

ワイヤレス給電が社会を変える!日本の中小モノ作りの再活性化へ

江田 POWER SPOTは今のライフスタイルやビジネス環境に合った戦略がしっかりと構築されていると感じました。ここまでくるにはかなり紆余曲折があったのではないでしょうか? 

鈴木 製品化まで4年ほど検討を重ねました。ただ給電するだけでは、すぐに中国など諸外国に真似されてしまいます。ケーブルから解放された機器の新たな使用感、操作感、所有感などを考え、新たなライフスタイルを想像し、POWER SPOTが生まれました。

金森 規格化は考えておられますか?

鈴木 規格化に時間をかけるよりも、まずは普及させてデファクトスタンダードにしたほうが良いと考えています。近年では新しいイノベーションは海外から入ってくることが増えていますが、異業種にわたってワイヤレス給電に取り組んでいる国はまだ無いと思います。我々が迅速に製品を作り、世界に先駆けてワイヤレス給電を取り入れたライフスタイルを提案していきます。

ただのモノ売りでなく、異業種が連携しデータ活用や電気の売り方などを組み入れたビジネススキームを作っていきますから、海外企業が後発で安価なものを出してきても簡単に取って代わることはできません。価格で競うのではなく、新しいライフスタイルを創ることで日本のモノ作りを再活性していきたいと思っています。

金森 様々な事業者が連携し、ライフスタイルにワイヤレス給電を組み入れていくことで模倣されづらいモノ作りが可能になるんですね。

鈴木 資源が乏しい日本でモノ作りは非常に重要だと感じています。モノ作り大国日本というと既に懐かしい響きはありますが、日本には今でも世界に誇れる優れたモノ作り技術を持つ中小企業が数多くあります。

ベルニクスをはじめ大手企業の下請けをやってきた中小企業の多くは、今後の方向性に悩みを抱えています。後継者問題もありますし、資金が乏しく新しいチャレンジもしづらい。しかし、ハードが無いとIoTデータも取れませんし、本当の意味でのイノベーションは起こりえません。

日本のモノ作りを廃れさせないためにも、中小モノ作り企業が新しいことにチャレンジしていく土壌が必要だと思いますし、当社のワイヤレス給電技術の提供が各社の新しいチャレンジを促進していけたらと思っています。

江田 基板が既に提供されるわけですから、製品ラインナップを簡単に増やしたりと、新しい取り組みを促進してくれそうです。

鈴木 我々は「ワイヤレス給電でライフスタイルをデザインする」という視点を取り入れ、POWER SPOTのコンセプトを構築しました。日本にはたくさんのデザイナーがいて活躍の場を探しています。彼らはモノ作りとは異なる感受性で世界の出来事やライフスタイルをみて、未来の社会を思い描いています。デザイナーと中小モノ作り企業が出会うことで新しいイノベーションが促進されるのではと考えています。

江田 POWER SPOTをみて、一目で「かっこいいな!」と思いました。どうしてこういうものを作ることができたのかと興味がありましたがデザインにその答えがあったのですね。

鈴木 日本は大衆に受ける製品を作り大量生産で価格を下げていこうと考えがちです。しかし、大衆に受けるかは後からついてくるもので、まずは世の中の動きに敏感なイノベーターに刺さる製品を作ることが大切だとデザインの視点を取り入れて気づきました。

イノベーターはアンテナが高く、中途半端な製品では彼らには刺さりません。クラフトマンシップや、これは自分のためのものだなという所有感を感じられるものである必要があります。MUGの限定モデルでは、かつて零戦のプロペラに使われていた日本の伝統木材加工技術を用いています。このような日本の伝統技術と新しいテクノロジーを組み合わせてモノ作りに興味のあるイノベーターに提供していきます。

金森 ワイヤレス給電、ブロックチェーンを活用することで社会の在り方や私たちの暮らしも大きく変わっていきそうですね。

江田 僕はエネルギーが「いつでも、どこでも、好きなだけ」使える社会になることが重要だと思っていますし、再エネのコスト低下も進み、そのような社会に近づいていると感じています。本日鈴木社長とお話しし、ワイヤレス給電とブロックチェーンを使うことでそのような社会がより便利な形で実現していくのだろうと感じました。

鈴木 総務省の電波有効利用成長戦略懇談会成長戦略WGでもワイヤレス給電技術が期待されており、2030年までにフルワイヤレス、2040年までにバッテリーレスを実現する社会について議論されています。将来的には電波のように電気が空中を飛び交う時代が来るでしょう。

そのような中で我々が目指すのは、100年間コンセントやケーブルに縛られてきた世界から解放し、ライフスタイルをイノベーションしながら、日本のモノ作りに貢献していくことです。そのための最初の足がかりとして、身の回りのモノをワイヤレス給電化する「POWER SPOT」に取り組んでいきます。


POWER SPOTに集まっての記念撮影

POWER SPOTに集まっての記念撮影

インタビューを終えて

新しい技術を社会に実装する際に、それが暮らしの中のちょっとした困りごとをどのように解決できるのか、暮らしを楽しく快適にできるか、共に取り組むステークホルダーの課題を解決できるのか・・。技術が生み出す価値を真摯に考えていくことが、既にモノにあふれた社会で新しいサービスを生み出すために必要なことなのだと感じました。未来サービス研究所の研究活動でもそのような視点を大切にしていきたいと思います。               

未来サービス研究所 金森

【エネルギー×ITが創る未来】について

エネルギーにまつわる市場環境は、今大きな変革のときを迎えています。
「エネルギー×ITが創る未来」では、ユニアデックス未来サービス研究所員がエネルギー分野で先進的な取組みをする専門家にインタビューし、エネルギーとITの革新によってどのように社会やくらしが変わっていくのか、未来のきざしを探っていきます。

<バックナンバー>

【vol.3】いつでも、どこでも、だれでもコンセント無しで電源を利用できる未来!ワイヤレス給電とブロックチェーンが創る新しい暮らしとは?(前編)(中編)(後編)

【vol.2】道路が発電所に!太陽光発電舗装が創る世界初のサステナブルなMaaS社会

【vol.1】安価な革新的二次電池が創る「誰でもエネルギーにアクセスできる社会」

【関連サイト】

株式会社ベルデザイン

株式会社ベルニクス

一般社団法人エネルギー情報センター

RAUL株式会社


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※自治体・企業・人物名は、取材制作時点のものです。


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2020年05月07日公開
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