道路が発電所に!太陽光発電舗装が創る世界初のサステナブルなMaaS社会

【エネルギー×ITが創る未来 vol.2】

  • 環境

2020年02月18日

  • カーボンニュートラル

太陽光発電というと住宅の屋根に設置されたものや、広大な土地にパネルが敷き詰められたメガソーラーを思い浮かべます。太陽光発電を設置しようとすると、面積が必要です。国土の限られる日本にもっともっとたくさんの太陽光発電をつけようとすると、他にはどんな場所に設置できるでしょうか?

「エネルギー×ITが創る未来 vol.2」では、道路に太陽光発電を設置することを目指し、発電舗装「Solar Mobiway」の開発、実用化を進めておられるMIRAI-LABO代表取締役 平塚利男氏に、同社の取り組みとSolar Mobiwayが創る社会についてお話をうかがいました。

時代の一歩先を見据える環境貢献企業

突然ですが私たち未来サービス研究所は略して「未来研」と呼ばれています。
「MIRAI-LABO」と「未来研」って似ていますね!

そうですね!当社は2006年に設立しました。創業当初の社名は未来環境開発研究所株式会社でしたが、英語表記が長すぎるということで、2015年にそれまでロゴとして使っていたMIRAI-LABOに変更しました。社名は変わりましたが、事業内容は創業当初から変わらずCO2削減に取組んでいます。

創業から15年、一貫して環境の未来に向けた製品やソリューション開発に取り組んでおられるのですね。創業前からCO2削減について注目しておられたのでしょうか?

最近は自然災害も増加し地球温暖化の影響を体感できるようになってしまいましたが、私は25~26年ほど前からCO2削減に取り組まないと世の中が成り立たなくなっていくだろうと感じていました。創業前から人が集まる場所でそのような話をしていましたが、当時は全く世の中に受け入れられませんでした。
創業と同時期に京都議定書の発効やアル・ゴア元米副大統領による「不都合な真実」の公開があり、徐々にCO2削減の重要性が認知されていきました。

世の中の動きの一歩先を見据えての創業だったのですね。
創業当初は蛍の再生事業をされていたそうですね。

環境が汚染されていなくなってしまった蛍を人間の技術で自生させるというものです。蛍がいることが街おこしにつながり、夜に人が集まるようになります。そうすると街路灯が増えるのですが、紫外線の多い水銀灯では蛍が集まって飛び回り、疲れて死滅してしまうのです。そのため紫外線の少ない照明器具を開発しました。光をコントロールする技術を開発し、特許を取得しています。
この照明技術をもとに当社が現在扱っている発電機不要の充電式特殊LED投光器「X-teraso」やEVのリユースバッテリーを使用した独立電源街路灯「THE REBORN LIGHT」などを開発しました。これらの知見を活かして開発したのが発電舗装「Solar Mobiway」です。

平塚社長の左にある照明器具が充電式特殊LED投光器「X-teraso」です。2019年の台風15号による千葉県の停電時にJRの駅舎を照らしたり、東京警視庁の機動隊で捜索時に利用されたりと、広く活躍しています!写真では三脚に載せていますが、約5kgと軽量で背負って利用できるそうです。同社の特許技術で背負っても影なく遠方まで投影できます。

写真:平塚社長と充電式特殊LED投光器「X-teraso」

20トンの重さでたわんでも元通り!高耐久性の太陽光発電舗装

貴社が開発する発電舗装「Solar Mobiway」とはどのようなものでしょうか?

太陽光発電を組み込んだ舗装材です。これにより道路が発電所になります。
世界各国でも同様の製品が開発されていますが、道路ですからトラックの重さにも耐える必要があり、耐久性が課題となっています。当社では、ひずみ追従性のある樹脂を開発し、発電舗装の表面に利用しています。これにより重さでたわんでも柔軟に元の形状に戻ります。
太陽光パネルの素材も一般的な結晶シリコンではなく、薄くて柔軟性のあるアモルファスシリコンを利用しています。柔軟性に加えて日陰や悪天候時でも発電しやすいというメリットがあります。

いつ頃実用化される予定ですか?

2022年の実用化を目指しています。開発自体は12年ほど前から行っており、2年前から実用化に向けて道路舗装最大手のNIPPOとさまざまな性能試験を行っています。既にいくつかの耐久性試験をクリアし、現在は実際の路面に設置して試験を行っています。

太陽光発電というと屋根の上や遊休地への設置が中心です。なぜ道路に着目されたのでしょうか?

太陽光発電を普及させるための施策として日本では固定価格買取制度(FIT)が施行されました。これにより太陽光発電は投資商品となりました。FITはビジネスライクな普及の仕組みで、発電した電力を電力会社が買い取ることで、発電事業者は利益が得られます。そのため、土地の所有者は森林を伐採して太陽光発電を設置するようになりました。
本来CO2を削減するための太陽光発電のはずが、CO2を吸収する森林を無くして太陽光発電を設置していては本末転倒だと感じています。森林が無くなることで山が水を吸収しなくなるため、大雨が降るとがけ崩れが起こりやすくなります。
そこで道路に着目しました。道路は経済発展と共にどんどん開発されていくものです。太陽光発電を設置するためにわざわざ土地を切り開く必要がありません。

道路であれば環境を壊すことなく太陽光発電を設置できるのですね。
それにしても道路が太陽光発電に進化するとは驚きです!

日本の道路舗装、アスファルトは平坦性が高く耐久性も十分で、世界でもトップクラスの高い技術力を誇ります。近年ではもうこれ以上の進化はない、というところまで来ていました。そのため、進化せずに定期的に道路を補修して張り替える、ということを繰り返しています。道路の補修にも毎年多くの予算がかかっています。そんな道路で今度は電気を生みだすことができればよいと考えました。

道路は日本中に続いていますから、たくさん発電できそうですね。

当社で試算を行ったところ、日本の国道、高速道路の面積は5,367km2です。その半分を発電舗装にすると、日本の電力量の16.5%を賄うことができます。国道、高速道路に都道府県道、市区町村道、私有地、駐車場などを加えれば10倍ほどの面積になりますから、道路での発電だけで日本の電力量を賄えるポテンシャルがあるのです。

写真:平塚社長が紹介する太陽光発電舗装「Solar Mobiway」

こちらが太陽光発電舗装「Solar Mobiway」です。半透明の樹脂の下に太陽光パネルが組み込まれています。青いLEDはSolar Mobiwayで発電した電気で点灯しています。万一故障した際には点灯が消えて故障が一目でわかる仕組みです。

AIR:Autonomous Intelligent Road(自律型知的道路)でMaaS社会に貢献

道路で発電した電力はどのように利用されるのでしょうか?

まずは日中蓄電池に貯め、夜間に街路灯や道路標示版などに利用することを想定しています。
将来的には走行中のEVへの無線給電や近隣の施設、住宅等への電力供給を考えています。
発電する場所と電力を利用する場所が近い「電力の地産地消」が可能になるため、送電ロスも最小限にすることができます。
さらに、Solar Mobiwayにセンサーなどを搭載した「オートノマス・インテリジェント・ロード」を開発し、そこに電力を供給していくことを考えています。

「オートノマス・インテリジェント・ロード」とはどのようなものでしょうか?

現在、世界各国で自動運転車の開発が積極的に行われていますが、本当に安全に自動運転車を走らせるためには自動車だけが賢くなるのではなく、道路側からも道路周辺の状況を自動車に知らせていく必要があると考えています。オートノマス・インテリジェント・ロードでは、Solar Mobiwayにセンサーやカメラを埋め込み、道路周辺の状況を自動車に発信します。
それらの稼働や通信に必要な電力もSolar Mobiway自身がまかないます。停電などの不測の事態が発生した際に情報が送れなくなれば事故につながるおそれもあります。いつでも安全に自動運転車が走行できる社会にするためには、道路交通網に関わる電力を自立させ停電させないことが重要です。
このコンセプトは海外からも注目を集めており、現在ベトナムのスマートシティーに導入できないか検討を進めています。

MaaS社会実現の鍵をSolar Mobiwayが担っているというわけですね。
発電した電力をさまざまな箇所で供給していくということは、道路管理者が電力会社になっていくのでしょうか?

そうですね。Solar Mobiwayにより、開発済みの道路を収益源とすることができます。
どのような枠組みでビジネス展開していくかは、現在検討を進めています。道路管理者や電力会社、通信会社、IT企業などさまざまな事業者と連携し、持続可能なビジネススキームを構築していきたいと考えています。

現在、橋梁などの道路インフラの老朽化が課題になるなかで、地方自治体では維持管理の予算捻出が課題になっていると聞きます。道路の維持管理に必要な費用を道路からの発電で捻出できたら素晴らしいですね!

そうですね。電力の供給先の多様化やセンシング機能の高機能化などにより、道路にさまざまな付加価値を付けていくことができると考えています。そのために複数の事業者との実証事業も展開しています。

Solar Mobiwayの実現でわたしたちの暮らしにも変化はあるでしょうか?

近年自然災害の増加により停電が増加しています。2019年には千葉県で大規模な停電が発生しましたし、今後も災害が増えていくことが予想されます。
Solar Mobiwayにより地産地消の独立した電力システムが実現することで、災害に強く停電しづらい社会を実現できると考えています。どんなときでも電力を利用できる安全安心な暮らしを提供していきます。

それは心強いです!
2022年の実現に向けて課題となっていることはありますか?

路面発電というのは世界中でどこも実現できていない新しい取り組みです。実現のためには法律改正などさまざまな調整が必要になってくるでしょう。担当省庁も国土交通省、総務省、経済産業省と複数にわたります。各省庁に積極的に連携していただけるよう、Solar Mobiwayの魅力を社会に広く知ってもらい、多くの方の力を借りながら実用化に向けて動いていきたいと考えています。

5年後10年後にSolar Mobiwayを実現させ、どのような社会を創っていかれたいとお考えですか?

当社の事業は一貫してCO2削減、省エネです。近年、サステナブルな社会が目指されていますが、当社の技術でサステナブルな社会が1年ごとに近づいてきている、実現に向かっていると実感できるよう取り組んでいます。
私が子どものころは川の水をそのまま飲んでいました。蛍が再生できたように、川の水もまたそのまま飲める社会に近づけていきたいですね。

インタビューを終えて

早くからCO2削減の重要性に気づき、それを実現するため独自性の高いソリューションを世に送り出してきた平塚社長の世の中の動きを読む力や実行力に圧倒的にされながらのインタビューでした。「日々の少し気になったこと、わだかまりを気に留める習慣をつけることで、次の世の中に必要なものが見えてくる」とのアドバイスをいただきました。実践していきたいと思います!

未来サービス研究所 金森

【エネルギー×ITが創る未来】について

エネルギーにまつわる市場環境は、今大きな変革のときを迎えています。

「エネルギー×ITが創る未来」では、ユニアデックス未来サービス研究所員がエネルギー分野で先進的な取組みをする専門家にインタビューし、エネルギーとITの革新によってどのように社会やくらしが変わっていくのか、未来のきざしを探っていきます。

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【vol.3】いつでも、どこでも、だれでもコンセント無しで電源を利用できる未来!ワイヤレス給電とブロックチェーンが創る新しい暮らしとは?(前編)(中編)(後編)

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  • 記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。
  • 自治体・企業・人物名は、取材制作時点のものです。

2020年02月18日公開
(2020年05月07日更新)

平塚 利男(ひらつか としお)

MIRAI-LABO株式会社 代表取締役

CO2削減に資する事業を行う会社として2006年にMIRAI-LABOを創業する。
創業時は蛍の再生事業を主事業とし、水の循環システムや紫外線の少ない街路灯の開発を行う。省エネ技術の提供を通し100年後を見据えた地球環境づくりに貢献することをコンセプトに、独立電源型照明、バッテリー、太陽光発電舗装などさまざまな省エネソリューションの開発、販売を行う。高い技術力や独創的な製品開発力が評価され、中小企業長官賞(2017年、2018年)東京都ベンチャー技術特別賞(2018年)などを受賞。

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