オンラインでも利用者様を笑顔にできる!リモート介護最前線 ~レクリエーション編

【「リモート」から見える未来 】vol.1

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MIRAI SERVICE - Future Service Laboratory

2020年6月1日公開

新型コロナウイルスを契機として、これまで「対面」が前提だったビジネスや人々の行動を、「リモート」「遠隔」「オンライン」といったキーワードに代表される「非対面」へ置き換えようとする試みが加速しています。

我々未来サービス研究所では、これまでもテレワークに関する情報発信などを通じ、リモート化する社会とITのかかわりについて調査研究を続けてきました。この連載では、コロナと共存していくニューノーマル時代を考えるヒントとして、さまざまな業界やビジネスにおけるリモート化の動きを紹介していきます。

第一回目は、リモート対応が難しいと思われがちな介護業界を取り上げます。

リモート介護でも「笑顔の好循環」を ~ウイズネット社の取り組み

要介護高齢者の生活基盤を支える介護サービスは、新型コロナウイルスが猛威を振るうさなかでも業務継続が欠かせないエッセンシャルワークの一つです。さらに、感染すると重症化リスクの高い高齢者へのサービスであることから、スタッフの皆さんは感染対策に大変気を遣っています。施設・備品の消毒やスタッフの体調管理徹底はもちろん、老人ホームなどの高齢者施設では外部との接触を最小限にとどめるため、家族との面会制限やゲストを招くレクリエーション等を控える傾向にあります。

しかし、貴重な交流の機会を閉ざしてしまうと施設入居者のQOLが低下しかねませんし、面会を希望する家族からも「何とかならないのか」という声が上がっています。

こうした事態を打開すべく、ITを活用して「施設への外部者の入館を最小限にとどめつつサービス品質を維持する」取り組みをいち早く始めたのが、関東地方を拠点とし、約150カ所のグループホームや有料老人ホームを展開する(株)ウイズネット(現:ALSOK介護株式会社)様※です。

ウイズネット社は「笑顔の好循環」をモットーとし、サービスの利用者、家族、スタッフ全員が笑顔になれる介護を目指しています。

多くの制限や困難を乗り越え、「笑顔の好循環」をオンラインで実現しているリモート介護の最前線について、オンラインで開催されたWebコンサート【レクリエーション編】、施設入居者と家族の遠隔面会・遠隔施設見学【面会・見学編】の2回に分けて紹介します。

ZOOMで双方向のWebコンサートを実現!

2020年4月22 日、インターネットを活用した双方向コミュニケーション型Webコンサート「あるぽぽコンサート~日本の心 春の歌~」がウイズネット施設内で開催されました。この情報をプレスリリースからキャッチした未来研はさっそくウイズネット社へコンタクト。コンサートの運営を担当された総務部門の太田さんに電話でお話を伺いました。

まず本企画の背景について教えてください。

施設入居者の皆様に本格的なレクリエーションを楽しんでいただきたく、これまでもコンサートやイベントなど外部の方をお招きする機会を積極的に設けてきました。今回演奏してくださったのも、過去にお世話になったプロのヴァイオリストとチェリストの姉妹の方です。

もともと4月に施設内でコンサートを開催する予定で話を進めていたのですが、コロナの影響から雲行きがどんどん微妙に...。中止も考えましたが、「遠隔でもできるのでは?」と演者サイドから提案があったことあり、初めての試みですが思い切ってやってみることにしました。

Web配信はどのようにされたのでしょうか?

ZOOMを使い、施設のテレビとPCをつないで映像と音声を投影させました。会場は東京都荒川区にある認知症の方が入居されるグループホームと有料老人ホームを持つ複合型の大型施設で、多くの入居者様がいらっしゃいます。3密を回避したいということもあり、グループホームで1回、有料老人ホームで2回の計三回に演奏会を分け、参加者数を分散させました。それぞれフロアが違いますし、大型TVやPCの数も限られるので、一回ごとにテレビとPCを移動させて行いました。通信はWi-Fiが完備されており、とくに問題はなかったです。音声もテレビのスピーカーで問題はありませんでした。
今回は初めての試みということもあり、機器間の接続やZOOMの操作には本社のシステム部門のスタッフが立ち会いました。またコンサートは社会保険労務士法人すばる様の社会貢献事業としての共催だったのですが、すばる様のスタッフがZOOMの操作に慣れているので、細かい設定を支援して頂きとても助かりました。

双方向性を高めるには「参加型」がカギ

実行にあたり、大変だったことはありますか?

演奏本番日の前に一回、オンラインリハーサルと打ち合わせを実施しました。初のWebコンサートですので、施設の入居者様がどういう反応をしそうか事前に確かめておいたほうがよいだろうということで綿密に打合せをしました。

まずスタジオから配信されるリハーサル演奏を、食堂にあるテレビから入居者様に聴いていただきました。するとご高齢の皆様にはWeb配信という感覚がないので、普段のテレビを見ているのと同じで、じーっと静かに見入ってしまうんですよね。

「これでは録画のテレビ視聴と変わらない!双方向ならではの良さをどうわかってもらえるか?」という工夫案をスタッフ・演奏者で話し合いました。

双方向性を高めるため、当初に予定していた曲目等のプログラムを再度練り直しました。聴衆と演者が同じ空間を共有するコンサートでは「聴かせる音楽」でいいと思うのですが、今回のようなWebコンサートだと「参加型の音楽」のほうが向いています。

まずオープニング曲に「オーシャンゼリゼ」を聴いた後、施設で毎日実施しており馴染みのあるオリジナル体操を演奏し、音楽に合わせて体を動かしてリラックスするところから始めることにしました。

もう一つ、選曲に参加者からのリクエスト方式を採用しました。参加者にとって親しみやすく一緒に歌える日本の歌中心に曲目を選定し、本番では画面に映し出されたリストの中から、参加者が一緒に歌いたい曲をリクエストする方式にしました。

これらを通じて、参加された皆さんにも単なる「テレビのコンサート」ではなく「テレビと会話できる=双方向できるコンサート」であることがわかり、とても喜んで頂きました。

演奏者の方から、感想などはありましたか。

双方向性の大切さは、演奏者の方にとっても同じです。演奏中は、施設側の音声をミュートにしますので、演者にとっては聴衆の反応がリアルタイムにわからないという課題がわかりました。手拍子や拍手も聞こえませんし、せっかくリクエスト方式にして参加者が演奏に合わせて歌えるようにしたのに、その歌声が演奏側には聞こえないわけです。

「参加者の反応を効果的に演奏側に伝える方法はないか?」ということで、運動会の応援などに使うポンポンを活用することにしました。拍手の代わりに思い切りポンポンをふったり、歌いながら大きく揺らしたり。

カラフルなポンポンの活用で、コンサートの盛り上がりが演者にも伝わった

ナイスアイデアですね!プレスリリースの写真を拝見した時「どうしてポンポンを持っているのかな?」と不思議に思ったのですが、そういう理由だったのですね。

あのカラフルなポンポンがあったからこそ、演奏者側に反応が伝わってコンサートを盛り上がる起爆剤になったと思います。ちなみにポンポンは、参加者の皆さんでコンサートの数日前にレクリエーションの時間を活用して作成していだたきました。結果的にレクリエーションのメニューも増えて一石二鳥でした(笑)

また演奏者の方も、リモートという状況でも聞き取りやすい音域やテンポを工夫されたそうで、プロフェッショナルな対応に感動しました。

参加者の方からの感想はいかがでしょう。

「こんな経験は初めてよ~」「とても楽しかったわ」「また是非やってほしい!」など予想以上に大好評でした!演奏の素晴らしさはもちろんですが、双方向で「テレビのほうから人が話しかけてくる」という体験もご高齢の皆様には新鮮だったようです。

今回のコンサートで手応えを感じたので、別の施設での開催もすでに決まりました。

(筆者注:その後、5月に横浜市内施設で第二回あるぽぽWebコンサート、6月にさいたま市内施設で第三回あるぽぽWebコンサートを開催されました。)

リモートでできるレクリエーションはもっとある

取り組みを終えて、リモートならではの良さと、逆に課題があれば教えて下さい。

新型コロナウイルスの影響は当分続きそうなので、外部の方をお招きする施設のレクリエーションが難しい状況は、すぐには解消されないでしょう。しかしITを活用することで、外部と連携しながら続けられる活動は今回のコンサートに限らず多いのではと感じています。

そのためには、ITへの苦手意識を克服することが大事だと今回の取り組みを通じて感じました。介護スタッフにはまだまだITに対する苦手意識を持つものも少なくなく、かくいう私自身も、これまではどちらかといえばITを避けて生きてきました()。しかし実際に触れてみると、意外と使いやすいということもわかりました。

また費用の関係から、施設に配備されているPCやモバイルなどのIT機器が少ないことも課題だと感じています。多くの職員が日常的にIT機器を操作する機会が増えることで、苦手意識は自然となくなっていくのではないでしょうか。

ーありがとうございました!

リモート介護のポイント ~レクリエーション編

介護サービスのスタッフは、食事や入浴の介助等に代表される身体的介護だけではなく、より充実した生活を支援するレクリエーションなどの活動もとても大切にしています。今回の事例を通じ、ITを活用したリモートでのレクリエーションを成功させるには以下のコツがあるのではないかと感じました。

①リアクションをわかりやすく示すしかけづくり

演奏という演者からの「投げかけ」に対する感動の拍手、歌声などの「リアクション」をどう相手側に伝えるか。マイクをやみくもにONにすると雑音やハウリングの懸念もあり、難しい問題です。実はこれはビジネスシーンにおいても同様で、Web会議の際、発言に対する参加者のリアクションがつかみにくいという意見はよく聞きます。

今回のコンサートで活躍したカラフルなポンポンのように、音声に頼らずビジュアルを活用したリアクションは効果的だと思いました。

②忙しいスタッフでもストレスなく使えるUI/UX

介護業界のIT浸透度は他の業界と比較して高いとは言えず、スタッフの方々がリテラシーを習得する機会も少なくなっています。しかも慢性的な人手不足のため、現場は常に多忙です。そんなスタッフが抵抗なく簡単に使えるUI/UXのデザインが求められています。

次回は介護施設入居者と家族の面会、入居希望者の施設見学のリモート事例を取り上げます。
オンラインでも利用者様を笑顔にできる!リモート介護最前線 ~面会・見学編

【関連サイト】

ALSOK介護株式会社(株式会社ウイズネット)

※ウイズネットの親会社であるALSOKが、グループ介護事業会社4社を2020年10月1日に統合すると発表。これに先立ち、存続会社であるウイズネットは6月18日付で商号変更を行い、ALSOK介護株式会社となりました。

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※自治体・企業・人物名は、取材制作時点のものです。


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2020年06月01日公開
(2020年07月01日更新)
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