アイデアにまつわる「酸っぱい体験」をシェアしよう

【未来研アイデアよもやま話 vol.6】

  • アイデア発想

2023年07月31日

  • ソリューション

脚本家のジュリア・キャメロンが書いた『ずっとやりたかったことをやりなさい』という本があります1
この本では一般の人のための創造性を高めるコツが紹介されています。
本のなかで特に強調されているのは「自分のアイデアを否定された体験を払拭すること」の重要性についてです。

子どもの頃、自分の考えや将来の夢を親や先生や友達に否定された経験はありませんか? 
その経験がトラウマになり、自分の考えを述べることに多くの人が臆病になっているとキャメロンは指摘します。
否定された言葉を自分のなかで何度も繰り返し、アイデアを思いついても自分で先回りして否定してしまうのです。


否定の言葉は以下のようなものです。


・こんなこと考えるなんて頭がおかしい。
・アイデアを実現するにはお金がかかり過ぎる。実現してもお金が儲からない。
・私にはアイデアを実現する能力がない。
・アイデアを実現するには経験がなさ過ぎる。または年を取り過ぎている。 

いかがでしょう?
皆さんもアイデアをアウトプットする前に、このような思いが頭をよぎって悩んでしまったことはないでしょうか?

アイデアを発信する前に悩んでしまい、結局何も言えない…。

クリエーションの場では、このような思考を払拭する必要があります。

それでは私たちがビジネスの現場で、ネガティブな思考を乗り越えて、自由闊達にアイデアを出し合うにはどうしたら良いでしょうか?

ワークショップのアイスブレークの手法にSweet & Sourというものがあります(2)

Sweetはうれしかった「甘い体験」、Sourはちょっと失敗してしまったというような「酸っぱい体験」のことです。
このようなプライベートな経験をシェアすることで、参加者同士の距離がぐっと縮まるといいます。
 
自身の個人的な体験を共有するアイスブレークは、皆さんもこれまでに体験したことがあると思います。
Sweet & Sourでは一歩踏み込んで若干ネガティブな体験も共有するのです。
「パティスリーで食べたいケーキが品切れだった」といった軽い体験でも構いません。 

ケーキ屋さんのショーケースがスカスカだった時の悲しみときたら…。

アイデアを出す時のためらいを解消するために、このSweet & Sourを取り入れてみるのはどうでしょうか?

アイデアを発信した時に否定されてしまった「酸っぱい体験」を共有してみるのです。


例えば、以下のようなものが良いでしょう。

                                                                                           

・絶対良いと思った企画を上司に却下された。その後、他社で自分の考えた企画と全く同じ商品がリリースされ大成功した。

・学校の先生に間違いと指摘されたレポートの回答が、どんなに調べても正しいとしか思えない。

・絶対に美味しいはずのオリジナルレシピをまずいと言われた。
 

こんな体験を皆さんも多かれ少なかれ持っていると思います。こういった体験を共有することで、参加者同士が同じ傷を持つ仲間だということがわかります。

同じ傷を持った仲間同士ならば、心理的な安全性を確保できるはずです。


それではアイデアを気軽に発信できる社会形成のために、私のアイデアに関するほろ苦い経験をシェアしたいと思います。

 
実は私は子どもの頃に外から「電気や燃料を供給せずに永遠に動き続きけるマシン」を思いついたことがあるのです。
いわゆる永久機関というやつです。
 
扇風機を回した風で発電し、その電気で扇風機を回せば、永遠に動き続けますよね。
この仕組みはまさに永久機関です!

扇風機の風で発電機のプロペラを回します。

革命的な大発見だと思いました。

あまりにも革命的だったので誰にも言わず、大人になってから発表してノーベル賞を獲ろうと思っていました。
 
現実的に無理であることには大人になってから知ったのですが、私がショックを受けたのはそこではありません。
実はこのアイデアは誰もが子どもの頃に思いつく、ごく普通の思いつきだったのです!
 
少し大きくなってインターネットに触れるようになると、SNSや掲示板で同じようなアイデアを思いついた体験が共有されているのを目にするようになりました。
しかも、それは「斬新なアイデアを思いついた体験で」としてではなく、子どもの頃によくある勘違いで、いわゆる「あるあるネタ」として扱われていたのです。
 
その時ほど自分の凡庸さに打ちのめされ、深く傷ついたことはありません。
 
あなたのアイデアに関する酸っぱい経験は何ですか?
みんなにシェアして、アイデアを気軽に発信できる世の中を作りましょう!
 

出典
(1)ジュリア・キャメロン (2001) 『ずっとやりたかったことをやりなさい』サンマーク出版

(2)松葉俊夫(2021)『そのまま使える オンラインの“場づくり"アイデア帳 会社でも学校でもアレンジ自在な30パターン』翔泳社
 

  (未来サービス研究所 山田峰大)


 「未来研アイデアよもやま話」とは

 
未来サービス研究所では、イノベーションについての調査研究や、アイデア発想のためのワークショップの開催などを行っています。
 
本コラムでは、これらの活動から未来研の研究員が重要だと感じるアイデア発想のノウハウ、ヒントになりそうなことやアイデア発想にまつわる試行錯誤についてコラム形式でお伝えします。
 
新しい取り組みをしたいけどなかなかアイデアが出てこない、アイデアを組織的に出していくにはどうしたらよいのか、といった悩みにささやかなヒントをお届けできたら嬉しいです。

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