新型コロナウイルスがエネルギー消費に与える影響とは?新しい省エネ社会に向けて!

【エネルギー×ITが創る未来】vol.4

  • 環境

2020年06月10日

  • カーボンニュートラル

新型コロナウイルスの影響で、テレワークや時差出勤を行う企業が増加し、プライベートではオンライン飲み会が行われるなど企業や人の行動様式は大きく変化しました。
人の行動が変わればエネルギーの使い方も変わります。テレワークで光熱費が上がった!電車でなく自動車での移動が増えてガソリン代が上がった!という方も多いのではないでしょうか。私たちの行動が変わったことで、エネルギー消費はどのように変化しているのでしょう?そして、「ウィズコロナ・アフターコロナ時代」に省エネを推進していくことはできるのでしょうか?
vol.4では、緊急事態宣言解除前の5月下旬某日、エネルギーデータ活用を軸にサービスを展開するENECHANGE株式会社の代表取締役COO 有田一平氏にオンラインインタビューを実施し、新型コロナウイルスによるエネルギー環境の変化、新しい働き方と同社の取組についてお話をうかがいました。

新型コロナウイルスによるエネルギー環境の変化

貴社では電力データを活用し、電力会社や個人向けに様々なサービスを提供しておられます。
貴社の事業環境からご覧になって、2020年2~5月のエネルギー環境はどのように変化していますか?

全体でみると景気悪化に伴い電力消費量は減少しています。消費が下がると燃料価格なども下がりますし消費に対して供給が過多になりますので、電力の市場価格もかなり落ち込んでいます。
外出自粛、テレワーク増加などの影響で家庭の消費量は上がる傾向にありますが、法人の使用量は下がっています。業種ごとにみると、営業自粛になっている店舗や教育機関、稼働停止や生産縮小を迫られる工場などでは減少、一方物流センターなど稼働が上がっている業種では維持、または増加傾向にあります。

CO2の排出にはどのような影響がでていますか?

正確な数字は把握できていませんが、移動の減少に伴いかなり削減されているとみています。電力の消費量が下がると老朽化した火力発電所などCO2排出量の多い電源から稼働が停止されますので、そういう面でもCO2の削減が進んでいます。

貴社ではテレワーク下での電気代増加を抑えるため電力会社を変更する方にギフト券をプレゼントする「電気代応援キャンペーン」を行っておられますね。ユーザーからのニーズを受けて開始されたのでしょうか?

当社でも3月後半からテレワークを実施したなかで、従業員から「電気代が上がりそう」という声が挙がっていました。コロナ禍で当社が社会に対し何ができるか考えていた中で、上昇する電気代を少しでも負担を軽減していただけるようなサポートが今求められていると思いこのキャンペーンを開始しました。開始してから毎日数十人単位で利用されており、ニーズの高さを感じています。

そんなに多くの方がこれを機に電力会社の切り替えを行っているのですね。多くの方がこの環境変化が一時的ではなく継続していくものだと感じているということなのでしょうか。

緊急事態宣言が解除されても、一気に同じ生活に戻ることは難しいでしょう。今回テレワークを実施してみて「意外といけるな!」という感触を持った企業は多いと思います。この経験を活かし、テレワークを併用していく働き方が進んでいくのではないかと考えています。

変化はチャンス!より生産性の高い働き方へ

貴社では5月11日に「ウィズコロナ宣言」を出され、今後もテレワークを交えた働き方を進めていかれることを発表されました。どのようなお考えで「ウィズコロナ宣言」を出されたのでしょうか?

当社では日ごろから「変化はチャンス」と捉えています。また、当社で設定しているバリューの一つに「ゴーアジャイル」というものがあります。変化を捉えて仮説を立て、まずはトライしよう、その結果を受けて軌道修正しより良いものにしていこう、という考えが会社に根付いています。

そのような考えのもと、今回のテレワークに対しても、対策チームを中心に社内へのアンケートやKPI設定をし、影響を定量化したところ社員のパフォーマンスも業績も維持できていることがわかりました。加えて、社員のストレス度合い・負荷も軽減されている傾向がみられています。これらの結果から、テレワークを適度に取り入れていくことは会社にとって有効だと判断しました。

ENECHANGEアンケート結果
ENECHANGEが社員に実施したアンケート結果(出典 ENECHANGE 新規タブで開く
我々未来サービス研究所でも新型コロナウイルスによる影響を議論しており、テレワークがこれを機に社会に浸透していくだろうと考えています。一方でテレワーク継続への懸念点はありますか?

社員間のコミュニケーションが希薄になることは懸念しています。短期的にみれば、業務上の打合せはWeb会議などを用いることで従来よりも効率化できる部分もあると思います。ですが、中長期的にみたときに社内の異職種間でのコミュニケーションから新しいものが生まれてくるようなことが無くならないよう気にかけています。

そこで、恒久的にテレワークを中心とした働き方に移行する中で、社内のランダムなコミュニケーションの促進を目的としたコミュニケーション手当を支給することにしました。今後は、状況を注視しながらゴーアジャイルで対策を行っていきます。

ウィズコロナ時代の省エネ社会に向けたデジタル化推進

今後、エネルギーの消費形態やエネルギー業界にはどのような変化が起きてくるでしょうか?

業種業態によって異なるでしょうが、まずテレワークの浸透により家庭での電力消費は継続して高い水準で推移すると考えています。

家庭部門の電力消費が増加するということは、これまでビルや大規模施設に集中していたものが各家庭に分散するということだと思います。その際に再生可能エネルギーのような分散電源との相性が良くなっていくと考えますがいかがでしょうか?

家庭への滞在が増えることで、太陽光発電や蓄電システムを活用し自宅で発電した電気を自宅で利用する「電力の自家消費」を行う家庭がこれまで以上に増加するでしょう。これまでは使いきれず余ってしまった余剰電力は系統を通して電力会社に売電していましたが、余剰電力が減るため系統を利用する機会も減少します。系統への負荷が再エネの課題の一つでしたから、これが減ることで再エネの導入が進みやすくなる可能性もあります。

家庭での電力消費量増加に伴い、電力会社が新しい電気料金プランを提供するなどといった動きはありますか?

これまでは、夜間電力を安く使えるプランというのは多くあったのですが、ここにきて昼間の電気料金単価を安く設定した料金プランが誕生しました。これを受けて同様のプランがこれから出てくる可能性もありそうです。そして、当社が新電力のLooopと取り組んでいるのが、電気の使い方に行動変容を促す家庭向けのデマンドレスポンスです。太陽光発電の発電量が多い時間帯の電力消費を推奨し、実行したユーザーにはインセンティブを提供する「LooopDR 在宅応援キャンペーン」を実施しています。日本全体の電力消費が減少している中で、発電量が多い時間帯に積極的に電気を使ってもらうことで発電の無駄をなくします。

発電調整が難しく発電量が消費を超えてしまいそうな太陽光発電の電力を、在宅のユーザーが消費することで無駄なく利用しようということですね。消費を減らすのではなく電気の使用時間帯をシフトすることで無駄を抑えるというのは面白いですね。他にも貴社が電力会社に提案していることがあれば差支えない範囲でお教えください。

外出自粛のため、電力会社が従来行ってきた訪問や電話などのオフライン営業は実施しづらくなっています。一方で行動変容に伴い光熱費への関心は高まっており「光熱費」の検索数は昨年度の倍近くにもなっています。そのため、デジタルマーケティングによるオンライン営業を強化するための提案を進めています。

同様にコールセンターのひっ迫も課題となっています。コールセンターは三密になりやすい環境ですので、各電力会社で稼働を下げています。一方で在宅の方が増えて問い合わせは増えていますので、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用するなどして、ユーザーの満足度を維持しながらオペレーション負荷を下げるための提案を行っています。

エンドユーザーとのコミュニケーションの取り方もデジタル化が進んでいくのですね。電力の消費形態が変化するなかで、日本の省エネ促進はどのように進んでいくのでしょうか?

これまで一か所に人が集中し効率的に電力を利用していたものが分散したという意味ではエネルギー効率が下がってしまっている部分はあると思います。

これまではビルや大規模施設を中心に省エネ対策が進められてきましたが、それらのソリューションが家庭向けにも普及していく契機となるのではないでしょうか。

家庭向けの省エネが本格化することが期待されますね。貴社ではコロナ禍において社内外に向けて迅速な対応を進めてこられました。今後のエネルギー社会で目指すことはどのようなことでしょうか?

この状況変化を機に、エネルギー業界のデジタル化の促進を加速し、電力会社の顧客とのコミュニケーションの在り方や、ユーザーへの省エネソリューション導入などにもこれまで以上に寄与していきたいと考えています。エネルギー業界においてもデジタルトランスフォーメーション(DX)が求められる時代になっています。当社のエネルギーデータ活用技術を駆使し、DX化の推進にいち早く対応していきます。

オンラインインタビュー
オンラインインタビューの様子。有田社長の背景はENECHANGEのオフィスの写真だそうです。本当にオフィスにいらっしゃるように見えますね。

インタビューを終えて

これまでも徐々に普及が進んできたテレワークやオンラインコミュニケーション、再生可能エネルギー、エネルギー業界のDX化などが、新型コロナウイルスによる行動変容を契機に急速に普及していく可能性がありそうです。「変化をチャンスに」捉えて取組みを進めることで、コロナ後の社会はより便利で快適なものへと進化していくのではと感じました。

未来サービス研究所 金森

【エネルギー×ITが創る未来】について

エネルギーにまつわる市場環境は、今大きな変革のときを迎えています。
「エネルギー×ITが創る未来」では、ユニアデックス未来サービス研究所員がエネルギー分野で先進的な取組みをする専門家にインタビューし、エネルギーとITの革新によってどのように社会やくらしが変わっていくのか、未来のきざしを探っていきます。

【関連サイト】

  • 記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。
  • 自治体・企業・人物名は、取材制作時点のものです。

2020年06月11日公開
(2020年06月11日更新)

有田 一平(ありた いっぺい)

ENECHANGE株式会社 代表取締役社長COO

早稲田大学大学院理工学研究科修了。在学中には自然言語処理の研究を行う。
JPモルガン証券株式会社で市場分析システムやリスク管理システムの開発、グリー株式会社で海外向けサービスの開発に携わる。
その後、英国ケンブリッジにてケンブリッジ・エナジー・データ・ラボ社の共同創業者として発電、需要予測システムのアルゴリズム開発やソフトウェア設計を担当。
2015年4月、ENECHANGE株式会社を設立し代表取締役社長に就任、現代表取締役COO。

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