新型コロナウイルスがエネルギー消費に与える影響とは?新しい省エネ社会に向けて!
【エネルギー×ITが創る未来】vol.4
- 環境
2020年06月10日
- カーボンニュートラル
新型コロナウイルスによるエネルギー環境の変化
貴社の事業環境からご覧になって、2020年2~5月のエネルギー環境はどのように変化していますか?
正確な数字は把握できていませんが、移動の減少に伴いかなり削減されているとみています。電力の消費量が下がると老朽化した火力発電所などCO2排出量の多い電源から稼働が停止されますので、そういう面でもCO2の削減が進んでいます。
当社でも3月後半からテレワークを実施したなかで、従業員から「電気代が上がりそう」という声が挙がっていました。コロナ禍で当社が社会に対し何ができるか考えていた中で、上昇する電気代を少しでも負担を軽減していただけるようなサポートが今求められていると思いこのキャンペーンを開始しました。開始してから毎日数十人単位で利用されており、ニーズの高さを感じています。
緊急事態宣言が解除されても、一気に同じ生活に戻ることは難しいでしょう。今回テレワークを実施してみて「意外といけるな!」という感触を持った企業は多いと思います。この経験を活かし、テレワークを併用していく働き方が進んでいくのではないかと考えています。
変化はチャンス!より生産性の高い働き方へ
当社では日ごろから「変化はチャンス」と捉えています。また、当社で設定しているバリューの一つに「ゴーアジャイル」というものがあります。変化を捉えて仮説を立て、まずはトライしよう、その結果を受けて軌道修正しより良いものにしていこう、という考えが会社に根付いています。
そのような考えのもと、今回のテレワークに対しても、対策チームを中心に社内へのアンケートやKPI設定をし、影響を定量化したところ社員のパフォーマンスも業績も維持できていることがわかりました。加えて、社員のストレス度合い・負荷も軽減されている傾向がみられています。これらの結果から、テレワークを適度に取り入れていくことは会社にとって有効だと判断しました。
社員間のコミュニケーションが希薄になることは懸念しています。短期的にみれば、業務上の打合せはWeb会議などを用いることで従来よりも効率化できる部分もあると思います。ですが、中長期的にみたときに社内の異職種間でのコミュニケーションから新しいものが生まれてくるようなことが無くならないよう気にかけています。
そこで、恒久的にテレワークを中心とした働き方に移行する中で、社内のランダムなコミュニケーションの促進を目的としたコミュニケーション手当を支給することにしました。今後は、状況を注視しながらゴーアジャイルで対策を行っていきます。
ウィズコロナ時代の省エネ社会に向けたデジタル化推進
業種業態によって異なるでしょうが、まずテレワークの浸透により家庭での電力消費は継続して高い水準で推移すると考えています。
家庭への滞在が増えることで、太陽光発電や蓄電システムを活用し自宅で発電した電気を自宅で利用する「電力の自家消費」を行う家庭がこれまで以上に増加するでしょう。これまでは使いきれず余ってしまった余剰電力は系統を通して電力会社に売電していましたが、余剰電力が減るため系統を利用する機会も減少します。系統への負荷が再エネの課題の一つでしたから、これが減ることで再エネの導入が進みやすくなる可能性もあります。
これまでは、夜間電力を安く使えるプランというのは多くあったのですが、ここにきて昼間の電気料金単価を安く設定した料金プランが誕生しました。これを受けて同様のプランがこれから出てくる可能性もありそうです。そして、当社が新電力のLooopと取り組んでいるのが、電気の使い方に行動変容を促す家庭向けのデマンドレスポンスです。太陽光発電の発電量が多い時間帯の電力消費を推奨し、実行したユーザーにはインセンティブを提供する「LooopDR 在宅応援キャンペーン」を実施しています。日本全体の電力消費が減少している中で、発電量が多い時間帯に積極的に電気を使ってもらうことで発電の無駄をなくします。
外出自粛のため、電力会社が従来行ってきた訪問や電話などのオフライン営業は実施しづらくなっています。一方で行動変容に伴い光熱費への関心は高まっており「光熱費」の検索数は昨年度の倍近くにもなっています。そのため、デジタルマーケティングによるオンライン営業を強化するための提案を進めています。
同様にコールセンターのひっ迫も課題となっています。コールセンターは三密になりやすい環境ですので、各電力会社で稼働を下げています。一方で在宅の方が増えて問い合わせは増えていますので、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用するなどして、ユーザーの満足度を維持しながらオペレーション負荷を下げるための提案を行っています。
これまで一か所に人が集中し効率的に電力を利用していたものが分散したという意味ではエネルギー効率が下がってしまっている部分はあると思います。
これまではビルや大規模施設を中心に省エネ対策が進められてきましたが、それらのソリューションが家庭向けにも普及していく契機となるのではないでしょうか。
この状況変化を機に、エネルギー業界のデジタル化の促進を加速し、電力会社の顧客とのコミュニケーションの在り方や、ユーザーへの省エネソリューション導入などにもこれまで以上に寄与していきたいと考えています。エネルギー業界においてもデジタルトランスフォーメーション(DX)が求められる時代になっています。当社のエネルギーデータ活用技術を駆使し、DX化の推進にいち早く対応していきます。
インタビューを終えて
これまでも徐々に普及が進んできたテレワークやオンラインコミュニケーション、再生可能エネルギー、エネルギー業界のDX化などが、新型コロナウイルスによる行動変容を契機に急速に普及していく可能性がありそうです。「変化をチャンスに」捉えて取組みを進めることで、コロナ後の社会はより便利で快適なものへと進化していくのではと感じました。
未来サービス研究所 金森
【エネルギー×ITが創る未来】について
バックナンバー
- 【vol.4】新型コロナウイルスがエネルギー消費に与える影響とは?新しい省エネ社会に向けて!
- 【vol.3】いつでも、どこでも、だれでもコンセント無しで電源を利用できる未来!ワイヤレス給電とブロックチェーンが創る新しい暮らしとは?(前編)
- 【vol.3】いつでも、どこでも、だれでもコンセント無しで電源を利用できる未来!ワイヤレス給電とブロックチェーンが創る新しい暮らしとは?(中編)
- 【vol.3】いつでも、どこでも、だれでもコンセント無しで電源を利用できる未来!ワイヤレス給電とブロックチェーンが創る新しい暮らしとは?(後編)
- 【vol.2】道路が発電所に!太陽光発電舗装が創る世界初のサステナブルなMaaS社会
- 【vol.1】安価な革新的二次電池が創る「誰でもエネルギーにアクセスできる社会」
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- ※ 記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。
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2020年06月11日公開
(2020年06月11日更新)
有田 一平(ありた いっぺい)
ENECHANGE株式会社 代表取締役社長COO早稲田大学大学院理工学研究科修了。在学中には自然言語処理の研究を行う。
JPモルガン証券株式会社で市場分析システムやリスク管理システムの開発、グリー株式会社で海外向けサービスの開発に携わる。
その後、英国ケンブリッジにてケンブリッジ・エナジー・データ・ラボ社の共同創業者として発電、需要予測システムのアルゴリズム開発やソフトウェア設計を担当。
2015年4月、ENECHANGE株式会社を設立し代表取締役社長に就任、現代表取締役COO。
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