リプロダクティブ・ヘルス/ライツにおけるデジタル化の動向 ①Femtech(フェムテック)

Work, Life, +Digital ~暮らしのデジタル化から見える未来

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2022年2月1日公開

デジタル化はビジネスの世界を中心に進んでいると思われがちですが、私たちの暮らしにもより身近に、手軽にデジタルが取り入れられるようになってきました。

女性の社会進出が進み、男女がともに仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を重視する傾向が強まっている現代。仕事に家事・育児...とあわただしく過ぎる毎日に、デジタルの要素が加わることで、より快適で豊かな暮らしにつながっていくかもしれません。また逆に、デジタル化が暮らしにもたらす課題もあるでしょう。

この記事では、「Work, Life, +Digital」(ワーク・ライフ・プラスデジタル)をキーワードに、妊娠・出産/子育てなど身近な生活分野のデジタル化の兆しをご紹介します。

リプロダクティブ・ヘルス/ライツとデジタル

今回は、"リプロダクティブ・ヘルス/ライツとデジタル"がテーマです。
リプロダクティブ・ヘルス/ライツは「性と生殖に関する健康と権利」と訳されることが多く、性や妊娠・出産に関する健康や自己決定権が保たれることをいいます。とくに妊娠・出産とその前段階にあたる月経は女性特有のライフイベントになりますが、これらの領域にもデジタル技術を活用する動きが広がっています。代表的なトピックとして、①Femtech(フェムテック)②電子母子手帳について二回にわたり取り上げます。

今話題のフェムテック 女性特有の悩みをテクノロジーで解決

Female(女性)とTechnology(テクノロジー)をかけあわせたFemtech(フェムテック)という言葉を目にすることが増えました。フェムテックは月経や妊娠・出産、更年期など女性特有の悩みをテクノロジーで解決しようとするもので、急速な広がりを見せています。

2021年の動きだけを概観しても、政府内では自民党のフェムテック振興議員連盟(会長:野田聖子議員。2020年10月発足)が「フェムテック関連製品の普及に向けた政策の推進に関する提言」を行い、6月に閣議決定された政府成長戦略に「フェムテックの推進」という文言が盛り込まれました(注1)。
さらに、経済産業省は働く女性の健康増進や就業継続を支援するため、フェムテックを活用したサポートサービスの実証実験に対して補助金の支給を開始し、フェムテック関連サービスの育成に力を入れています(注2)。

ビジネス面においても、女性向けWebサイトなど各種メディアでの特集をはじめ、大手百貨店でのフェムテックイベント開催、GUやユニクロを擁するファーストリテイリングがフェムテック製品のひとつである吸水ショーツをリリースするなど盛り上がりを見せています。こうした動きを受け、2021年の「新語・流行語大賞」には「フェムテック」がノミネートされました。

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2021年6月に西武渋谷店で開催された「Femtech WEEK」の様子。2021年は他にも伊勢丹新宿店や銀座三越などでフェムテックのイベントが開催されました。(撮影:筆者)

月経周期管理アプリからオンライン診療によるピル処方まで、拡がるデジタル

デジタルに関連するフェムテック製品では、月経周期を管理するアプリは若者層を中心に利用者が多くなっています。代表的な月経周期管理アプリであるルナルナ(株式会社エムティーアイ提供)は2000年にリリースされておりフェムテックのパイオニアともいえますが、現在のダウンロード数は1,700万を超えており、多くの女性の支持を得ていることがわかります(ルナルナ公式サイトより)。

月経や妊娠にまつわる悩みがあるけれど、病院の婦人科へ行くには時間的にも精神的にもハードルを感じる...という女性は実は少なくありません。このような課題に対し、「いつでも」「どこでも」アクセスでき、非対面での接触が可能なデジタル技術とは相性がよいといえます。フェムテックはもともと欧米の企業を中心に始まった動きであり海外で盛んですが、日本でも新しいサービスが続々と誕生しています。不妊の悩みに対してLINEで妊活専門家からのアドバイスが受けられるファミワンや、オンライン診療でピルの処方が受けられるスマルナ、自宅で女性ホルモンの値を測定できるcanvas、同じく自宅で卵巣年齢を測定できるF checkなどがあります。

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妊活サービス「ファミワン」のLINE画面。ここから妊活チェックシートに進み回答すると、専門家からのアドバイスがもらえます。

このように健康管理に関わる要素の強いフェムテック製品は手軽に取り入れられる反面、医療サービスや医薬品との線引きが難しい面も課題となっています。気になる製品を見つけた時は、機能や効果について医学的なエビデンスの有無や、専門機関からの承認を得たものなのか調べることをお勧めします。

ニーズ志向が強いフェムテック

フェムテックのように○○techという言葉でくくられるサービスはX-tech(クロステック)ともよばれ、Fintech(フィンテック:金融分野のデジタル化)やEdtech(エデュテック:教育分野のデジタル化)などが代表的です。また多くの分野では、AIやIoTなどのICTに関連した先端技術が産み出す新しいビジネスやサービスを中心に捉えられています。

しかしフェムテックの場合は、素材などICTに限定されない新技術を活かしたプロダクトへの注目度も高く、市場をけん引しています。注目されている製品の一つに最先端の繊維テクノロジーから生地を工夫し、生理用ナプキンを使用しなくても経血を吸収することができる吸水ショーツがあります。他にも膣内に挿入して経血を受け止める月経カップと呼ばれる製品もフェムテックのカテゴリーに含まれます。

実際に、私もFemtechのイベントで吸水ショーツを購入してみました。吸水ショーツは価格が1,500円前後からはじまり4,000~6,000円代のものが多く、一般的な生理用ショーツに比べると高額です。思い切って購入することに躊躇している方のも多いのではないでしょうか。私が参加したイベントでは、下着の上からですが試着ができました。スポーツタイプや股上が深いものなど吸水ショーツにも色々なバリエーションがあるので、自分に合ったフィット感を知りたければ試着してみることをお勧めします。

フェムテックのイベント会場やオンラインショップをのぞくと、女性のデリケートゾーンに使うジェルやミストなども販売されています。先端技術をどう活用しようか考えるシーズ志向というよりも、女性の悩みを起点に考えるニーズ志向が強いのもフェムテックの特徴と言えそうです。
これまで口に出すことが憚られることも多かった女性特有の健康課題に光を当てたフェムテックの躍進は続きそうですが、いっぽうで「フェムテック」という言葉の意味を知っている人は約3%にとどまるという調査結果もあります(注3)。これからフェムテックの認知がさらに深まり、新しいデジタルサービスが生まれる未来が楽しみです。

次回は、こちらも急速に普及している電子母子手帳をめぐる動きをご紹介します。

(注1)「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太方針2021)」(令和3年6月18日閣議決定)、20ページ。
(注2)フェムテックを活用した働く女性の就業継続支援(経済産業省)
  https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/femtech/femtech.html
  フェムテック等サポートサービス実証事業HP
  https://www.femtech-projects.jp/
(注3)宝島社調べ
  「男女ファッション誌13誌合同のフェムテック啓発プロジェクトを始動!」(2021.12.27)
  https://fashionbox.tkj.jp/archives/1677926

(未来サービス研究所 八巻睦子)

※記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。
※自治体・企業・人物名は、取材制作時点のものです。

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(2022年02月10日更新)
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