リプロダクティブ・ヘルス/ライツにおけるデジタル化の動向 ②母子手帳の電子化

Work, Life, +Digital ~暮らしのデジタル化から見える未来

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2022年2月10日公開

デジタル化はビジネスの世界を中心に進んでいると思われがちですが、私たちの暮らしにもより身近に、手軽にデジタルが取り入れられるようになってきました。この記事では、「Work, Life, +Digital」(ワーク・ライフ・プラスデジタル)をキーワードに、妊娠/出産/子育てなど身近な生活分野のデジタル化の兆しを紹介しています。

妊娠・出産に関わるリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)とデジタル化の動向として、前回のFemtech(フェムテック)に引き続き、今回は母子手帳の電子化を取り上げました。

自治体で導入が進む、母子手帳の電子化(母子手帳アプリ)

予防接種スケジューリング機能が人気

妊娠・出産に関わるデジタル化の注目すべき動きとして、母子手帳(注1)の電子化が進んでいます。調査データによると、2019年時点の全国1,741自治体における電子母子手帳(母子手帳アプリ)の導入数は300~400程度と推計されていました(注2)。しかし現在、母子手帳アプリのシェアがもっと高い「母子モ」の導入自治体数だけで430以上となっており(母子モ公式サイトより)、他の母子手帳アプリも含めると導入自治体数はさらに増えていると予測されます。

母子手帳アプリは、自治体側にとっては住民へのタイムリーな情報配信や業務の効率化、ユーザー側となる母親には予防接種のスケジュール管理、子どもの成長をアーカイブとして記録しておける、などのメリットがあります。とくに乳幼児期の予防接種は回数が多く複雑なため、接種時期を自動的にお知らせしてくれる機能は好評です。

母子手帳アプリを試してみました

私が住む自治体でも、2021年から母子手帳アプリの提供がはじまったのでインストールしてみました。我が家の娘はすでに中学生なので乳幼児期に必要な予防接種は一通り打ち終わっていますが、年齢を入力すると子宮頸がんワクチン(ヒトパピローマウイルス/HPVワクチン)のスケジュール設定画面が現れました。子宮頸がんワクチンは間隔をあけて3回接種する必要があるので、自動的に次の接種時期を教えてくれる機能は助かります。

他にも、年齢に応じた子育てアドバイスが見られたり、自治体から発信される子育てイベントなどの情報がプッシュ通知されたりする機能もあります。一つのアプリで、子どもの健康や成長記録、地域の情報まで管理することができるので忙しい子育て世代にとっては便利です!
またデータ共有の設定をすれば、パパやママ、祖父母など家族みんなで子どもの情報が確認できます。今度の予防接種はパパに連れて行ってもらおう...なんて時に便利ですね。

母子手帳アプリ1

母子手帳アプリ2

なお、現状としては母子手帳アプリは紙の母子手帳と併用して用いるものになっています。健診や予防接種の際には紙の母子手帳を忘れずにご持参ください。
お住まいの自治体が母子手帳アプリを提供していなくても、アプリ単独でインストールし育児記録として利用することももちろん可能です。

日本が誇る母子手帳モデルの海外展開

日本における母子手帳の歴史は長く、母子保健の基本的な政策手段として1942年に妊産婦手帳として開始されました。1965年の母子保健法の制定を経て母子健康手帳となり、現在に至るまで改訂が重ねられています。世界的に比しても日本の母体・乳児死亡率は低くなっていますが、その背景には母子手帳に代表されるような充実した母子保健サービスがあるといわれています。

こうした日本の母子保健のノウハウを世界にも拡大させるため、JICAが中心となり、途上国における母子保健向上施策の一つとして母子手帳の普及を推進しています(注3)。電子化についても、たとえばパレスチナ・ヨルダン地区における難民キャンプを対象とした母子手帳電子化の試みなどがあります(注4)。

データヘルス社会を見据えた今後の動き

日本の優れた制度の一つである母子手帳ですが、父親の育児参画を考慮した名称変更や、今後のデータヘルス社会を見据えたうえでの電子化の在り方について現在政府で議論がなされています(注5)。

医療や健康に関する情報のデジタル化はPHR(パーソナルヘルスレコード)といわれますが、現在はおもに生活習慣病などの疾病対策や介護予防といった健康寿命延伸のための活用が期待されています。生涯を通じた健康管理という面では、誕生から幼少期、さらに青年期から成人までのヘルスケアデータも重要であり、母子手帳アプリのような仕組みを通じたデータ管理への注目は今後ますます高まるでしょう。また、災害時の医療・健康データバックアップ手段の一つとしても電子化は有効です。

とはいえ、紙の母子手帳につづられた記録も親子にとっては大切な成長の軌跡。紙の手帳は無くしたくない...、という意見も根強くあり、個人的にも共感できます。紙の良さとデジタルの良さをうまく組み合わせていきたいですね。

周産期医療にもデジタル化の動き

妊娠中の母体や胎児の健康管理施策として定期的な妊婦健診がありますが、産科医師の不足や、最近では新型コロナウイルスの問題から遠隔医療のニーズが高まっています。メロディ・インターナショナル株式会社が提供する遠隔医療コミュニケーションプラットフォーム「Melody i」は、モバイル型の分娩監視装置(iCTG)を通じて遠隔から妊婦さんのお腹の張りや胎児の心音が確認できる、画期的な遠隔医療サービスです。
国内のみならず海外でも導入事例が増えているようで、母子手帳の電子化と併せて、日本発の妊娠・出産に関わるデジタルサービスが世界中の妊婦さんや赤ちゃんに安全安心をもたらす未来を期待したいです。


(注1)法令による正式名称は「母子健康手帳」ですが、本記事では一般的に親しまれている「母子手帳」を用いています。 
(注2)シード・プランニング「子育てへのICT・IoT活用と子育て関連データ利活用市場の実態と展望」(2019年)
(注3)JICAパンフレット「―ジャパンブランド―かけがえのない命を守る母子の継続ケア 母子保健」(2015年)
  https://www.jica.go.jp/publication/pamph/issues/ku57pq00002izsm8-att/japanbrand_01.pdf
(注4)かけがえのない命をまもるために~未来の母子健康手帳へ向けた取り組み(動画)
  https://www.youtube.com/watch?v=Sp74hcExTZY
(注5)母子健康手帳等に関する意見を聴く会(厚生労働省)
  https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-kodomo_129040_00006.html

(未来サービス研究所 八巻睦子)

※記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。
※自治体・企業・人物名は、取材制作時点のものです。

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(2022年02月10日更新)
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