エネルギー事業を軸に地域活性化をはかる「未来型まちづくり」とは?
【エネルギー×ITが創る未来 vol.7】
- 環境
2020年12月21日
- カーボンニュートラル
「加賀市版RE100」で地域の経済循環を構築し加賀市の地域活性化を支援!
日本の多くの地方都市で人口減少による衰退が危惧されています。一方で人口が少ない地域でも衰退せず活性化できている地域もあります。そのような地域の多くは活力のある仕事を持っています。当社では地域ごとの特色を踏まえ、活力のあるビジネスの立ち上げを支援することで地域の活性化に取り組んでいます。
加賀市は石川県南西部に位置しており、山代温泉、山中温泉、片山津温泉と3つの温泉地を持つ観光が盛んな地域です。一方で人口減少が著しく消滅可能性都市に該当します。加賀市では市長を中心に人口減少を食い止めるためのさまざまな取り組みを進めています。その取り組みの一つとして「加賀市版RE100」があります。
当社が提案したのが「エネルギーの地消地産」、使う側からエコにしていこう、という取り組みです。多くの地域新電力は地域内で発電された電力を地域で有効活用する「地産地消」に取り組んでいますが、加賀市では、まずは再エネを外から購入し、地域新電力の収益を加賀市内の再エネ投資に回していくというモデルを提案しました。
現在は他の地域の風力発電の電力を購入し市内で使っています。電力事業から得られた収益で少しずつ地元に小水力発電やバイオマス発電設備を作っていき、地元産の電気の割合を増やしていきます。将来的には地域で使う電気を全て地域で使った再エネで賄っていくことを目指しています。
地域新電力の運営自体に当社が参画するのではなく、継続的な運営をするための支援をすることを心掛けています。多くの地域新電力では事業を外部の専門企業に委託していますが、委託することで利害関係が発生し円滑な運営が難しくなっているように感じています。電力事業の運営は事業開始時にしっかりと支援を行えば、その後は自治体中心に自立的な運営をしていただくことができます。
電力事業の収益で観光の活性化を図る「まちやど」事業を展開
人口減少に伴い空き家の増加も地域の課題となっています。空き家を改修し、地域の食堂や銭湯、商店を活性化させていくことを目指しています。まちやどの第一弾として、山中温泉で二つの空き家を改修し、一つは地域の情報発信や観光の入り口の役割を担うカフェ「LOBBY」、もう一つは安価に宿泊できるゲストハウスにしました。
まちやど事業は地域新電力の収益から投資を行うモデルを想定しています。地域の活性化につながる投資先として、まちやどによる空き家改修と観光事業支援に取り組んでいます。まちやどの運営スタッフは地元の方を採用しており、雇用の創出にもつながっています。
まちやどのゲストハウスはお風呂や食事を提供しない簡易的な宿です。宿泊者は街中の飲食店や温泉を利用しますので、地域の店舗の活性化に貢献しています。また、山中温泉の旅館組合は、以前から宿泊客を旅館の中に閉じ込めるのではなく街歩きしてもらうことを推奨する考えをお持ちでしたので、そういう面でも地域に馴染む取組となりました。
当初は外国人観光客を想定していましたが、新型コロナウイルスの流行により現在は外国人観光客がいない状況です。ですがカフェは地元の方を中心ににぎわっており、地域に受け入れられているのだなと感じています。今後はまちやどのビジネススキームを他の地域にも展開していきます。
地域新電力の運営体制と同じで、自治体が自立、自律できることが最も重要だと考えています。地域の方たちがその地域の人材や自然環境などさまざまな資源を活用し、自分たちの手で継続的に事業を運営できるような環境作りを支援することを心掛けています。
再エネ好循環モデル「グッドアラウンドサービス」で地域活性化を促進!
地方の電力を都市部で利用してもらうことで、地方の地域活性化の資金を創出していくというものです。日本でも再エネは再エネ資源の多い地方を中心に増加傾向にありますが、再エネを設置するにはさまざまな課題があります。一方で発電した再エネの多くは都市部で利用されています。そこで、再エネを設置している地方がもっと再エネの恩恵を受けられるようにすることで、良い循環を作っていけないかと考えました。グッドアラウンドサービスで得た収益は再エネを設置する地域の活性化に投資していきます。
そうです。当社が「特定卸」という位置づけで電力の調達、新電力への販売を行います。購入側は購入する再エネの種類や発電元を選ぶこともできます。
特に都市部から多くの反響をいただいています。当社が本社を置く神奈川県横浜市からも興味をもっていただき、横浜市の「Zero Carbon Yokohama」実現を支援していくこととなりました。横浜市が連携する東北の地方自治体の再エネを、グッドアラウンドサービスを活用して横浜市に提供していきます。
そうですね。消費者が生産者や業界を変えていく、というのが自由化の醍醐味だと思っています。グッドアラウンドサービスを通じて、消費者がどのような電気を使いたいか考えていただくきっかけになればと思いますし、消費者の想いを受けて電力業界も変化していくことを期待しています。
はい。これがグッドアラウンドサービスの最大の特徴です。どのような事業を展開するかはそれぞれの自治体と協議していきます。加賀市ではモデル事業として当社が主体となり空き家を活用した観光事業に取組んでいますが、自治体の特色にあわせ、他の産業に投資していくこともあります。茨城県神栖市で現在協議しているのが、小学校の学区ごとに空き家を活用して、地域新電力のオフィスと小学生向けの駄菓子屋と地域の家電屋さんにできないかという取り組みです。
地域の魅力や資源を地域の方たちがしっかりと認識し、若者が戻ってこられる仕事を作っていくことが大切です。地元に魅力的な仕事があれば、大学卒業後の選択肢の一つとして地元に戻ることも検討するようになるでしょう。そのような仕事作りで地方を支援していきます。
インタビューを終えて
青山社長のお話をうかがい、複数の社会課題に複合的な視点で取り組むことが課題解決につながっていくのだと感じました。再エネの活用、エネルギー事業の活性化が地方の活性化につながっていくことを期待しています。
未来サービス研究所 金森
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- ※ 記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。
- ※ 自治体・企業・人物名は、取材制作時点のものです。
2020年12月21日公開
(2020年12月22日更新)
青山 英明(あおやま ひであき)
株式会社まち未来製作所 代表取締役北海道大学大学院 農学部卒業後、荏原製作所において新電力の立ち上げに携わる。その後コンサルティング会社勤務を経て2016年11月にまち未来製作所を設立。
地域新電力の立ち上げや地域活性化のためのサービス開発のコンサルティングを通じ、地域ごとの課題を解決し地域が自立/自律できるスキームを構築する「未来型まちづくり」事業を展開する。
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