中小企業・団体の再エネ導入が日本の脱炭素の取り組みを推進!再エネ100宣言 RE Actionの活動とは?

  • 環境

2021年06月01日

  • カーボンニュートラル

カーボンニュートラルへの取り組みが加速する中、環境問題に積極的に取り組む企業に投資するESG投資が注目されるなど、環境問題に取り組むことが企業価値の向上につながるようになってきているといえます。
使用電力を再生可能エネルギー(以降、「再エネ」)100%とすることを目指す国際的な取り組み「RE100」に参加する企業も増加しており、日本では2021年5月時点で54社が参加しています。ですが、RE100は電力消費量などの参加条件が定められており、中小企業や企業以外の団体の加盟は難しい状況があります。
 
そこで2019年10月より、中小企業や団体を対象にRE100と同様に再エネ100%を目指す日本独自の取り組み「再エネ100宣言 RE Action(アールイーアクション)」が開始されました。
「エネルギー×ITが創る未来 vol.9」では、RE Actionの運営に携わる芙蓉総合リース株式会社の土肥良一氏、RE Action 事務局の金子貴代氏に、RE Actionの取り組み内容や今後の方向性についてお話を伺いました。

土肥 良一(どい りょういち)

芙蓉総合リース株式会社 CSV推進担当

芙蓉総合リースにて営業推進業務担当後、再生可能エネルギー事業に従事。2019年より、CSV推進担当本社上席審議役を務める。
「再エネ100宣言RE Action」 協議会の構成団体の1つであるJCLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)の幹事会社の1社としてRE Actionの運営に参画する。

土肥氏プロフィール写真

金子 貴代(かねこ たかよ)

再エネ100宣言 RE Action 協議会 事務局

再エネ100宣言 RE Actionの立ち上げを担当し、2019年10月より現職。
企業や行政の再エネ調達の先進事例や、脱炭素の取り組みの事例調査などを行い、参加団体の支援を行う。

金子氏プロフィール写真

中小企業・団体が日本の脱炭素の取り組みを加速する!

金森  RE Actionとはどのような取り組みでしょうか?

土肥  日本の中小企業や団体が再エネ100%を目指す取り組みです。グリーン購入ネットワーク(GPN)、イクレイ日本(ICLEI)、地球環境戦略研究機関(IGES)、そして日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)という4つの団体が事務局となっています。

金森  再エネ100%というとRE100という取り組みもありますが、どのように違うのでしょうか?

土肥  国際的な活動であるRE100は年間電力使用量などの加入条件があり、中小企業や病院、学校などの団体は参加することができないのですが、それでも脱炭素に貢献したいという志を持たれる中小企業・団体がたくさんあり、日本でRE100を推進しているJCLPにも多くの問い合わせが寄せられました。そこで、RE100に参加できないが再エネ100%に取り組みたい企業や団体向けに、その取り組みや対外的なアピールを支援する枠組みを作ろうということでRE Actionの活動を開始しました。

金森  再エネ100%に取り組みたいがRE100に参加できない企業や団体の受け皿として作られたのですね。

金子  参加者が熱心に取り組まれているので、参加者の声に応える形で立ち上げや支援活動を作ってきています。

土肥  2019年10月には28団体でスタートし、133団体(2021年5月時点)にまで増加しました。

金森  多くの中小企業や団体が興味を持っているのですね。どのような業種、規模なのでしょうか?

金子  本当に多種多様ですね。上場している会社もありますし、業種もメーカーからサービス業、印刷業、学校、病院、介護関係など幅広いです。

土肥  業種や規模はバラバラですが、脱炭素に対し熱意のある企業が多いように思います。

金森  多くの中小企業や団体が再エネ100%に取り組むことで日本の脱炭素への動きが加速していきますね。

土肥  中小企業が占める電力消費量は日本の40~50%ともいわれています。大企業だけ脱炭素に取り組んでも、日本の電力消費量の半分にしか影響を与えません。中小企業や団体がいかに脱炭素を進めていくかというのは日本全体の脱炭素を考える上で非常に重要です。

脱炭素への取り組みが企業価値の向上に寄与する!

金森  中小企業や団体が再エネ100%を実現しようとするためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか?

金子  実は、業種や事業所の形態によっては非常に容易に再エネ100%を実現することができます。事業所が一つであれば、その事業所が契約している電力会社や電気料金プランを再エネ100%のものに切り替えればそれで達成できます。

金森  電力会社を変えるだけで再エネ100%が達成できてしまうのですね!

金子  電力会社から再エネを購入するだけでなく、自社で再エネを発電しようとなると、太陽光発電を搭載するための投資や準備が必要となります。大企業と比べると、中小企業や団体は脱炭素に専門的に取り組む人員を割くのが難しいため、準備や情報収集に時間を取りづらいという課題があります。そのため、私たち事務局では会員企業の先進的な取り組みをヒアリングし、参考事例として協議会のWebサイトに公開しています。

金森  自社と似た規模や事業所形態の企業がどのように再エネに取り組んでいるか知ることができれば参考になりますね。

土肥  脱炭素コンソーシアムという取り組みも始めています。これはRE ActionとJCLPの会員が参加できるもので、会員間で再エネ100%を実現するための知見やノウハウの共有や、再エネ関連ソリューションの提供を行うためのプラットフォームを目指しています。

金森  コンソーシアムに参加することで、知見やソリューションの提供が受けられるのは便利ですね。
参加企業・団体はRE Actionへの取り組みでどのような意義を感じているのでしょうか?

土肥  会員企業にアンケートをとった結果、メディアの反響があるなど、ブランドイメージ向上、企業価値向上につながったと回答した中小企業・団体が多いようです。また、金融機関や自治体、顧客などさまざまなステークホルダーとのパートナーシップ向上にもつながっているようです。例えば金融機関から再エネ投資の支援を得られたり、取引先から新しい声がかかったりと、再エネへの取り組みが企業活動のきっかけになっているようですね。そのほか、従業員の意識向上や太陽光発電システム搭載によりBCP対策にもなった、という意見もありました。

金森  再エネに取り組むことで企業価値が向上し、新しい企業活動のきっかけになっているのですね。一方で再エネ100%を実現するにあたり、中小企業や団体の課題になっていることはありますか?

土肥  それぞれの中小企業・団体によってさまざまです。会員へのアンケートによると、課題として最も多く挙がったのが「コスト対効果」、次いで「テナントのため自社で再エネを調達できずグリーン電力証書以外の方法がない」という回答でした。

金森  コスト対効果というのは重要な課題ですね。

土肥  会員企業の中には、再エネだけでなく省エネに取り組むことで電力使用量自体を減らし、再エネに変えて電気料金単価が上がってもトータルでコスト軽減を実現した企業もありました。各会員企業がさまざまな工夫をされて取り組んでいらっしゃいます。

金森  工夫次第ではコストを下げることも可能なのですね。今後再エネのコストは低減していくと思いますが、将来的には再エネ100%にすることがコストダウンもつながっていくようになるのでしょうか?

土肥  それは非常に重要なポイントです。日本ではまだ再エネの価格は高いですが、海外では非常に安価になってきています。再エネに変えることがコストダウンにつながれば、これまで以上に再エネに取り組む企業も増えてくると思います。

グラフ_再エネ100%宣言後の反響
再エネ100%宣言後の反響
グラフ_再エネ100%に向けた問題点・課題
再エネ100%化に向けた問題点・課題

再エネ拡大が作り出す新しい社会のつながり

金森  今後力をいれてく支援活動はありますか?

土肥  自治体にアンバサダーとなっていただき、地域の中小企業・団体の再エネ100%活動を応援していただく仕組みを作っています。

金子  現在17自治体(2021年5月)にアンバサダーとして活動していただいています。自治体では地域に再エネを広げたいという思いを強く持っておられ、再エネ関連のセミナーや普及啓発イベントをたくさん開催し普及啓発をしていただいています。そこから興味をもっていただける中小企業・団体にはRE Actionに参加していただけたらと思っています。

金森  自治体からの声掛けがあることで再エネの取り組みの重要性に気づいたり、RE Actionの存在を知ってもらうきっかけになりそうですね。
再エネが増えてくると、社会の電気に対する意識や電力ビジネス自体も変化していくのではないでしょうか。

土肥  そうですね。電気そのものには色はありませんが、再エネなのかそうじゃないのか、再エネでもどんな方法で発電された再エネなのか、ということに価値が出てくるようになると思います。そのため、資源エネルギー庁およびその委託を受けた日本ユニシスが取り組まれている非化石証書のトラッキングPDFのような取り組みが非常に重要になってくると思います。

金子  電気のトラッキングが進めば、電気を産地指定で買うということもできるようになりますね。例えば自宅で発電した太陽光発電の電気を、好きなサッカーチームの試合で使ってもらったり・・。

金森  自宅で発電した電気を自分が応援している人に使ってもらえたら、これまでにない新しいつながりがうまれそうですね。再エネの拡大が社会に新しい価値を生み出していくことが期待できそうです。

土肥  RE Actionの取り組みも28企業・団体からスタートし、徐々に会員を増やしてきています。今後さらに会員を増やし再エネの拡大に貢献するとともに電気のユーザー側の発信力を高めていけたらと思います。

金子  200、300、1,000とどんどん仲間を増やしていきたいですね。

インタビューの様子_土肥氏
インタビューの様子_金子氏

インタビューの様子

インタビューを終えて

日本では、企業数の99%以上、従業者数の約70%が中小企業にあたります。大企業の脱炭素の取り組みが注目されがちですが、中小企業や団体が取り組みをしないと、日本全体の脱炭素は進んでいきません。RE Actionの取り組みが広く知られ、多くの中小企業や団体が自分事として脱炭素に取り組んでいくようになることを期待したいですし、そこにITが貢献していけたらよいと思います。

未来サービス研究所 金森

【エネルギー×ITが創る未来】について

エネルギーにまつわる市場環境は、今大きな変革のときを迎えています。
「エネルギー×ITが創る未来」では、ユニアデックス未来サービス研究所員がエネルギー分野で先進的な取組みをする専門家にインタビューし、エネルギーとITの革新によってどのように社会やくらしが変わっていくのか、未来のきざしを探っていきます。

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  • 自治体・企業・人物名は、取材制作時点のものです。

2021年06月01日公開
(2021年06月01日更新)

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